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レディ・アシュリーは踊らない  作者: 癒華
幼少期篇
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プロローグ

バーハティア王国の歴史は長い。その始まりをつくったのは、現在でも神として崇められるゴートン=アーノルド。

ゴートンはその頃、人々を長きに渡って恐怖で支配していた暗黒竜を竜神たちと協力し、倒した。その後、見事な統治力で国を治め、物事の基礎をつくり人々に深く崇められ万事の神と称され敬われた。

その力は死してなお衰えず、国の巫女が神の声を聞き、それを現王に伝えその予言に従う。従わなかった者には神罰が与えられる。

そんな神は常に言葉を残す訳ではない。間隔はまばらであり、ここ何百年、その予言はなかった。

そんなバーハティア王国が建国3000年を迎えようとしていた時、数百年ぶりに巫女が神の予言を現王に伝えた。



‘‘次の満月に黒を持つ男女が生まれる。その男女はこの国をかつてないほどに、栄えさせる。だが、同時に少しの亀裂でその男女によってこの国は滅びるだろう。”



この予言を聞いた現王はすぐに次の満月に生まれた子どもを城へ連れてくるように命令を下した。この命令と予言はすぐに国中を巡り、人々は数百年ぶりの神の言葉に歓喜し、まだ生まれていない2人の赤ん坊の誕生を心待ちにしていた。



満月の夜。城に、1人の赤ん坊が入城した。予言通りの黒を持つ女の子。母は名のある貴族、スペンサー家に嫁いだリディアムだった。

スペンサー家は代々、バーハティア王国と隣国のパルディラ王国の国境を守る家柄であり国の中でも重要な位置にあった。やはり、貴族の家に生まれるのだな、と王は納得していたが、もう一人の黒を待つ男の子が現れる様子はなかった。

それは、日付を越えてもだった。この世界で黒を持つ、つまり黒い髪と瞳を持つ者はいない。だから、きっと珍しい黒を持つ赤ん坊などすぐに見つかると高を括っていたが、どれだけ時間がたっても男の子は現れない。王は焦り、国の隅々まで赤ん坊を探したが、男の子が見つかることはなかった。王はもちろん国中が絶望した。神の言葉が頭をよぎるのだ。

‘‘少しの亀裂で国は滅ぶ”もう既に亀裂は起きてしまったのだ。国中が黒を持つ赤ん坊を恐怖の対象とし、くるかもしれない国の滅亡に怯え、一気に国は活気を失った。望まれていた2人の赤ん坊は呪われた存在として人々に憎まれてしまった。


国が滅ぶことを恐れた王と貴族たちは、黒を持つ女の子を幽閉することにした。せめて、片方だけでも何もできない状態に置こうとしたのだ。だがもし、男の子が現れた時にはその妃として申し分ないように優秀な教師と使用人を残して。

スペンサー家は、王に従い生まれて間もない黒の子を領地から少し離れた塔に隠した。

子に全く無関心な母・リディアムと父・セルジオはその子に名前すら与えなかった。セルジオはその子を塔に連れて行くまでの護衛をひとりの若い騎士に任せた。若い騎士は、名前が付けられていない子を不憫に思い、せめて名前だけでもつけてやってほしい、とセルジオに懇願すると、セルジオは若い騎士を一瞥し「そんなに名前を与えたいなら、お前がつければいいだろう」と言い放った。

若い騎士は誰からも愛されることのないその子に『アシュリー』という名前をつけ塔に送り届けた。

だが、その名を呼んでくれる者は塔の中にも国の中にも居らず、ただの名前として黒の子の隣に転がるだけであった。



女の子が生まれてから11年。未だ、男の子は見つからず、バーハティア王国は不安と混乱の最中にあった。



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