ステータス
結局、宿屋の契約が切れるまでの五日間、毎日ひたすらスライム叩きをしていた。そうただ無心で。
正直やり過ぎたと少し反省している。千匹を超えたあたりで数えるのはやめたけれど、あれはまだ二日目か三日目のことだったはずだ。レベルが上がればMPも増え、回復量も増えていったおかげで日に日に潰す速度は上がっていった。それが嬉しくてスライム叩きが止めれなかったのもある。
最初は手で叩いていたが叩きすぎて腫れて来たので、途中からは踏みつぶしていたくらいだ。
その結果というのもなんだが、レベルは20まで上がり、ステータスもかなり伸びた。
ステータスはよく使ったものが伸びやすいという性質があるようで、MPはモンスター作成で消費していたので凄まじい増え方をした。現在のMPは210もある。MPの伸び自体も後半になるにつれ一気に伸びたので俺のステータスは今くらいから伸び率が良いのかもしれない。
一つ残念なのは、MP以外のステータスの伸びが悪かったというところだ。確かに伸びはしているが、20レベルまで上がってもHPとMPを除けば、他のステータスは平均10くらいしか上がっていない。
それでも、上がったレベルにやりきったという満足感が凄い。上機嫌でステータスを確認しているとステータスの一番下に見覚えのあるものが復活していることに気づく。
ステータスポイント 19
レベルが上がるごとに一ポイントずつ貰えるのか?それだったらレベル上げは好きだから、この世界で楽に生き抜けるようにレベルを上げるしかないな。これからも貰えるみたいだから、早速使って魔法を覚えることにしよう。MPはかなり伸びたし、スキル構成的に俺は遠距離から魔法で戦う方がいいだろう。
スキル一覧をスクロールさせて魔法スキルの欄を探す。キャラ作成時に見た時よりも選べるスキルが少ないのは、初回のみ全スキルが選択できるようになっていたのかな。
「魔法。魔法っと……はぁ?」
・魔法の適性に余りがありません。魔法を覚えるには先にステータスポイントを500消費して魔力適性(1)を手に入れてください。
「えっ?なにこれ?俺の計画は?」
まさか、モンスター作成と空間魔法で俺の魔法適性は埋まってしまったのか?たった二種類で?いや、この世界の魔法を使える人の割合、適性のある人の適正数を考えれば二種類というのは妥当かも知れない。だが、異世界に来て攻撃魔法無しなんて。剣で戦うなんて無理があるだろ。
……終わった。もう終わりだ。魔法無しなんて俺のステータスから考えておかしい。MPだけ無駄にあっても使う手段が無ければ無意味だよ。
真っ白に燃え尽き、スキル一覧を重たい思考の中ゆっくりとスクロールする。
それでも何か使えるスキルを手に入れないと。魔法が取れないとしてもこの世界で生き抜く方法はあるはずだ。いや、無いと困る。異世界に来てまでベリーハードな人生を歩むなんてもってのほかだ。
いざとなれば、モンスター作成でレベルを上げまくればステータスポイントは手に入る。レベルのカンストがあるかは知らないが、普通の人はカンストまでいかないだろうからその点では有利なはずだ。
重たい思考を頑張って働かせていると、一つのスキルが目に止まる。
・特殊補助スキル
MP譲渡 10ポイント
これは……使える!
俺が魔法を覚えなくても、パーティーメンバーが魔法を使えるのならば、俺が魔力タンクになればいいんだ!そうすれば俺はリーダー顔して魔力タンクと指示を出す役になれる。戦わなくて済む!仲間を集めて魔力タンクに成り下がるしかない!
このスキルは取るしかないな。無駄に高いMPとMP回復速度を活かす術は、現状これしかない。
ポチッとネットショッピングをするかのごとく、スキルをポチるイメージをすればステータスポイントが消費されて所持スキル欄にMP譲渡が表示された。
まだ9ポイント残っているが他に使えそうなスキルはあるだろうか?
・特殊スキル
魔石合成 5ポイント
うん、これも取っとけ。ノーマルスライムの小さい魔石がいっぱいあるから固めて売れば売れるだろう。
計15ポイントを消費して二つのスキルを手に入れた。取れるスキルの少なさには驚いたが数少ないスキルの中に有用な物があって良かった。残りのポイントはまた使えそうなスキルを見つけるまでは置いておこう。
さっそく、俺が魔力タンクに成り下がるためのパーティーメンバーを探さないとな。
パーティーメンバーを探すとなればギルドか?でも、ギルドでメンバー探しをしていた奴らは近接系らしき奴ばかりだったし碌な奴がいなさそうだ。
となると、ギルドの受付のお姉さんか門番さん、そしてスタイン。この三人くらいしか相談できそうな相手はいない。
うん。スタインだな。こういう時のために色々知ってそうな商人の繋がりを手に入れたんだし。
ついでにノーマルスライムの魔石も買い取ってもらえないか聞こう。