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 自分でも挙動不審かと言いたくなるほど周囲を見渡しながら速足で宿へ戻り、備え付けられた椅子に縮こまって座る。

 ゴンゴンとテーブルの強度を手を打ち付けて確認する。少しずつ強くしていくが俺の拳が痛くなるだけでテーブルはミシリともしない。これならいける。そう思ってしまうと、少し悪い笑みがこぼれた。


 別にこれは悪いことじゃない。

 言えば、良い狩場を発見して独占してるだけみたいなもんだ。いや、ネトゲなら狩場の独占なんて十分悪だろう。ただ、これは現実で、しかも俺のスキルによりできる技なのだ。スキルの持ち主である俺が、その恩恵を独占しようが文句を言われる筋合いは無い。


 言い聞かせても激しく鼓動を打つ心臓を無視し、テーブルの上にタオルを敷き、その上に手をかざす。


 「モンスター作成。ノーマルスライム。カスタマイズ、10分の1」


 手元に現れた小さなスライムにその手を振り下ろす。ベシャと水を撒き散らしたスライムを見て、成功を確信する。


 消費したMPは五。作成するモンスター、カスタマイズの種類により消費MPが変わるらしいが、この程度なら問題ない。悪い笑みがこぼれる。モンスター作成とMP自動回復。これほど凶悪な組み合わせになるとはスキルを選択した時には思いもしなかった。

 もう一度作成しようと手をかざす。


 「あれ?なんだこれ」


 タオルの上によく見ると核ではない石のようなものがあった。これが魔石という物なのか?迷ったときは鑑定するしかないな。


 スライムの魔石(極小)

 ダンジョンモンスター(ダンジョンコアで作成されたモンスター)から採れる石。魔力を溜め込んでいるため様々な使い道がある。

 稀に自然発生の魔物からも採れる。


 ということは俺のモンスター作成はダンジョンコアによるモンスター作成と殆ど同じってことか。もしかしたら、鑑定で見たモンスター作成の説明に載っていた特殊補助ツールというのは、ダンジョンコアもしくはそれに近い何かをのことかも知れないな。

 一応、この魔石は小さいが売れるかもしれないから回収しておくことにするか。



 さっき外で倒した元のサイズのスライムの魔石を置いてきたのは勿体なかったな……。細かいのを大量にか、そこそこ大きいのを一つかどっちの方がいいのだろうか。この世界の物価、価値観などを知らないのは色んな所で分からないことが出てきてしまうな。

 この世界で信頼のできる仲間が欲しい。今日出会ったスタインのような商人の知り合いも欲しいが、一番は仲間だな。いつも一緒にいるような仲間で信頼のできる奴がいれば、この世界で生きていくことも楽になるだろう。自分の知識を増やすには時間もかかるし限界もあるが、知識のある仲間ができれば自分が知らなくともなんとかなるからな。


 まずは、戦いと料理のできる仲間だな。その後に法律やルールを知っている奴が欲しい。


 でも今は考えていても仕方ないからスライム叩きをしよう。仲間を手に入れるにも自分の実力はある程度必要だ。実践が危険ならレベルを上げて少しでもステータスを伸ばさないとな。



 作成しては潰し、作成しては潰す。

 経験値が貰えると判れば、こんな一瞬作り出しただけのノーマルスライムを潰すことで感じる罪悪感よりも、経験値を得られることへの喜びが勝ってくれる。おかげで潰すことに関しては抵抗はない。俺自身こういう作業ゲーは嫌いではないから、気が付けば日が沈みかけていた。


 「休憩がてら軽い食事と灯りを貰いに行くか」


 宿屋の一階へと下りれば受付には相変わらず似合わないおっさんが立っている。無表情で帳簿を付けているおっさんの顔は本当に怖い。


 「今日はちょっと遅くまでやることがあるから灯りを貰えないか?」


 「灯りか。この棒が燃え尽きるまで使えるタイプの物と、魔石の魔力が切れるまで使えるタイプの物があるがどちらがいい?」


 机の上に二種類の灯りが置かれる。片方は皿の上に蝋燭のような物が立てられていて、もう片方は台の上にビー玉サイズの魔石が置かれている。


 「使える時間はどちらが長い?」


 「時間だけならこっちの棒だな。だが火を起こせる物がないなら一回点けたら消えるまで使うか、2コルでもう一度俺が点けることになる。魔石の方は時間は短いが点けたり消したりできるし、自分で魔石が用意できるなら泊まっている間は最初の50コルだけで貸し続ける」


 魔石ってのがどんな魔石でもいいのかは気になるが、一度この魔道具らしき物を使ってみたいからこの魔石タイプにするか。最悪もう一回金を払って蝋燭タイプに変えてもらえばいいだけだからな。


 「じゃあ、こっちの魔石のを借りるよ」


 50コルを払って魔石タイプの灯りを借りる。おっさんから見えないところでストレージに仕舞い、食堂へと向かう。


 「部屋で食べたいんだけど、何か作ってくれないかな?」


 おっさんの娘とは思えない可愛らしい少女に、かなり大雑把な注文をする。料理の名前が分からないから食べたい物を頼むことができないのだ。言葉は通じるが、こういった細かいところが通じないのは何とかしてほしい。これがゲームだったら速攻GMにクレームを入れているところだ。


 「お皿は何時でもいいので返しに来てくださいね」


 「ありがとう。明日の昼くらいには返しに来るよ」


 食べやすいように切られたパンの上に色々乗せられている。サンドイッチのサンドされていない感じだ。サンドされていないから少し食べにくそうだが、サンドされていない分具材のボリュームはしっかりしている。

 よし、気力の続く限りスライム叩きをするか。できれば、10レベルは超えたい。そうじゃないと、野生のノーマルスライムを狩りに行くのも怖い。

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