ギルド
宿屋から昨日入ってきた西門の方へと向かい、お目当ての冒険者ギルドへとたどり着く。異世界ギルドお約束の絡んでくる先輩冒険者を警戒しつつ、一つ深呼吸してから中へと入る。
「酒場とは離れてるのね。待機場所は椅子しかないし、絡まれたりとかは無さそうで良かった」
酒場はギルドの裏にあるみたいで、ギルドの中は予想と違って綺麗だ。酒場が別になっているのもあり、人はそれ程多くはないが、待機場所の椅子の端の方では売り込み待ちのような人達が待機している。
盾職に剣士、格闘家にナイフ使い。前衛職ってのは余りやすいのかな?やっぱり前衛は信頼できて実力のある奴じゃないと任せるの怖いってのがあるからな。しっかり足止めなりしてくれないと後衛が仕事出来ない。この世界の魔法が使える人間の割合がどの程度か分からないが、戦闘で十分に使えるほどの魔法使いというのは、それほど数もいないのだろう。
とりあえずは自分の実力を知らないと仲間にする人選も分からないので、売り込みの用紙を持った人達を横目に受付へと向かう。
「今日はどうされましたか?」
受付の前でどうすればいいか迷っていると受付のお姉さんが声をかけてくれた。18歳くらいだろうか、可愛らしい顔立ちの優しそうな雰囲気と声。肩よりも少し長めの金髪はくすみは無いが落ち着いた色合いをしている。普通に異世界の女性のレベルが高すぎる。いや、たまたまだろうけど。
「冒険者の登録をしたいんですけど、ここでいいですか?」
「冒険者登録ですね。ここで出来ますよ。こちらの紙に書ける所だけでいいので書いて下さい」
代筆は10コルですよ。と言いながら差し出してきた紙にパパッと記入する。
「ケーマさんですね。それではカードをお作りしますので、出来上がるまでの間にギルドの説明をさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「お願いします」
数枚の紙を取り出して説明を始める。
「まず、依頼には四種類あります。
一つ目が、登録依頼です。これは採取系の依頼が多く該当する依頼で、自分のランクで受けることができる依頼の中から選んだ依頼を受けてから行うものです。
二つ目が、常時依頼です。これは討伐系の依頼が多く該当する依頼で、よく出現する魔物を討伐した等の際に証拠部位を持ってきて頂ければ受理されます。
三つ目が、緊急依頼です。これは大型もしくは凶悪な魔物が出現した際等に出る依頼で、複数人が依頼を受け、参加もしくは討伐等した際に報酬が出る依頼です。
最後が、指名依頼です。指名依頼に関してはランク制限関係無く双方の同意により依頼が受理され、ギルドランクへは依頼の難易度相応のランクの依頼を受けた際と同じ扱いになります」
ここらへんはなんとなくで行けるから大丈夫だな。魔の森の魔物は基本常時依頼に含まれるから適当に倒してもギルドランクが上がっていくから有難いシステムだ。
「次にギルドランクですが、E~Aとランクが上がっていきます。Aランクの更に上にSランクがありますが、これはギルドでの活躍だけでなく国に貢献する活躍をされた方のみがなれます。
今までのSランク到達者ですと、迷宮の攻略や戦争での貢献が多いですね」
ランクは不便の無い程度まで上がればいいから、Sランクを目指すつもりはない。ある程度金が稼げて、楽しく生きれればそれでいいんだよ。ランクが上がりすぎたら面倒事に巻き込まれそうで嫌だし。
「依頼を受ける場合、ソロだと自分のランクまで、パーティーだとソロのランクは関係無くパーティーランクまでの依頼を受けることができます」
パーティーの場合、例えばCランクとEランクの二人でDランクパーティーだとしたらCランクの人がパーティーにいてもCランクは受けれない。
逆に、Cランク二人のパーティーでも、パーティーとして実力が認められるとBランクパーティーになったりすることはあるから、パーティーでならBランクの依頼は受けられる。
「説明は以上です。分からないことがあれば聞いてくだされば何時でも教えますのでお聞きください」
話し終えたタイミングでちょうど受付のお姉さんの横にある魔道具がキンと音を立て、中からギルドカードが現れる。
時間配分が完璧すぎる……これが受付嬢の実力というやつか!
「こちらがギルドカードになります。登録手数料として500コルがギルドカードに負債という形で入っています。半年以内に依頼ので500コル返済して頂けないとカードが失効となります。返済に関しては依頼の報酬のみ充てることができ、返済額は報酬を受け取る際に指定できます」
登録して依頼を全く受けない人対策ってことかな。身分証にもなるし、偽名でいっぱい登録されても困るもんね。逆に依頼さえこなせば身分証の偽装は簡単にできるって訳なんだな。
「登録依頼を見て行かれますか?」
「今日は装備を整えて軽く魔物と戦うだけにしておきます」
「無理をしないように気をつけてください」
「はい。気をつけます」
受付を離れて、ギルドから出る。
俺が受付から離れた瞬間に何人か俺を担当した受付のお姉さんに声をかけに行ったが、俺の戦闘タイプでも聞きに行ったのかな?遠距離職。特に魔法使いか治癒士なんかだったら声をかけられてたかもな。
あのお姉さんはしっかりと情報は答えられませんと言っていたが、登録用紙をチラッと盗み見るのも狙いだったんだろうな。そっちもしっかり対策していたが。
装備を整えるなんて言ったけど、剣はあるし鎧を買うほどの金は一応あるが買ってしまうとこれから金稼ぎが大変だからやめておこう。
取り敢えず、ストレージはどれくらいの人が使えるか分からないから、隠せるように邪魔にならない鞄でも買うか。