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依頼

 呼び止められるようなことをした覚えはないが。

 受付嬢も何やら焦っているようなので話だけはとりあえず聞くことにしよう。俺に何かができるとは限らないが、俺を呼び止めるくらいだから俺でもできることなのだろう。


 「大丈夫ですよ」


 「今飛び込みできた依頼なんですが、明日の朝にぺネムを出発する商人の護衛依頼を受けられませんか?」


 護衛か。明日の朝に出発するなんてかなり急な依頼だな。商人ということは行商人か?


 「詳細を頼む」


 「護衛対象としては商人とその家族の計三名です。護衛はこの町から迷宮都市メイヴィスまで。報酬は5万コルになります」


 護衛依頼も経験したいところだし、一度行ってみるのもありか。スタインが戻ってくるまではこの町ですることなんて狩りを続けることしか無いってのもあるし。家族連れなら悪い奴ではないだろう。初めての護衛対象としては悪くないはずだ。


 「迷宮都市までの護衛って俺みたいな初心者冒険者でも普通に熟せるものなのか?」


 「普通ならばもう少し経験のある方の方が良い依頼ですが、ケーマ様方ならば大丈夫でしょう。魔の森の手前で狩りができる実力があれば、現れる魔物は殆ど変わりません。ただ、迷宮都市までは片道10日程度かかるため護衛依頼に慣れている方が良いという感じです」


 10日か……二人だと少し辛いところだな。護衛ということは夜の見張りなんかも必要になるだろう。二人では10日間の道程を耐えられるかが問題になる。


 「今回は馬車の御者にCランク上位の冒険者の方がつくため心配は無いと思います」


 俺たち以外にも御者として冒険者がいるのか。

 態々、Cランク上位というくらいだから、向こうは護衛依頼とかにも慣れているのだろう。それならば、俺達が拙くとも何とかなるだろう。条件としては悪くない。


 「その依頼受けさせてもらいます」


 「ありがとうございます。では、明日の最初の鐘が鳴ってから一時間後にギルド前集合とのことです。こちらが依頼の詳細事項になっておりますので目を通しておいてください」


 一束にされた書類を受け取り、ギルドカードを渡せば依頼の受理は終わりだ。処理をしてもらっている間に書類に目を通すが、これと言った情報も不審点も無いのでカバンに袋に仕舞うふりをしてストレージに入れる。一つ俺にとっては良くない情報があったが、そんなに関わることもないだろうから大丈夫なはずだ。

 子供は苦手なんだよな。どう接すればいいか分からない。


 「処理が終わりましたのでカードをお返しします。では、急にお願いして申し訳ないですが、明日からの護衛依頼頑張ってください」


 「頑張ります。準備もあるので、これで失礼します」


 ギルドを出てソフィアの待つ宿屋へと向かう。先に着替えたりしておくように言っておいたが、こうなるのならギルドに連れてきておけばよかった。店が閉まる前に買い物を終えないといけないから、ゆっくりとしていられる時間は少ししかない。

 とはいえ、ギルドから宿屋までは急げばすぐだ。人の間を縫うように走り抜け宿屋へ向かえば、すぐに宿屋に着いた。急いで宿屋へと入ったせいで、相変わらず似合わない受付をしているおっちゃんが驚いた表情を浮かべていたので、悪いと謝りながら部屋へと向かう。


 「ソフィア。今いいか?」


 ノックをして部屋に入っていいか確認する。ソフィアからすると、奴隷なのだから確認する必要なんて無いという考えらしいが、女性の部屋にノックも無しに入る勇気なんて無かったから、ノックしてから入ることを認めさせた。ノックするのも緊張するけど。


 「大丈夫です。どうされましたか?」


 俺が入るよりも早く、ソフィアがドアの前に待機していたのではないかと疑うくらいの早さでドアを開けて出てきた。この前買った服を着ているので、可愛らしい少女にしか見えない。魔法職の女の子なんて体をそこまで鍛えているわけでもないから、普通の服装をしていればただの女の子だよな。

 俺の場合は、少し筋肉もついてきたのと、腕なんかは軽い怪我がいくつかあるから少しは冒険者っぽく見えるようにはなってきたと思う。


 「明日の朝から護衛依頼で迷宮都市まで行くことになった。準備をしに買い物に行くから、着いてこれるか?」


 「はい。すぐに準備をします」


 パタパタと部屋の中に戻っていったと思ったらすぐに部屋から出てきた。

 何をしに部屋に戻ったのかとソフィアを見れば、この前買ってあげたカバンを肩から提げていたのでカバンを取りに行ったのだろう。俺の革袋とは違って可愛らしいカバンだが、ソフィアには似合っている。見た目の分、入る量は少ないが、ストレージもあるからソフィアに荷物を持たせる必要もないので十分だ。


 「じゃあ、買い物に行くか。何か必要な物があればどんどん言ってくれ。俺は旅をするの自体初めてだから何が必要なのか分からないから」


 精々、平和な日本の山でキャンプをしたことがあるくらいだ。あれも一泊だけだったから、持って行った肉と少しの野菜を焼いて食って寝るだけだったから参考にはならない。しかも、寝るのはテントですらなくバンガローみたいなところだったし。


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