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戦闘

 ぴょんぴょんと跳ねるノーマルスライムに狙いをつけて剣を振り切る。


 ザシュっと気持ちの良い手応えを残して、ノーマルスライムは液体となって倒れる。その場に残ったノーマルスライムの核を手に取ると一息つき、振り返る。


 「こいつはここら辺では一番弱い魔物だ。落ち着いて戦えば、俺がサポートすれば負ける事はない」


 「は、はい!頑張ります!」


 緊張した面持ちのソフィアに少し苦笑いしてしまう。あまり緊張しすぎても固くなりすぎて動けなさそうだ。魔物の怖さを教えられて育ってきたこの世界の人間ならば、初めての戦闘となれば緊張するのも仕方ないか。

 一週間前の俺は魔物の怖さも知らず、よくある異世界物語のように簡単に倒せると心のどこかで思っていたから突っ込めたんだろう。


 ……そのせいで死にかけたが。


 ソフィアの為に狩りやすそうな逸れたノーマルスライムを探すが見当たらない。ノーマルスライム同士の距離が近すぎて戦闘中に他のノーマルスライムに攻撃されそうだ。


 「仕方ない」


 少し離れた位置にいた二匹のノーマルスライムの片方に駆け寄り一閃する。またまた心地よい手応えを残して倒れたノーマルスライムを見て、一度距離を取る。


 「ソフィア。落ち着いて詠唱しろ。危なかったら俺が助ける」


 「は、はい。火よ……」


 詠唱を始めたソフィアを見守りながら残されたノーマルスライムの動きを警戒する。


 ……レベル制の世界って怖いな。警戒しながら視線を剣へと移す。剣は前と変わらない。それなのに、一週間前はあんなに苦戦したノーマルスライムが、部屋に篭ってレベル上げをしただけでいとも容易く一振りで倒せるなんておかしいだろ。ゲームならばレベルという一言で済ませられるが、現実であんなレベル上げの方法で上げたレベルが肉体に及ぼす影響などあるのだろうか。

 実際に、以前二発で倒せていたノーマルスライムが、今は一発で倒せるのだから何かしらの変化があるのだろうが、自分で分かる変化というのは心境の変化くらいしかない。考えれば考えるほど迷宮に迷い込みそうな内容だけに、下手に考えず割り切らないといけない部分もあるか。


 ノーマルスライムが、詠唱をしているソフィアまで後数メートルまで近づいたところで、ソフィアの詠唱が完成する。


「焼き尽くせ ファイア!」


 ソフィアの手から火の玉……玉というほど丸くもないか。火が飛び出してノーマルスライムを捉えた。


 「はあ、はあ……」


 「よくやった。これなら十分戦えそうだ」


 火属性魔法五等級 ファイア

 火属性魔法の中で最も低ランクではあるが、レベル1のソフィアでもノーマルスライムを一撃で倒せるのならば十分な戦力だ。


 核を回収してからソフィアを見ると、まだ息が上がってしんどそうにしていた。


 「大丈夫か?」


 「え、ええ。大丈夫です。普通の人と比べても私は魔力量が少ないので、魔法を使うと疲れるんです」


 「それならこれでマシになるかもしれない。MP譲渡 対象ソフィア 常時リンク」


 スキルのMP譲渡を発動するためにスキルワードを唱える。俺からソフィアへと何かが流れるような感覚がした。


 「あ、楽になりました」


 魔力切れからくる疲労だったようで、ソフィアの顔色が一気に良くなった。これだけすぐに回復するのならこのまま戦闘を続けてもよさそうだな。


 「まだ試したことが無いからわからないが、これで魔力を使ってもすぐに回復するはずだ」


 「ありがとうございます。これでお役に立てそうです」


 役に立てることがわかって安堵したのか今までよりも晴れやかな笑顔でソフィアは嬉しそうにしている。戦闘で役立たなくても、料理や色々な手伝いだけでも十分役立つだろうとは思うが、本人が喜んでいるなら別に俺が何かを言う必要もないか。

 しっかりMP譲渡も機能しているようだし、使えるスキルを見つけられて良かった。この世界へ来る前のスキル選択から俺の幸運は続いているようだ。


 「よし。体調が大丈夫ならどんどん狩ろう」


 「はい。頑張ります!」


 二、三匹で集まっているノーマルスライムを狙って攻撃を仕掛ける。ノーマルスライムは水が近くにあると繁殖力がかなり高いらしく、この辺りにはそこそこ多くいるとのことなので狩り尽くすつもりで行っても大丈夫だろう。

 多分、先にこっちの体力が無くなってお終いになる。レベルが上がろうとも俺の体力はそこまで劇的に増えているわけではない。


 「焼き尽くせ ファイア!」


 俺の横をソフィアの魔法が通り過ぎて一匹のノーマルスライムに当たった。

 ソフィアの魔法で群れの最後の一匹が倒れると、すぐにソフィアの顔色を見て続けられることを確認し、新たな群れへとアタックする。時折、ノーマルスライムの反撃を食らうが、痛みは我慢できる。一撃では俺のHPは三分の一も削れなくなっているから、連続して食らいさえしなければ大丈夫そうだ。


 ソフィアも魔法がいっぱい使えるからか、少し楽しそうに狩りをしている。これなら、ソフィアのレベル上げも、新たな狩場への挑戦もすぐにできそうだ。


 約20分。只管にノーマルスライムを狩り続けると、さすがに俺の体力も辛くなってきた。固定砲台と化したソフィアと違い、俺は剣での攻撃の為に動き回っているため、先に疲れが襲ってきた。重くなった体を奮い立たせながら力のこもっていない剣を振り落とすが、そんな一撃ではノーマルスライムを倒しきれない。反撃してくるノーマルスライムを剣で受け、もう一撃加えればノーマルスライムを倒し切れた。


 「焼き尽くせ ファイア!……はぁはぁ」


 ノーマルスライムを一匹倒すとすぐに次の詠唱に入ろうとするが、ソフィアにも疲れが見える。どれだけ魔力が回復しようとも、疲労があることには変わりはないからな。


 そろそろ潮時か。無理をする必要も無いし、ソフィアのレベルは9まで上がっている。

 初日の狩りの成果としては十分すぎる内容だ。

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