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ソフィア

 「では奴隷契約をいたしますので手をお出しください」


 言われた通りに手を出すとガゼフがこちらの手を覆うように手を翳す。何を言っているのかは聞き取れないが呪文のようなものを唱えだすと、覆われていた俺の手の甲からパアっと光が溢れ、手がほんのりと熱を帯びる。……これが契約魔法か。魔法という存在自体初めて目にしたが、どういう原理で魔法という存在が起こす常識外れな事象が起こっているのかは、俺程度の頭脳では見当もつかない。

 

 一瞬、魔法陣の様な紋様が手に現れたが、すぐに消えたので見た目的にも問題はなさそうだ。ソフィアにも同じように手を翳し契約魔法を発動している。たったこれだけで契約が成立するのだから、魔法という存在は恐ろしい。


 この世界では奴隷の首輪とかみたいに奴隷である証明みたいなものは必要ないのか。ソフィアに契約魔法をした後、首に付けていた首輪を外しているところから考えて、あの首輪は仮契約みたいなもんか。仮契約でも十分な程の効力はあったように思うが、これも正式な契約だと思えば仕方ないか。


 「これで契約も終わりです。こちらが彼女の身分証となりますので無くさないようにしてください」


 ソフィアの身分証をストレージにしまい、ソフィアが着替えに行くのを見送る。身分証には俺が奴隷の持ち主だということがいつの間にか書かれていた。


 「スタインってここらでは有名なのか?」


 スタインの紹介でってことでかなり優遇してもらったようなので気になった。

 そりゃあ、ある程度の駆け引きや品定めはあったが、本当ならこの程度で済むはずがないだろう。数万コルはボったくられる予定だったので、安すぎてビビっているくらいだからな。


 「そうですね……スタイン様が紹介状を渡したケーマ様なら話しても大丈夫でしょう。スタイン様はこの辺りでは有名ではありませんね。もともとスタイン様は王都にある商会にいらっしゃったので」


 「ふーん。商会から抜けて独立した感じか。ありがとう。この先は本人から聞くことにするよ」


 こういう話は本人からか、しっかり本人の了承を得てから聞くべきだ。人の過去に触れるのは、触れる側であるこちらとしても心構えが必要にもなるし。


 「そうしていただけると幸いです。……戻ってきたようですね。また奴隷が必要になればお越しください。エレンもしばらくは売れ残っているでしょうし」


 「彼女はもっと良い上のランクの冒険者に買われるべきですよ。必要になればまた来させてもらいます」


 エレンのステータスは俺みたいな新米冒険者にはもったいない。

 買えるならば欲しいが、それよりも今は安定して稼げるようになって拠点を手に入れるのが先決だ。別に冒険者として上に行きたいわけではないから、実力なんてものは置かれた環境でそこそこやっていけるだけの実力があればそれでいいんだ。


 ガゼフの店を出てとりあえず宿屋へと向かう。店を出てからずっと、ソフィアは俺の数歩後ろを黙々と歩いていてなんだか少し気まずい。


 「宿屋に戻ってソフィアの分の部屋を取ったら戦闘用の服や必要な物を買いに行こう」


 「かしこまりました」


 ……そっけない。奴隷っていうものはこんな感じが普通なのか?やっぱり変に口答えとかすると罰を受けたりするのが当たり前なのだろうか。

 俺としては奴隷という立場のせいでこんな感じになるんだったら奴隷から解放してやってもいいが、さすがに買ってすぐの状況で逃げられでもしたら嫌だから口にする勇気は無い。せめて、自分が何をしたいかくらいは俺に対して言えるようにはなってもらいたいところだ。


 気まずい空気のまま宿屋ファロムに到着してしまい、どうすることもできないのでさっさと部屋を取ってしまうことにする。


 「おっちゃん。宿泊二人で」


 「部屋は今日まで使ってた部屋がまだ空いてるよ」


 この一週間ほどで普通に話すようになった宿屋のおっちゃんが今朝返したカギをまた渡してくる。この世界だと人数で宿泊料が決まるのではなく、部屋の数と質で宿泊料が決まるようだ。提示してくる料金がこの前まで一人で泊まっていた時と同じ値段になっている。


 「俺はその部屋で。彼女用にもう一部屋お願い」


 「ケーマ様!?私は同じ部屋で大丈夫です!」


 自分のために一部屋分の金を使うなんてとソフィアが止めに入るがそんなことは気にせずにおっちゃんに部屋を要求する。

 奴隷だからとかじゃなくて、自分の意志で一緒の部屋でいいと言っているなら一緒の部屋にするけど、今は買われたところで様子見やご機嫌取りといった感じだと思うから無視だ、無視。

 というか、俺自身が可愛い少女と共に寝るなんてことをできるだけのメンタルが無いのだから、俺のためを思って別の部屋にしてくれ。


 「ちょうど隣の部屋が空いてるからそこを使ってくれ」


 おっちゃんが鍵を差し出してくるのでカウンターに金を置く。

 さっさと金を払えばソフィアも何も言えないだろうしな。


 「ありがとう。とりあえず、また6泊分先払いしとくよ」


 「あいよ。ちょうど受け取ったぜ」


 鍵を受け取ってソフィアに渡そうとしたが、鞄も持ってないしこれから買い物に行くから鍵はストレージにしまうことにした。

 自分の思っていた奴隷の待遇と違うせいか、うーんと唸っているソフィアの肩を叩いて考え事から呼び戻す。


 「疲れてない?大丈夫ならこのまま買い物に行こうか」


 「あ、はい。大丈夫です」


 ソフィアの返事を聞いて歩き出すと、ソフィアはまた俺の少し後ろを歩いてついてくる。

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