ワタシ
ある程度の会社に勤めて8年目のある日、私はワタシを知った。
きっかけがあればこそ誰でも自分を知ることができると思うわ。
そのきっかけに出会うのは早いか遅いか、もしくは生涯来ないか、
私はワタシに支配される前に取り戻すことができたような気がした。
このままだったらきっとワタシが私になってしまうような気がした。
結局人である以上それに気づくのもまた人。
結局私が私である以上それに気づくのもまた、ワタシ。
「貴方は気づいていますか?本当の貴方とアナタを」
6:50
「例年になく今年の冬は暖かい日が続きますね、11月上旬の気温がここ2、3日続くでしょう」
外の天気は晴れ、しかし折りたたみ傘は必ずバッグに入れておく。
いつ雨が降ってもいいように、後輩に貸してもいいように。
私が困らないように準備は怠らない、だってそういうものでしょう。
天気なんて所詮予報。絶対なんてない今の時代だからといってそれは昔も変わらない。
そして、もう一度荷物を確認。必要最低限ではダメ。
ある程度考えられることを予想し想定内と思って第二、第三の選択肢が常に私の中にあること。
それが私だもの。
「よし、いってきますジュゴン、ハウスで大人しくしててねー。」
まるまるとした白い猫に挨拶する、この家の家族。
ぐぐーっと喉を鳴らせて返事のように私の手に甘えてくる、可愛い仔。
最寄駅から会社まではおおよそ20分の通勤時間。
長年繰り返していてもやっぱり朝のラッシュには慣れないわ。
そんな中でもメールの確認は怠らない。流石に内容までは車内で見ようとは思わないが、
題名だけでも目を通しておけば今日一日の仕事の大まかな流れを考えておく事ができる。
今は携帯で内容を見れる時代。ここ数年で劇的に変化したと思う。
まさにスマートフォンという携帯が普及しアプリケーションの充実。
下手すればパソコンなんかよりも小型な携帯やタブレットを持ち歩く方が効率が良いと感じるようになる。
次の世代には一体どんな便利なものが来るのか。
そんなことを思いながらも時代に取り残されていくという言葉を年をとるごとに身にしみるように私もなってきた。
だからこそ、手紙が相手に響くこともある。電子化される時代で古きを~なんてことわざもあるくらいだもの。
もっと前に進まなければなと最近の私の課題。
駅からは割と会社は近い。お決まりの白猫のタンブラーにカフェラテを注文するくらいの時間はいつも確保する。
たまに仲良くなった店員が本日のコーヒーですよって別途紙コップに暖かいコーヒーを入れる。
これも考慮して早めに家を出るの、あざとい私。
窓辺の席に座ってスクランブル交差点を見つめながらコーヒーをすする。
この時間だけは止まって見える。
ここから見えるのは高層ビルの数々と慌ただしく行き交う人々、真似をしたように飛び交う鳩たち。
私の一日の始まりです。
社内に着くと重々しい空気。
眠たそうにパソコンの電源を入れる課長に挨拶に行く。
「おはようございます。今日から数日暖かい日が続くようですね。」
「おはよう。12月も終わりだというのに季節感がないね、私は助かるけどね。」
覇気のない口調の彼は頭をポリポリかきながら私を見てにんまりした顔。
私とはさほど歳も変わらない課長はこう見えてもやり手のお方。
とういうのもスピード昇進で今後も期待されている若手である。
一方私はこの第5課をまとめるスーパーバイザーの役についているが至って仕事はシンプルだと感じている。
私が務めるのは通信会社の運営業務。
たまに難題に当たる時もあるが、安定して業績を残し、日々業務をこなすというような有様である。
「お、おはようございます。あー起きれなかった・・・。すいません」
息を荒立てて出勤するのは私の直属の部下にあたる結城君。
「週末だもんね、明日から連休だし今日頑張ればね、うんうん。まぁ遅刻じゃないから良かったね結城」
そんなことを言うのは課長だった。
課長はいつもこんな調子だけど、決して優しいわけではないことはみんなが知っている。
厳しいことを言う時もちらほら、当たり前ですがね。
課長が無遅刻、無欠席、無早退、そして無残業しまいに無休日出勤を徹底的にこなしている人。
ここまで完璧にこなす人っているから驚くところです。
「ミーティングやるぞー、皆集まって。」
その日のお昼休みの会話は今でも覚えている。
「先輩、ランチどうですか?俺、めっちゃ上手い中華屋見つけたんですよ!そして安いし!」
お昼になった途端に元気がよくなるのは結城君だ。
「そうだね。今日はお弁当作ってないし行こうか。」
タイミングよく携帯がなる。私の彼からだった。
―今から休憩ならランチ一緒にどう?近くまで来てる。
「結城君、ごめん彼からランチ誘われちゃったけど、良かったら3人でもいいかな」
彼と結城君は面識があった。たまに仕事帰りに迎えに来る彼と数回挨拶を交わす程度ではあったが、それ以前に同じ大学のサークルだったとか。
笑顔で頷いてくれたので彼に話、私たちは3人でランチに行った。




