問題のありすぎる日々-4
ガン、ゴン。
天井から響く金属音で目を覚ました。
時計機能を呼び出せば23時。夜中だ。
「…………?」
ガンガン……ガン、ゴゴン。
通気用のダクト?
音がだんだんと近づいてくる。
やがて音は俺の部屋の上で止まる。
なんだろうか。自動清掃機じゃあるまい、まさかネズミ……紛れ込んだ侵入者という意味で。
気になると確認しておきたくなる。
椅子を運んでいざ確認しようと、ドライバーでネジを緩めようとした途端。
ガコン。
「はっ」
「あ」
シルフィエッタが落ちてきた。
避けられるわけがなく、そのまま俺がクッション代わりになって固い床に打ち付けられる。
そりゃもう、ものすごい音で。
『何があった、報告しろ』
すぐに中佐からコールがかかる。
『いえ、ちょっと天井の掃除をしてたら倒れまして……』
『掃除か、こんな時間に』
『あー……』
『正直に話せ』
『……部屋にシルフィエッタがいます。俺にはどうしようも判断できないので指示をお願いします』
通話が切れた。
返答もなしに切るとはどういうことだろう。すべて俺に任せると言うことなのか、それともこの部屋に乗り込んでくるのだろうか。
「……おい」
そしてなぜこの娘は人様の部屋に落ちた上で、他人のベッドにもぐりこんで寝てしまうのだろうか。
「おーい」
呼びかけたところで無視して眠り込む。
俺はどうしたらいい?
一緒に寝る? 朝起きたら死体になってるだろうな。
仕方ない、部屋の隅で寝るしかない……。
なんだよもう。
部屋の隅で夜を明かした次の日。
問い詰めようかと思ったが見つからない。
「どこにいるんだ……」
とりあえず基地内の監視カメラをハックするということは後々まずいからできないとして……。構造体にサーチ掛けるのも文句言われそうだし……。
『中佐、シルフィエッタはどこにいますか』
『仕事中だ。リーンに聞け』
『分かりました』
と、言われても番号が分からないんだけど。
いや……前の履歴があったな、あれで。
『リーン准尉』
『はい。中佐より聞いています。場所は基地構造体最深部、管理AI直轄エリアです』
『なんでそんなところに……』
AIの処理が最も激しい場所であり、膨大なデータが保存される場所。うかつに近づけば巻き込まれてそのままリソースに還元される。つまり、現実では綺麗な死体の出来上がりということ。
『入っていいですか』
『最深部は自立稼働です。こちらからの操作は一切受け付けません、うかつな行動をしないでください』
『了解しました。アドレスを』
仮想世界へダイブするためのプロセスを起動しつつ、部屋に急ぐ。
さすがに廊下とかその辺でダイブすると、その間身体は動かない訳だからないかあると困る。