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問題のありすぎる日々-1

 おっさん……もといスコール・クラルティなる人物に"買われて"から早一週間。

 フェンリルのスコールと名前が同じでスペルが違う、少々ややこしい。

 しかもリンドウはことあるごとに……初日から俺に殴りかかってくるほど問題を起こした。

 貴族だから気に食わない、セントラ人だから気に食わない、フェンリルだから気に食わない、なにかと文句を言っては突っかかって来て、そして取り押さえられる。

 しまいには子供にしては大人びている――たぶんオブラートに包んだ言い方なんだろうけど――と、俺が言われた時にも襲い掛かってきた。

 よくよくIDに添付されたプロファイルを見れば俺よりも年上だ。そのくせして……いや、リンドウはかなり過酷な環境だったようで育ちが悪く、俺と同じ程度にしかみえなかった。

 なんでも親と一緒のところで仮想の兵士として勤めて、そしておいて行かれたとか。そのあとが特にひどかったらしい。調べはしないけど。

 俺が言うのもなんだが、年が一桁で戦場送りはよくある。

 そしてこんなことをいうから周囲の上官が「子供にしてはちょっとおかしい」というのだ。

 というか"普通"を知らないからどうも思わないが。


「リンドウ訓練生」


 んでもって今日。

 ついさっきこのバカは隊長の一人娘に軽い挑発を受けて手を出した。

 止めに入ってそのまま一緒に隊長の部屋に連行された訳で……。

 挑発する方もする方だが、こういうときはどちらが悪かろうと身内が贔屓されるもの。


「シルフィエッタ、謝れ」

「いや」


 贔屓されてなかった。


「なんであれ先に口を出したのは貴様だろう!」


 きつく言われて身震いするが、それでも泣きはしない。


「リンドウ訓練生、このことについては不問に処す。出ていけ」

「……はい」


 まだ馴染んでいない敬礼をすると、部屋から出ていく。

 残された俺と隊長の娘さんと隊長と。かなり気まずい沈黙になる。


「あの、俺は」

「貴様には話がある。そのまま待っていろ」

「了解」


 そのまま隊長のお叱りを眺める。

 なんというか、親子ではなく親戚の、それも遠縁のおじさんと女の子という様子にみえる。お互いが親と子という認識をしていないような……単に仲が悪いだけかもしれないけど。

 怒られているのを見ていると、ふと疑問に思うことが一つ。

 髪の色が金と青。

 親子なのにこの違いは何だろう? 養子? 母親のほうが強く出た?

 別に髪の色が緑だろうとピンクだろうと不思議じゃない。ここには"色々"住んでいるから。


「こらシルフィエッタ!」


 怒鳴る中佐、黙ったまま出ていく青髪。


「はぁ、まったく」

「中佐。仲が悪いんですか」

「母親が死んでからああだ。貴様は家族が死んでもなぜ平気でいられる」

「別に……家族ではありましたが、ただそれだけです」

「なるほど、家族ではあるが家族として見ていなかったのか」

「ええ」


 兄と妹を除いて。


「そうか。まあいい、話はこれだ」


 転送されてきた電子データは総合学校か軍学校への入学について。


「貴様が決めろ。やりたいことがあるのだろう」

「どちらが殺せますか」

「人殺しの力が欲しいか」


 笑いながら言う中佐の眼は全然笑っていない。


「ならば軍学校は無しだ。型にはまった技術など戦場では役に立たん。貴様、フェンリルで相当に鍛えられているだろう」

「いいえ」


 鍛えられたというよりは、遊ばれていたという思いしかない。

 しかし、一般人の目で見れば恐ろしい子供に映ったかもしれない。


「ぬかせ、フェンリルにいれば殺めること、傷つけるとへの忌避は消え去る」

「でしょうね」


 送られてくる手続きの書類に目を通しもせずにサインだけして送り返す。


「分かっているのならばいい。荷物をまとめておけ」

「寮ですか」

「あたりまえだ。ここから通うなどさせるわけがないだろう」


 ちょっと前に見たけど、この基地は大型トレーラーよりも大きな車両をいくつも組み合わせて基地にしている。いわば移動基地。常に移動する、しかも場所は秘密だからどうやって帰ればいいのか? ということだろう。


「了解、それでいつですか」

「それは後日追って連絡する」



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