裏切りのフェイス-5
ようやくフェンリルベースになじみ始めたこの頃。
運動場に行けば模擬戦をしている訓練生がいるので混ぜてもらい、銃の扱いも触りだけ教えてもらう。
終わればシャワーブースで汗を流し、食堂で適当に何か食べる。
ここの食堂は週一だけ先着二十名には特別メニューがでる。それが何かと言えばお菓子であったり手の込んだ料理であったり。作っているのはスコールで、一般メニューよりも遥かにおいしい。事前にホワイトボードに希望するものを書いておけば高確率で作ってくれるので楽しみでもある。
そういうのが一通り終わると、割り当てられた狭苦しい部屋に戻るか甲板に出て陰で昼寝か。
たまにはスコールの部屋に行くのもいいか、と思って向かいはしたが……。
『い、痛いっ! 痛いです!』
『最初だけだ、入ってしまえば慣れる』
『慣れませんよぉ……っ! ちょ、ちょっとストップ、ほんとに痛いです』
『じわじわ痛いのが続くならいっそ一気にやってしまった方がいいぞ』
『わ、私初めてですよ!?』
『なおさら慣れておけ。今後こういうことはよくするから』
『うぅー……わかりました……やってください』
そして部屋の中から叫び声が響いた。
軽くノックをしてみるとすぐにドアが開けられる。
別にやましいことなんてしてなかった。
「パーティー用なんだが向こうの指定がうるさくてな。コルセットで絞めてる」
コルセット云々言う前に服のサイズを変えたらいいのに……。
いや、合うサイズがここにないのか。
「ぎ、ぐぐ……苦し……」
目の前にいる女……と言っても見るからにスコールより年下……は歯をくいしばって耐えている。
一体どんな衣装を着るのかと聞いてみれば、随分とアレなものだった。
まあ……趣味的なナニかとだけ言っておこう。
「ひぐぅっ、は、はぁぁ……」
「無理があるな……ただでさえ細い体をさらに絞めるともなると」
絞める手を止めてどんどん解いていく。
「……なんでここで?」
普通こういうのって女なら女同士でやるか、専門の人がいるだろうに。
「今ここにいる中でできるのがまあ……」
「な、ナギサさんだけは絶対に嫌ですよ!」
「色々触るからな、あいつ」
ということらしい。
これで分かったが、スコールは何でもできる。
炊事洗濯家事全般おじさん連中の相手から戦闘殺し暗殺拷問エトセトラエトセトラ。
「あーそうそう、クロード。今度の実践演習に参加するか? 枠が空いてる」
「する」
「よし。仮想空間での戦闘だ、リミッターもあって死ぬ心配はないから安心して撃たれていいぞ」
……いくら死なないからって、それでもしっかりと痛んだけど?