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裏切りのフェイス-2

「クロスアセンブラ、知っている者はいないだろうがまだ”世界暦”になる前、あの”大戦”が起こるよりも前の”西暦”の頃。その中でも初期のころに使われていたものであり、アセンブリ言語を開発環境とは異なる環境下で実行ラン可能なプログラムを生成する際に使われていたものだ。現在では高等言語の使用に伴いクロスコンパイラと呼ばれているものが使用されている」


 実戦の”見学”を終えてから数日。

 また今日もスコールの講義を受けていた。日増しに講義を受ける人数は減っていき、新たに入ってくる者がいないためにほんの数人だけになっている。

 どうも訓練生から候補生へと昇格して、その後実戦配備のために各隊へと割り振られていっているらしい。


「さて、ここで簡単な問題だ。現在MEMSやNEMSなどの微小機械の開発に力を入れているのはセントラという国だ。そこで現状開発されている名目上は汚染物質の除去とされている微小機械の名前は?」


 どこか簡単なのか……。

 そんなものは開発陣営の上層部しか知らないだろうに。もちろん誰も答えることはできず、答えが言われる。


「今のところ様々な呼び方が噂されているが、主なものは分解者ディスアセンブラもしくはDCアセンブルなどだ。DCはディス(dis)クロス(cross)だ。まあ単にクロスアセンブラだとかクロスアセンブルでもいいがな」


 昔使われていたものが忘れられて、新たに同じ名前で同じようなことをする別のものがでてくることもある。


「それって、なににつかわれるんだ?」


 質問してみると、机の上に表示された仮想ディスプレイに資料が送られてくる。

 難しいことばかりでよくわからないが。


「……?」

「まあ一応覚えておいてくれ。これから戦場で使用されたときに、抵抗できずに”溶かされる”なんてことにはなって欲しくないからな」


 壁に張り付けられた巨大なディスプレイに図や説明が表示されていく。


「簡単に言うならば指定した構造をマイクロ単位、ナノ単位でバラバラにしてしまうものだ。そのまま汚染物質の除去に使ってくれればいいが、これを戦闘に使われた場合は特定の遺伝子情報を持つ人間だけを溶かして制圧することもできるし、銃の動作不良を誘発して何もできない内に殺されることもあり得てくる」


 そんなデタラメなものが兵器として……。


「さらに分解だけでなく構築ももちろんのことできてしまう。分解したものを使って自己増殖、最終的には自然消滅するようにプログラムされているんだろうが、必ずどこかで複製エラーが起きるはずだ。そうなればグレイ・グーだ。意図的に起こされようものならば既存の生物兵器よりも厄介で、数時間で星そのものがなくなる可能性も零ではない」


 その後も説明は続いていった。

 グレイ・グーの可能性は低いが起こり得ると。遥か昔にあるバクテリアが酸素を作り出し始めたとき、海に解けていた金属が酸化して沈殿、その当時の海というものを変質させてしまったという。

 海を変えた酸素は大気中にも広がって、多くの嫌気性生物を死滅させ、好気性生物が生き残っていった。さらにはオゾン層を形成して紫外線を遮断、大気までも変質させたという。

 全体で見ればこれは微小生物の起こした災害ハザード。微小機械にもこれは当てはまるから、グレイ・グーは否定できないとのこと。


「それって、対抗手段はないんですか?」


 別のものから質問が出る。

 それの対抗策は知っておきたい。いつか使うかもしれないし使われるかもしれないから。


「あるぞ。まず第一に魔法によって呼び出される召喚獣や幻獣、さらに物理現象に依存しない魔力によって生成された物質を浸食することはミスリル製でもない限りは不可能、第二にあれだけ小さいと電撃や電磁波で破壊できる。要は魔法には相性が悪いから魔法ならほとんど対抗できるということだな」

「しかしそれは指向性のマイクロ波などでも」

「もちろん大丈夫だ。EMPボムでも使えばいい。それに、そんな危険な戦場にはフェンリルの正規戦闘員の中でも本当に実力がある者しか投入はされない」


 とはいっても、いずれはその実力がある者になる可能性がある。

 覚えておいて損はない。むしろ覚えておく必要がある。

 その後も長い講義は続いた。学校のように五十分だとか九十分という区切りなんてない。

 今はまだ分からないが、ブレインチップ内に記録できるからゆっくりと理解していけばいい。

 焦るな、いきなり復讐なんてしてもあんなのに勝てるわけないんだ。



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