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リカ、“愛”に溺れるッ!!(もうっ、しょうがないな※嬉)



「だから、なんか文句あんのかよ! 言いがかりにもほどがあるだろッ!」



 瀕死の重傷だな。こうなりゃカワイイ女の子だ。


 ちょっと口のワルイ、ね。



「ぬあに見てんだいッ! いいか、アタシは“タダ”じゃない! 分かったらそのウス汚い視線、とっとと向こうへ持っておいきッ!」



 ゾンビ映画のようにわらわら群がる【低級酒場(ウィスキードック)】の常連たちを

 〈昼〉に舞い降りた荒ぶる『魔女』が即座にガツッと薙ぎ払う!

 やはり〈夜〉じゃないと戦力が大幅ダウンすると見た。

 いつもの覇気がない。


 さあ、もっともっと光あれッ。ガンバレ最後のもうひと押しッ! 


 ラスボス撃破は近いぞ。



「……まったく。あんなヤツに私が買えるかッての。ねえ、もうイッパイ」

「もうやめろ」

「はあッ! この店は客の注文が聞けない、良心たっぷりの店なのかい! ソイツァ、まったく知らなかったーー!」


「ヒドイ姿だぞ」


 そこで傍若無人・天下無敵・天上天下唯我独尊の『魔女』、

 薄毛の一言を聞いて、ようやく自身の格好を顧みる。


 人前では常に完璧に整える彼女にしては珍しく、今は完全ノーメイク。

 これは賛否両論あるだろうが個人的には、こっちの方が好みだね。

 羽織るペラッペラのネグリジェは素肌がくっきり透けて見える上に、

 あのように荒れ狂った後では、その最低限の役割さえ成してない。


 目の前にぶら下がる熟れた巨大マシュマロは上半分が露出して、

 目をギラギラさせて物色するオスどもの本能に

 絶えず強力に訴えかける始末。


「み、見るな!」

「はあ?」



 そう言ってシエラザードは俺の視線から逃れるように、

 はだけた胸元を細い指先で手繰り寄せる。

 そしてまるで少女のように頬を真っ赤にして急にそっぽを向く。



「……じっくり見たろ」

「ああ」

「……イヤらしい目で、じっくりと」

「そりゃ目の前にあるんで」


「……じゃあ“コレ”はナシ」

「待て、待て待て待てッ!」



 圧倒的な存在感を放ち続ける巨大マシュマロの露出面積を

 可能な限り縮小させたまま、シエラザードは俺の前で沈黙する紙切れを

 サッと素早く取り上げる。



「見たじゃないか……じっくりと、すごくイヤらしく……」

「それとこれとはハナシが別だ!」

「だから言ったろ、私は“タダ”じゃない」

「はあ? ふざけんなッ」



 マズイ。

 状況がヒジョーにマズイ。

 あと一撃でノックアウトするはずだった『魔女』が――

 既に虫の息だった、あの〈夜〉の女王が――

 勝手に見る見る回復していくッ!




 あっという間に完全復活したシエラザードは

 手繰り寄せていた豊かな胸元をパッと離すと、

 今度は見せびらかすように“最凶の武器”で執拗に俺を攻撃する。



「ねえ……リカ、やってくれるでしょ?」

「さてね。ちょっと今は立て込んでるし」

「昔のなじみの私が、こんなに困ってるのに……?」

「ああ忙しい、忙しい。カネの使い道について計画を立てないと。ええい触るな近づくな」


「私を見て」



 とろけてしまうような声を急に出した彼女は、

 まだ“赤いモノ”が渇いていない俺の頭部を引ッ掴むと一転して、

 その精巧なフィギアのような至高の芸術品の上に、

 そっと優しく押し当てる。



「いっぱい“愛”してあげる。だから助けて……ねえリカ、お願い……」



 もしも断れる男が居たら、俺は尊敬するね。

 発見次第〈携帯端末(パーソナル・ハンド)〉のカメラ機能をオンにして、

 さっそく通報する準備を整える。



 だってソイツは幻想を壊す危険なテロリストだから。



 なりたくはないけれど。




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