リカ、実は“ナリキン族”なのだ!!
その時の俺は、そういう時期だった。
大きな仕事が終わった直後で、まったくカネに困ってなかった。
先日の【商業地区・六番街】を震撼させた“あの事件”と言えば、
大抵のヤツには分かってもらえると思う。
芸能ニュースになった途端、すぐにチャンネルを変えるカタブツだって、
たぶん知ってるはず。
ありとあらゆるマスメディアが、こぞって競うように報道したんだから。
庶民には縁遠い『超』一等地を電撃的に占拠した“あの大事件”――
なにを隠そう、その裏でコソコソしていたのが俺だ。
溢れんばかりの“愛”を配り歩いたおかげで、その【公園】は今、
とても賢い子供たちの手の中にある。
そッちの様子を見に行きたいが、
その機会は残念ながら、まだない。
「で、いくらで受ける?」
「やっぱり“愛”だよなあ」
するとこの『魔女』、俺の発言を完全ムシ。
お構いなしにカウンターテーブルの脇に置いた高級ブランドバックを
ゴソゴソ漁り、中から一枚の紙切れを出して俺に飛ばす。
「金額を書きな」
フッ。
“愛”なんてモノは、この『魔女』は腐るほど持ってるってことだな。
「好きにしていいよ……だから、サッサと解決しておくれ」
「ずいぶん気前がイイな。そんなにピンチなのか?」
「はあッ!? さっきのハナシ聞いてねーのかよ!」
シエラザードは鬼のような形相で俺にグググと迫った後で、
「酒」と薄毛の店主に力なく注文する。
そういえば俺は、コイツらが同じ空間にいるところを初めて見た。
こっちは引く手あまた、
『超』ヤリ手の敏腕プロデューサー兼・未だ現役のプレーヤー。
一方こっちは閑古鳥の鳴く、
場末の酒場総合プロデューサー兼・しがないバーテン。
これほど明暗が分かれる両者もいない。
どっちに生まれ変わりたいか――なんて、聞くまでもないだろう。
これぞ美女と野獣。この奇跡の瞬間を〈携帯端末〉で撮影して、
プリントアウトして売り出そうかな。
注文が殺到すること間違いナシのキャッチコピーは
『悪霊退散☆デビルバスターズ! 魔除けとして一家に一枚!』
なんちゃって。
そして追記。
― !!important!!注意事項!!important!! ―
不幸と一緒に“シアワセ”も、一切寄せ付けません。