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夢ちゃんのだいちゅきホールドゥ!

「ねぇ……戦争の反対ってなんだか分かる?」

「平和?」

「違うよ。みんな自分の国を平和にするために戦争するんだから、平和という大きな目的の一手段が戦争なの」



こっそり薄目を開けると、そこにはジョーくんのご尊顔がドアップで鎮座していた。

(……お姫様だっこやぁぁ~! 超絶イケメンにお姫様だっこされとるッ私ぃぃ~!)

運ばれる振動、彼の筋肉の硬さ……。鉄パイプで死んで良かったぁ~……死ななきゃこんな天国(医務室)には一生辿り着けなかったッ!

しかし医務室に入ると、ジョーくんがそそくさと私を銀色に輝く医療カプセルへ放り込もうとしたァァ!

「待って待って!ジョーくん! あっちあっち! あっちのふかふかのベッドがいい!」

私は全力で肩をタップして拒否したが、彼は冷たい。

「なんでだよ。カプセルに入らないと治療できないだろ」

問答無用で押し込まれ、ハッチが閉じる。『シュコー……』という音と共に、怪しいガスが注入され、モニターが私の全身をスキャンしていく。

結果:『仮病(異常なし)』

死んだ魚のような目で私を見るジョーくん。

カプセルの蓋が開いた瞬間、私はバネのように飛び起きた。

「お前どういうつもり――」

「ジョーくん! 私たち、これから出撃して死んじゃうかもしれないんだよッ!」

「そりゃそーだろ。戦争なんだから」

「だから死ぬ前にさ、ね?」

私は率先してベッドへダイブし、手招きで彼を誘った。

怪訝な顔のジョーくん。でも素直にベッドに来てくれる。

(――今だッ!)

股をガバッと開き、ジョーくんの腰をガッチリと挟み込むぅ!グイとこちらに引き込めば、とっさに手を付くジョーく……ん!見つめ合う二人……その距離は吐息が触れ合うゼロ距離ッ!

「……なにすんだよ」

「だいちゅきホールドゥ!」

沈黙。

大丈夫。私は絶世の美少女。いかに鋼の自制心を持つジョーくんと言えど、この色香に抗えるはずがないッ!

「キスしてくれたら出撃する」

「は?」

「キスしてくれたら元気になって出撃できる」

ああ……カッコイイ……カッコ良すぎるぅぅ!もー我慢できないッ!こっちからッ!

「キス……していい?」

その時、扉が勢いよく開いた。無情に鳴り響く緊急ブザー……。

「ジョー隊員だけでも至急出撃を!敵が領海内に侵入しました!」

「行くぞ夢!」

最悪のタイミング。私はジョーくんに引き剥がされ、引きずられるように格納庫へ舞い戻った。

(でもでもでもぉ~、あの沈黙はOKってことだよね?そういうことだよね?)

二手に別れる間際、ジョーくんの横顔を伺ってみたが、彼は戦士の顔になっていた。ガックリ肩を落とす……

なんかよく分からんけど、気づいたら操縦室にいるし……私を囲む画面には、解読困難な英語の羅列……「ターゲット・ロック」「ハザード・警告」……正面のワイド画面が視界に変わった。綺麗な海と空。どうなってんのこれ?私、空飛んでんの?

横にいるジョーくんのレイダーを見て分かった。無数のヘリコプターに吊るされて移動してる。

漆黒の狼型レイダー。そのレイダー、カッコイイね。よく似合ってる……

遠くの方に、もこもことした丸っこい島々が見えてきた……聳え立つ巨人……多分あれが敵だ。高層ビルを抱えて膝蹴りで破壊してるもん。てっきり怪獣と戦うのかと思ってたけど、敵もレイダーなんか。ブッサイクな金色の顔。身体は白地に赤のワンポイントのデザイン。太陽の塔のパクリじゃん。

おっと、落とされた。膝がカックンしちゃった。ここからは自分で行けってことか。

《このまま俺が右。夢が左で挟み撃ちだ》

操縦室にジョーくんの甘美な声が響いた。その声で急にスイッチが入る。

(ジョーくんと、生き残りたいッ! 帰って、漢気ワッショイしなきゃいけないんだからッ!)

《うぅうん。まずは私一人で行くよ。ダメそうなら助けに来て》

《なんだよそれ。俺は足手まといってか?》

私はピンクの豹型レイダーを疾走させながら答えた。

《違うよ。私記憶喪失だからさ、おとり役くらいしかできないから。敵がジョーくんの方行ったら、私どうしていいか分かんないもん》

敵もこちらに気づいてビルを破壊するのをやめた。なんだ。お前もこっちに向かって走ってこいよ。プロレスじゃねんだぞ。舐めてんのか?これは戦争だ。命の取り合いだ。

私は疾走の勢いのまま片足タックルをかました!とみせかけて、『だいちゅきホールドゥ!』

太陽の塔は太腿を挟まれて動けない。私の両脚を力づくで剥ぎ取ろうともがいているが、放すわけがない。体を振っても、尾骶骨を起点にして、私の身体が左右に捻れるだけ。

《おい、知ってるか?柔道ではその昔、蟹挟み、否。だいちゅきホールドは反則技ではなかった。ではなぜこの技が反則技として封印されたか?》

腟の奥深くに力を込めるッ!太陽の塔の太腿がミシミシと音を立てて潰れていく感触。

《それはな、この技がめちゃくちゃ、危険だからダヨォォォォォ!》

力任せに太腿を切断したッ!すかさず後ろに倒れた太陽の塔の顔面に跨る。

《お顔で温めるのねぇ~ん!》

必殺の半月カッターを股間ハッチから射出し、腰をフリッフリッ!顔面を縦横無尽に斬り付ける。勝利を核心した私は両手を頭の後ろで組み、あえて余裕をかましてやった。

《お利口ちゃんでちゅねぇ~……こぢゅかっでくだちゃ~いッ!》

ドガァァァンッ!!

羞恥心に耐え切れなくなったのか、太陽の塔の頭部が自爆した。爆風が股間を叩いたが、別にどうってことはない。

(ダサ、自爆してこの程度の威力かよ)

私は立ち上がり、モニターの向こう側にいるであろうジョーくんに向けて、横ピースでポーズを決めた。

《楽勝デスッ!》

(やった!勝った!これで帰れる!帰って一緒に漢気ワッショイできるよ!ジョーくぅんッ!)



**何が起きたのか全く理解できず、呆然と立ち尽くす櫻井丈!恐るべし、神格スキル、性欲!恐るべし、だいちゅきホールド!つかの間の平穏を取り戻した隠田夢の学校生活が今、始まる!次回『夢ちゃんのバックハグゥ♪クラス全員に見せ付けるぅ♪』乞うご期待ッ!!**



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