夢ちゃんの異世界冒険譚ッ!爆誕んッ!
~異世界の紹介~
【平等定期分配主義】
地球上の全ての空間と資源は、平等かつ定期的に人類一人一人に分配すべきと考える思想。
【V.P.R.(The Void People's Republic)】
通称ヴィッパー。シンガポールとルワンダが連名で創設した平等定期分配主義の統一政府。持たざる者たちの共和国の意。資源の乏しい国々、モルドバ、日本、韓国、パラオ、ヨルダン、レバノン、エチオピア、ジブチ、レソト、イギリスなどが加盟している。ボリビアとロシアの革命を軍事支援して吸収することに成功し、現在アフリカ大陸の国々とオーストラリアの革命を軍事支援している。
【個人継続保有主義】
地球上の全ての空間と資源は、国境に従って世界の国々で分かち合い、その国の法にのっとって個人が継続的に保有すべきと考える思想。
【G.O.D.A. (Global Order Defense Alliance)】
通称ゴダ。アメリカ合衆国とヨーロッパ連合を母体として結成した個人継続保有主義の国々によるアンチV.P.R.軍事同盟。地球秩序防衛同盟の意。一神教色の強いアメリカ合衆国、ハンガリー、ポーランド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が筆頭国として牽引している。アメリカ大陸では、嫌米感情の強いボリビアを除き、アメリカ合衆国の強力な軍事支援によってV.P.R.の革命勢力を抑え込んでいるが、アフリカ大陸の国々はヨーロッパの経済支配から独立しようとV.P.R.の革命勢力が奮闘し、苦戦中。いち早く見切りを付けてV.R.R.に加盟したイギリス。そしてヨーロッパ連合のなかにもV.P.R.との争いに負けてアフリカ大陸から資源を搾取できなくなった後の事を考えて、V.P.R.に加盟しようとする動きが……
【インド】
個人継続保有主義の大国。自国の宗教であるヒンドゥー教と異なる一神教色の強さを嫌煙して、G.O.D.A.には加盟していない。ただし兵器関連の輸出先はG.O.D.A.加盟国に限るなど、G.O.D.A.側の陣営ではある。V.P.R.の狙いは人口に対して空間が広く、資源の豊富な国であり、人口過多のインドを吸収すると、負債になってしまうため、放置されている。
【共産党一国永久保有主義】
一国の空間と資源は、その国の共産党が永久に保有すべきと考える思想。
【中華人民共和国】
共産党一国永久保有主義の大国。V.P.R.とG.O.D.A.の戦いには中立を保ち、双方に対する兵器関連の輸出で好景気が続いている。V.P.R.としては、人口過多の中華人民共和国を吸収すると、負債になってしまうため、インドと同様に放置されている。
【レイダー】
近代戦の主力となるヒト型大型ロボット。
第一話 夢ちゃんの異世界冒険譚ッ!爆誕んッ!
「ねぇ……七つの大罪の中に、一つだけ『大善』が隠されてるのって知ってる?」
隠田夢、十五歳。
髪型はおさげ。メガネ着用。性格は陰キャ。外見は……お世辞にも可愛いとは言えない、いわゆるブス。
高校一年生になったばかりの私の人生は、学校からの帰り道、建設中の高層ビルから降ってきた鉄パイプが頭部に直撃した瞬間に幕を閉じた。
あーあ……なんてつまらない人生だったんだろう。
一度くらい、メガネを外したら美少女だった、みたいな展開を経験したかったな。
そう思った次の瞬間、私は神殿にいた。
私と同じように死んだらしい人々が列をなしている。私もそのなかの一人だ。
顔をひょこっと横に出して列の先を見やると、噴水の前に女神さまが。彼女は事務的な手つきで、一人一枚ずつ「スキルカード」を手渡しては、次々、異次元空間へ飛ばしていた。
「これって、いわゆる異世界転生ですかね?」
私の前にいたワキガのデブに尋ねてみると、彼は興奮気味に「そうだろ! テンプレ最高!」と発狂した。
だよね。そうとしか思えない。オタクの知識がようやく役に立つ時が来た。
そして、私の番。
女神さまが私のカードを見て、声を弾ませた。
「あなたのスキル……レア度は『神格』デスッ!」
神殿がどよめいた。後ろの人たちが「おい、神格だってよ」「マジかよ、ブスのくせに」とヒソヒソ喋っている。
「そっ、それって何番目にいいレア度なんですか?」
「最上位デスッ! この世に七枚しか存在しませんッ!」
パねぇ。引いちまった。
人生の最後に、まさかの大逆転ホームラン。これで異世界では無双確定だ。
私は震える手で、自分のカードを裏返した。
【スキル:性欲。効果:性欲が神レベル】
「…………」
沈黙。
女神さまは慈愛に満ちた微笑みを浮かべるだけで、何も言わない。
「え?……それだけ? 聖剣とか、禁忌魔法とかは?」
『それでは、いってらっしゃ〜いっ!』
返答の代わりに、異次元空間の穴に吸い込まれた。
グルグル周って……空から落ちる。綺麗な海。え、死ぬ。これ普通に死ぬじゃん。
「助けてェェェェェェェ!」
目が覚めた。そこは真っ白な天井だった。
異世界の病院。ベッドの上。
イケメンと感動の出会い、とはいかなかった。私の体は、普通に落ちて、普通に全身複雑骨折だった。
あの高さから落ちて生きてたのが奇跡だけど、動けない。ギプスだらけだ。
なにこれ。スキル弱すぎない? 性欲が強いだけの骨折女子高生に、何をしろって言うのよ。
その時だった。
頭の中に、強烈なインスピレーションが閃いた。
病室のカーテンが開く。そこには、なぜかクラスメイトたちが集まっていた。
女子たちが、学校一のイケメン……ボクシング部の「ジョーくん」を囲んで、キャッキャと騒いでいる。もちろんジョーくんはシャツのボタンを全開にし、その垂涎の筋肉美をチラ見せしている。
「ねぇジョーくん!誰にするの!?」
女子たちのはしゃぎ声。
そうだよ。ジョーくんだったら誰とでも付き合える。だってジョーくんのことは、学校中の女子全員が好きだもん。タメも、イッコ下も、イッコ上も。なんならバレー部顧問の石原先生だって、夜はジョーくんのブロマイドを見てるって噂だもん。
一同が固唾を飲んで見守る中、ジョーくんが、ゆっくりと指を差した。
「……夢ちゃん」
え? あたし?
エエーーー! あ、た、しにすんの!?
全身ギプスで、落下の衝撃でメガネもひん曲がってるブスな私を選ぶの? ジョーくん、乱視なの?
驚愕で口が開きかけた、その時。
(……あっ、ダメ。これ、くる。ジョーくん漢の目だ)
ハッとそこで我に返った。
「夢ッ!夢ッ!」
目の前に……お母さん?風の人。
「良かった~……母ちゃん夢が死んじゃったと思って……生きてて良かった~……ホントにっ……良かったぁぁ~……」
(んーと……どっちだこれ?異世界?現実?)
死ぬ前のお母さんを思い出してみる……
私とよく似たブス……
全力で頭を振る!違うッ!目の前にいるのは異世界のお母さんだッ!そうに違いない!
「お母さん……」と恐る恐る呼んでみると、「なーに?」と涙声で答えてきた。
やっぱりそうだ!お母さんだ!この人スンゲェ美人!てことは、私も!?もしかして!もしかしちゃう!?
「ねぇお母さん……鏡見せて」
「え?鏡?包帯だらけだけど、先生はちゃんと傷が癒えたら元に戻るって……」
居てもたってもいられず手鏡をブンどる!そして、顔の包帯をグルングルンすんごい勢いで回す!
「こっ……これは……片目は紫色に腫れてはいるけど……」
私スンゴイ美人じゃーーーんッ!ビッ、ショッ、ウッ、ジョッ、じゃーーーんッ!
**病室のなかで突如勝ち誇ったかのように笑い出した娘に困惑する母!とうとう幕を開けた隠田夢の異世界冒険譚!神格スキル『性欲』の真価は如何にッ!?次回『夢ちゃんはレイダーパイロットぉぉ~!?』乞うご期待ッ!!**




