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第三話:駆引と取引

 わけも分からぬままに始まる謎の女児との危険な駆け引き! 激戦を予感させる逮捕と屈従のシーソーゲーム!

 闇の世界の住人である鮫島にとって、警察の介入だけは絶対に避けなくてはならないが……アウトローの世界が長い鮫島は、この程度では怯まない!


「おいおい……今自分で白状したじゃねぇか、家捜ししたって。こっちこそ警察にチビのコソドロをひっ捕らえてもらわねぇと……幸い指紋は部屋中に残ってるそうだしな……!」


 不敵に笑い、毅然とした態度で、むしろ警察など望むところだとアピールしていく!


「はぁー!? いたいけな少女と不景気な顔したキモガリ、警察がどっちを信じるかなんて明白だと思うんですけどーっ!?」


 女児も噛みつく! 年齢を盾に、公権力は自分の味方であることをアピール!


「おっと、いたいけな少女ときたか。コソドロじゃなくて迷子だったかな? ならさぞ心細かっただろう! もう安心だよオジサンに任せなさい。ママのお迎えと警察のお迎え、好きな方に電話してやるぞ!」


「ロールプレイおじキモ〜ッ! 身体と想像力が痩せ細ってるぶん自分は常に正義側として評価されるという歪で根拠のない自己愛だけがブクブク肥え太ってるワケ? こわ~っ! 動物図鑑にも載ってない不思議な不思議なソーシャルモンスターじゃん!?」


 両雄睨み合い……!

 正確には成人男性と女子児童なのだが、兎に角睨み合い……!

 互いに歯噛みする硬直状態……!

 二人の間で見えない火花がバチバチと散り……フゥ、と先に緊張を緩めたのは女児であった。


「あーあ、ヤメヤメ。低レベルな口喧嘩に付き合う気は無いの。時間の無駄だよこんなの」


 肩を竦める女児に「テメェから突っ掛かって来たんだろうが」と食いつく鮫島。だが、女児は無視して続ける。


「もういいよ、変な腹の探り合いは無し。お互い警察呼ばれたら困るんでしょ? もうさ、ジャンケンで決めよ。お兄さんが勝ったらアタシは大人しく出て行く。アタシが勝ったらお兄さんはアタシを家に泊める。どっちが勝っても通報は無し! おっけーね?」


 一方的に条件を突きつけ、手首を捻り準備運動らしき動きをする女児を、鮫島が「まてまて」と静止する。


「そもそも此処は俺の家だぞ。なんでそんなワケのワカらねぇ勝負を受けなきゃならないんだ?」


 女児は少しキョトンとした後、ニヤニヤと嘲笑うような笑みを浮かべ、口に手を当て、そしてワザとらしく肩を震わせ嗤うような仕草をする。


「あ〜、いるよねこういう奴。せっかく人が事態を解決するアイデアを提供してるのに……自分が有利じゃないと文句言うオトコ……!」

 

 女児の口からはケラケラという嗤いが、細めた目からは軽蔑の視線が漏れる。

 

「負けたところで、ちょっと家に泊めるだけで失うものなんて無いのに……大の大人が、存外肝はポークビッツだねぇ? その負け犬根性刻印された小さな器で、今までどんだけチャンスを不意にしてきたワケェ?」


 鮫島はその華奢な身体をひん曲げてやりたい衝動を努力して押さえ込み、理性の方を働かせる。


(……シャクに触るが、確かにコイツの言う通りだ。シャクに触るが)


 鮫島的には、『警察の介入』という最悪の事態だけは絶対に避けなくてはならないのだ。それに比べれば、『家出少女に一晩軒を貸す』のなんとマイルドなことか。勿論、鮫島がジャンケンに勝てばこの女児は大人しく出ていく……という条件含め、この約束自体は信用ならない。

 が、鮫島にとって大切なのはそこではなく……『警察への介入まで猶予があるか』ということ。そこに数日の時間的猶予があるならば……引っ越してしまえばいいのだ。後顧の憂いのない新居に!

 例えば、今日この夜を乗り切ったとて、後日この子供が勝手に警察に補導され、追及の中で鮫島とこの家のことを話してしまう可能性もある。となれば、誘拐か何かの疑いで警察が押しかけてくるのは必至。

 つまり、鮫島にとって既に引っ越しは絶対条件! 問題は、背後関係が怪しい鮫島がノーリスクで借りれる部屋を探す……それまでの時間を稼ぐこと! 安全を期すなら裏社会の人間に手配して貰う必要があるが、果たして誰に依頼するのが一番早いか……。


 鮫島が損得勘定の算盤を弾いていると、既にやる気の女児が「アタシ超強いからねー」と手を組んで回転させ、その中を覗き込むような動作をする。


「みーえちゃった! この勝負、お兄さんはチョキ出すよ!」


 女児の発したその言葉で、鮫島の算盤上の……なにか決定的な珠がカチリと音を立てて弾かれた。


(なるほど……。引っ越しは兎も角、受けるべきだな、この勝負……!)


 何故ならば、先ほど弾かれた算盤の珠は、鮫島の明確な勝率向上を示すものであったからだ。



 【次回:勝負師の理論】

お読みいただきありがとうございました。

小説家になろうさんでは初めての投稿になりますので、とりあえずテストも兼ねて本日はこのエピソードまで投稿させていただきます。

次回は明日、予約投稿とさせていただきます。


コメントや評価は、どんなものでも頂けるだけで嬉しいです。

次回も何卒よろしくお願いします。

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