第五話:チェシャ猫の餌食
リッカに対して格付けを完了し、上位者として圧倒的優位をとる鮫島!
次、鮫島が攻め手、リッカが受け手になった時……恐らくは勝負が決する。鮫島の勝利という形で!!
4戦目。
「「アイコでポイポイどっち出すの!」」
リッカ:パー&グー
鮫島:グー&チョキ
「「こっち出すの!!」」
リッカ:グー
鮫島:グー
鮫島、受け手側から危なげなく生還!
5戦目
「「アイコでポイポイどっち出すの!」」
リッカ:グー&パー
鮫島:グー&パー
「「こっち出すの!!」」
リッカ:パー
鮫島:パー
両者同じ手。
これは互いにグーを出す理由がないため、必然アイコになる。
6戦目。
「「アイコでポイポイどっち出すの!」」
リッカ:グー&チョキ
鮫島:チョキ&パー
鮫島また受け手、しかし……。
「「こっち出すの!!」」
リッカ:チョキ
鮫島:チョキ
無事、生還!
7戦目。
「「アイコでポイポイどっち出すの!」」
リッカ:パー&チョキ
鮫島:パー&グー
「「こっち出すの!!」」
リッカ:パー
鮫島:パー
8戦目。
「「アイコでポイポイどっち出すの!」」
リッカ:チョキ&パー
鮫島:グー&パー
「「こっち出すの!!」」
リッカ:パー
鮫島:パー
生還、生還!
鮫島、不利な受け手側から、アイコを挟み生還し続け……その数、6連続!!
が、しかし。当の鮫島はその奇跡的確率に対する喜びよりも、強烈な違和感と焦りに支配されていた。
即ち……。
(おかしい……。何故、俺はずっと受け手側なんだ……!?)
決着のつかない鍔迫り合いが続き、既に8ゲームが経過。そしてその内訳は……リッカ攻め手6回、アイコ手1回、そして鮫島の攻め手……1回!
確かにジャンケンポイポイは普通のジャンケンではない……が、それでもジャンケンの亜種であることに変わりはない。手の組み合わせが増えたところで、受け手、攻め手、アイコ手の確率はそれぞれ1/3ずつの筈なのだ。
(いや、確かに偏ってはいる。偏ってはいるが……同時にまだ偏りの範疇とも言える。気にしすぎか? いやしかし……)
「くっふっふっふっふ」
不快な嗤いが、鮫島の思考に割って入った。
俯き、肩を震わせるリッカの歪んだ口元から発される、思考を掻き乱すノイズ。
「くっふふふ。雑魚島ァ……」
垂れた前髪の奥から覗く、少女の瞳。影落とす幼い顔立ちにポッカリと空いた氷穴のような……幽かに青く、暗い瞳。
「……やっぱりジャンケン、弱いんだぁ?」
(っ!!)
鮫島の神経に、怖気と共に緊急警戒命令が走る! 脳内に響くけたたましい警報!
そう、目の前にいるのは怪物! 寒さで獲物の判断能力を奪い、心身を凍り付かせて捕食するアイス・モンスター! 凍てつく荒野の獰猛なる獣!
(奴は昨日俺の心理を利用しジャンケンの確率を操作した。奴は……確率操作や未来予知が神の御技でなく人の技術だと知っている……! ならば、にわかには信じ難いが、この状況は奴によって作り出されたもの……)
そう、認めなくてはならない。死戦を潜ったのは夢。生還したのは幻覚。どちらも都合のいい幻。即ち……。
(俺がいる、今ここが死線!!)
その瞬間、掴んだと思ったリッカの尻尾の感触が消え去る。
残されたのは、四方を囲む深い霧、未知の帳。そして足元には、ちょうど人一人を飲み込むのにぴったりな大きさの、暗く深い底なしの氷裂!!
鮫島、あわや薄氷を踏み抜きかける……昨晩と同じ、慢心という温みに囚われて!
(仕掛けは分からないが……奴は何らかの方法で、攻め手と受け手の配分を操作している! 昨日に引き続き!)
「ほら、どうしたの雑魚島……いくよ、9回目の勝負……! アイコでポイポイどっち出すの!」
9戦目。
リッカ:パー&チョキ
鮫島:パー&グー
即ち、鮫島受け手7連続!
(暴かねば……奴の影をもう一度踏まねば……! いや、だがその前に! 生き残らなければならない! この第9戦目を!)
勝率操作の謎は未解明。仕掛けもロジックも分からない。分かっていることは一つだけ。
リッカはわざわざヒントを出してまで鮫島を挑発した……つまり、ここで決着を付けるつもりに違いない。
リッカはどう攻めてくるのか?
何故、今挑発したのか?
彼女にはどんな風景が見えているのか?
そして何より、ジャンケンの勝敗を操作しているとして、なぜソレを匂わせるようなことを言ったのか!?
暴くべき事象は数知れず!
だが、時の流れは残酷で!
その結論を出す前に、刹那の幕間は終わりを告げる!!
「「こっち出すのォ!」」
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【次回:負けに不思議の負け無し】
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