第一話:夜の魔物達
初投稿です。
小説は、昔趣味で別サイトで書いていたことがあります。
今回はペンネームも変えて再出発と考えているので、ご指導ご鞭撻の程よろしくお願いします。
新宿。人と金が絡み渦巻く欲望の街。そして、それらを一呑みにする夜の魔物が闊歩する街。この眠らない街の裏の裏。魔物の目を盗んでか、はたまた彼ら自身が魔物なのか……公の光届かぬ暗がりで、怪しげな取引をする男達がいた。
「お疲れサマンサ〜♪ 今日の取り分ヨン♡」
目尻から首筋にかけて大きな傷痕のある、明らかに堅気では無い雰囲気の巨漢が、妙にくねくねとした動きで、ギラギラとしたスーツの懐から封筒を取り出す。
封筒を受け取るのは、20代前半くらいの青年。こっちはこっちで不健康に顔色が悪く、ガリガリの痩せ型。目元はアイシャドウかと思うほどの深いクマに覆われており、「薬物中毒者です」と言われたらナルホドと納得する容姿である。
だが、この若者が巨漢から受け取ったのはドラッグではない。ズシリと重みのある封筒に入っていたのは、札束だ。
若者は不遜にも、巨漢の目の前で封筒から金を取り出し、慣れた手つきでそれを数え始めた。
「……10万多いようですが」
「アラアラアラアラ……ア〜ラアラ! 存外ニブイもんねぇ。決まってるでしょ、いわゆるオ・テ・ア・テ」
巨漢はガマガエルのような顔を歪め、バチコンとウインクする。
「サメちゃん、最近調子イイじゃなぁい? 組の中でも外でも連戦連勝。お陰でケツモチであるアタシのふっかぁい懐も……ちょっぴりポカポカ……暖まったワケ。ダカラァ、これからもドーゾヨロシクって……そういうオカネ……一切他意無し、友好のアカシよぉ」
「気持ちだけ貰っときますよ。後から降って湧いた自分にだけ都合の良いもの……特に善意の表札が付いたものを受け取るのは……ツキを落とす」
サメちゃんと呼ばれた若者……鮫島海斗は、巨漢の胸ポケットに10万をぐいとねじ込んだ。そして「じゃ、今後ともご贔屓に」と言って立ち去ろうとする。
巨漢はブッと煙草を吐き捨て、
「ちょっとー! ホントに要らないのー!?」
と去る背に声をかける。が、鮫島は片手を上げて応答の意を示すと、そのまま闇に溶けるようにして消えてしまった。
巨漢は小さく舌打ちすると、懐から新たな煙草を取り出し、燻らせる。
「わかんないわネェ、玄人って……」
玄人……主な生計をギャンブルで立てるアウトローの総称。賭博罪のある日本では、パチプロなどを除けば当然違法。中には、ヤクザの代打ちを生業とするような危険な玄人もいる。そして鮫島も、その危険な方の玄人であった。
(出世にも女にも……ついでに男にも興味ナシ。オマケにオカネも要らないなんて。若いのに。何が楽しくて生きてんのカシラ……?)
巨漢は、ボンヤリと鮫島のプライベートを想像し……なんのイメージも湧かないので、それについて考えるのをやめた。
【次回:闖入者、女児】
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