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04.〈シエルとエレイン〉

 「僕は、勇者・クロイ! だが、一人の人間として、この〈ユーベル〉と〈エレドリヌ〉を救って見せる! だから、僕に任せてはくれないだろうか!」








 この場にいる全員に言葉を発すると、長老と思われる腰が曲がった男性が、杖を突きながら、ゆっくりとこちらに近づいてきた。








「頼むよ。クロイ様。わしらは、クロイ様に命を預けますぞ」








「感謝する」








 僕とシエルは、皆の願いを背負いながらユーベルの地下へと、足を運ぼうと歩き出した時、後ろからエレインが、『待ってください!』と声を出し、僕たちを引き留めた。




「エレイン?」








 後ろを振り向くと、エレインは、右手を胸に当て、真剣な表情で、僕の見つめていた。黄金の瞳には、迷いや恐怖などの感情が一切なく、ただ覚悟だけが残っているのが目に見えた。












───この先、何があっても揺るがない覚悟が。












「私も連れて行ってください! 母が亡くなったあの日のこと。何故、人々を苦しめているのか。どうして、エレドリヌが幻影都市になってしまったかを、この目で確かめたい!」








「確かめた後はどうするんだい?」








 シエルは僕の前に立ち、エレインに問いかけた。シエルはエレインを連れて行くか判断するためのようにも見えた。








 シエルの魔力がさっき程ではないが、肌に感じる程、表に溢れ流れている。だが、エレインはビクともせず、シエルに目線を合わせるように、両膝を地面につけた。








「確かめた後のことなんか、考えていないですよ。だって、未来のことは未来の話であって、今はこの瞬間しか、時間が残されていない。だから、私は未来のことは考えずに、今を過ごします」








(未来のことは、あとで考える……か)








 エレインの言葉に、ユーベルの住民らは涙を流した。この人たちは、()ではなく、()()に恐怖していた。明日なんて来るのか、その次の日は、自分らに来るのかと。








(いつ、何があっても可笑しくない状況の中だったからな)








 今の言葉で、正気に戻れている人も何人かいる。その様子をシエルは、ため息を吐いた。








「はぁ……。エルフって本当に、頭の悪い種族だよ。今をどうにかした後って、未来が必ず変わるとは思えない。ましてや、人間は過ちを正したとしても、また同じ過ちを繰り返すものさ。君も、今この目で確かめたとしても、未来では何になる? 説得でも、する気なの? 貴族どもは、耳を貸さないよ。金や女。手っ取り早いのは、その身体で、貴族の男どもに奉仕するしかない。まぁ、最終的には、自分自身が壊れるまで、嬲られるけどね」








「説得なんか意味ないことは、承知済みです。それでも!」








「あーはいはい。分かった分かった。そこまで言うなら、やってみなよ。ついてくるもの勝手だけど、クロイの邪魔だけはしないでね」








(僕の、邪魔?)








 シエルの言葉に疑問を抱きながらも、小さい手で僕の手を握り、半強制的に引っ張られ気味に、ユーベルの地下へと向かうことになった。

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