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28.〈カミュ〉

 ルキアと共に、スノーバーグの街中を歩いている途中、蒼い洞窟を見つけた僕は、ルキアに見せようとした瞬間、街の中は誰一人いなくなっていた。




 そして、ルキアの姿もなくなっていたのだ。




「入るしかないのか……」




 このまま突っ立っていても、ルキアたちとは合流できないであろうと思った僕は、蒼い洞窟へ足を踏み入れた。




「中も蒼いのか……」




 洞窟の中も蒼く、神秘的だと言える。辺りを見渡し、先に進めばいいのか迷っていると、突然めまいが襲い掛かってきた。




「な、んだ」




 めまいは次第に強くなり、しばらくすると僕は、意識を飛ばした。







「起きなさい。ねぇ、起きてってば!!」




 取り乱した声で、誰かが僕を起こそうとしてくる。目を瞑っていたい。




「起きろって言ってんだよッ!!」




 背中にガンと蹴られたような強い衝撃を受け、無理矢理体を起こし、目を開くとそこには真っ白な何もない空間と、両腕を前に組み、怒り顔をした紫色の髪をお団子にし、蒼い外套を身に纏った女性? が立っていた。




「ここは?」




「やっと起きた~。一時どうしようかと思った()()()()()()




「じゃねぇ、かよ? ()()()女性じゃないのか?」




 僕は目の前にいる人物にそう問いかけると、頭に拳骨を落とされた。




「痛いな……」




「もっとリアクションとれよ!!」




「そう言われてもな。あまり感情という感情を感じないんだ。昔から」




 頭を擦りながら立ち上がると、目の前にいる人物が頭を抱え始めた。




「あー。うん。そーだよなぁ」




「ところで、ここはどこで、あんたは?」




「敬語を使え敬語を。聞いて驚け! 俺は〈破戒の魔王〉! 名は、カミュ!」




(やはり、あの洞窟は〈破戒の魔王〉が眠っている場所か)




「そして、ここは俺の精神世界だ! 勇者・クロイだな? 貴様だけを此処へ呼んだのは他でもない、俺だ!」




 カミュは、自信満々に自分に指を指すが、僕は何となくわかっていたため、頷くことしかできなかった。




「リアクション薄ッ!」




「だろうなって思っていたからな。それで、僕を呼んだ理由は?」




「淡々と話しを進めようとするなよ……。まぁいい。俺が呼んだ理由はただ一つ、俺と契約し、俺と共にこの世界を支配しろというだけの話だ」




 彼の言葉に驚き、エクスカリバーを構えようとした瞬間、白い地面から黒い手が僕の手足を掴んできた。




「ッツ!!」




「これは死者の手だ。魔王の精神世界に入った者は、魔王に対し、何もできない。そして、魔王に殺されれば、現実世界でも死んだこととなる。それだけは覚えておけよ?」




(魔王の特権というものだろうな)




「あぁ。分かった」




 僕は、エクスカリバーの鞘から手を離すと、クロイては地面に戻っていった。




「それでいい。んで、話の続きなんだがな?」




「僕と契約して、世界を支配するだっけか?」




「そうそう! 理由聞きたいか?」




 彼に頷くと、地面に腰をドンと降ろし、そのまま胡坐をかいた。




「支配したい理由はな、俺に課された戒めを一度破ったおかげでな、この世界を自分のものにしたいって思えるようになったのがきっかけだな」




「破ったのか?」




「スノーバーグを一度、滅ぼしかけた時だな。あの小僧が俺と仮契約をしてくれたおかげで、あの洞窟から出て、自分が今どのくらい力を持っているのかを知るために、スノーバーグを滅ぼしかけたんだが、小娘に封印されてしまってよ~。もう何千年も、この状態だ」




「世界を支配してどうするんだ?」




「世界を支配して、俺がこの世を統べる神となり、新たな世界を創ることだ! 良いだろう!」




 魔王自身が、神となる必要性があるのかと考えながらも、カミュに目線を向けた。




「世界を創ったとしても、何も得ることはないと思うが?」




「あのなぁ~。神となったら俺が一番になって、俺を慕い崇める連中がぞろぞろと出てくるわけよ」




「……自分が一番になりたいという事か」




「そうなるわけだな。そんで、俺を封印した連中や、俺のことを見下してきたクソ共を、見返してやるんだよ」




(一種の復讐というわけか)




 僕は彼の話を聞くことしかできずにいると、カミュはその場に立ち上がり、自分の顔を僕の顔に近づけてきた。




「貴様も、復讐したいんじゃないのか?」




「は?」




「色んな奴らに「嘘」を吐かれて、裏切られてきたんじゃないのか? それなら、俺と契約して、復讐劇を始めないか?」




 カミュは、僕の頬に手を当て、今にでも唇同士が触れ合いそうなくらいまで、顔が近づいてきた。




「僕は、恋人にも裏切られた。この先も何があるか分からない。もしかしたら、ルキアたちに「噓」を吐かれているのかもしれない」




「そうだろ? 絶対そうだ! だがな、俺は貴様を裏切ったり、「嘘」なんて吐かねぇ。だから、俺を選べ。この先、何があっても、俺が味方だ。俺を受け入れろ。クロイ」




 僕は、今までのことを思い出し、悲しみが胸の中に回り始めた。次第に、彼の言うことが本当に聞こえ始め、シエルと同じ色の瞳を捕らえながら、彼を受け入れようとした。






































───馬鹿クロイ!! 自我を持ちたまえ!! 




 突然、後ろからシエルの声が聞こえたのだった。

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