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27.〈蒼き洞窟〉

 〈スノーバーグ〉の女王陛下である、プリムラが経営する宿屋を拠点とし、僕たちはプリムラの過去を聞くこととなり、シエルと出逢った時の話をしようとしたプリムラに、シエルは思い出したくもないという理由で、その話をするのをやめ、シエルは二階へと上がってしまった。




 そして、シエルを一人にするため、僕とルキアは街の中を歩くことになった。プリムラとバーナさんは、宿屋に残り、二人は過去に出逢っているため、今のグローリア帝国の情報を提供と、昔話に花を咲かせている。




「この外套暖かいな……」




「ウルの毛で出来ているからな。もこもこでいいだろう?」




 〈ウル〉は、白くもこもことした毛皮に包まれている魔物であり、目がまん丸くて愛くるしいのが有名だ。人害に影響なく、農業を営んでいる人たちに、良く飼われているのを見る。この毛皮で、衣服を作られることで、こうして暖かく過ごせる。




「あぁ。ずっと着ていたい」




「プリムラ様のおかげだな。それで、クロイはシエル殿について、どこまで知っているんだ?」




 ルキアの突然の問いに戸惑いながらも、何も知らない僕は首を振った。




「シエルの過去は何も知らない。無理に聞き出しても、シエルが嫌な思いをするだけだからな。例え、何者であろうとも、僕は()()()()()()()




「そうか……。クロイは優しいんだな」




「僕が?」




 人間らしい感情は一通りあるつもりだが、ルキアに言われるまで、僕が優しいのか気づきもしなかった。




「クロイは自分で気づいてはいないと思うけど、俺を復讐を遂げ、絶望の淵から救ってくれた。それに、シエル殿に対する想い。優しい人なんだよ。こんなに優しい人間、姉さんしか知らなかった。だが、今、目の前に姉さんと同じ優しい人間がいることに、俺は驚いている。騎士団の中では、そんなやつ見たことがなかったからな。人間の醜い争いの中に、身を潜ませていたせいなのか、最初はクロイ達のことも警戒していた」




 ルキアは、僕たちと初めて出逢った時のことを話し始めた。




「警戒していたのか?」




「あぁ。それこそ、ルモンドが僕の復讐心に気づいてしまって、刺客を送り込んだのではないかとな。だが、シエル殿を見た瞬間、こんな小さい子供を刺客にするほど、やわじゃないのを知っているから、旅の者だと確信することが出来たんだ」




「そうだったのか。しかし、子供を刺客にし、不意を衝くという手段もあったのだろう?」




「おそらくな。まぁ、そもそもバレていなかったから、この状況なのだ。この場にしばらく滞在するつもりではいるのか?」




 ルキアは、歩きながら背伸びをした。僕は彼に頷くと、何やら考え事をし始めた。




「どうした?」




「ん~? いや、クロイと何かしら思い出を作ろうかなってよ」




「僕とか?」




 首を傾げる僕に、彼は笑みを浮かべた。




「そうだ! 初恋相手との思い出を作りたいと思うのは、俺だけか?」




「……僕は、ルキアのことを仲間としか思っていないが? だが、思い出は欲しいな」




 何となく恥ずかしくなった僕は、そっぽを向いた瞬間、足を止めた。




「クロイ?」




「ルキア、あの洞窟見えるか?」




 蒼く光っている洞窟に指を指しながらルキアに言う。




「確かに蒼いな。もしかして、プリムラ様が言っていた……」




「〈破戒の魔王〉が眠っている洞窟かもな」




「行ってみたいか?」




 ルキアの言葉に戸惑う僕。少しだけ、好奇心があるのを見越して言ったのだろう。




「だが……」




「別に、立ち入り禁止になっていないみたいだから、良いんじゃないのか?」




「それはそうと、住民たちがいるこの時間帯に入るのは……!?」




 僕は周りを見渡すと、さっきまでいた住民らの人影が一切なくなっているのに気付いた。




「人がいない!? ルキアッ!」




 横にいたルキアを姿が消え、この場に僕だけとなってしまった。




「今まで、ルキアと一緒に居たよな……?」




 もう一度、辺りを見渡すが、人の気配すら感じられない。




「入るしかなさそうだな」




 街中にある小さな洞窟を不自然と思った方がよさそうだと思った僕は、警戒しながら、洞窟へ足を踏み入れたのであった。

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