表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/34

21.〈バーナ・グローリア〉

 僕とルキアさんは、シエルに言われるがままに、僕達が泊まっていた宿屋に向かった。宿屋に辿り着くと、店主のバーナさんが、僕たちを待っていた。




「お待ちしておりました。シリル君。いや、()()()()




「何故、僕の名前を……」




 僕の名前を知っているのことに対し、戸惑いを隠せずにいると、バーナさんは椅子から立ち上がり、胸に手を置き、頭を下げた。




「ば、バーナさん!?」




「儂……いや、(わたくし)は、『バーナ・グローリア』と申します。改めて名乗りますと、なんだか恥ずかしいですな」




(喋り方といい、『グローリア』って、この国の名前だよな?)




 バーナさんの名前と口調に疑問を抱いていると、バーナさんは少し、苦笑いを浮かべた。




「困らせてしまい、申し訳ございません。順を追って、お話しさせていただきます」




「は、はぁ……?」




 僕たちはバーナさんに促されるまま、席に着き、彼の話を聞くことになった。




「それでは、まず。(わたくし)の名前についてなのですが、お察しの通り、(わたくし)はこの国の王・ルモンドの先祖なのです」




「はぁ!?」




 僕は驚きのあまり、声を上げるとシエルに膝を蹴られた。




「あまり大きな声を、出さないでくれないかい? 外に漏れる。君たちの居場所を、特定されてしまうだろうから、静かにして」




「あ、はい」




 シエルの言葉に、僕は大人しく頷いた。




「驚くことは当たり前でしょう。この〈グローリア帝国〉を創り上げたのも、(わたくし)ですから」




「それでは、先祖であろうお方が……」




「生きている理由としては、とある〈悪魔〉との、契約を果たしたからです。そして、()()を得た(わたくし)の代償は、全ての神経を遮断する。ですので、今の(わたくし)は、体中の神経がない状態であり、味覚や痛みなどの神経も全くありません」




「でも、神経を遮断して楽なんじゃない?」




 シエルはバーナさんにそう問うが、バーナさんは目を瞑り、今までのことを思い出しているかのように、首を振った。




「いえ。決して楽ではありませんよ。味覚がなければ、味もしない。美味しいという概念を失くしてしまったのと同時に、痛みを感じないと、死んでいるのではないかと、思う日々もございました」




「じゃあ、何故。悪魔と契約を果たしたんだい?」




「……それは。分かりません」




 バーナさんはどこか、悲しく、辛そうにそう答えた。




「どういうことだ?」




「悪魔と契約を果たす前の記憶がないのです。ただ覚えているのは、この国を創ったことだけです。元は、小さな国だったのですが、時代につれて、発展していったことに対しては、喜びを感じておりますが、ルモンドのやり方はあまりにも……」




「バーナ殿……」




「ですが、貴方方がここへ来てくださったことに、感謝しております」




 とても深く頭を下げたバーナさんを、僕は必死に止めた。




「やめてくれ。僕たちは役目を果たしただけのことだ。それに、ルキアのために動いただけだ」




「クロイ……」




「そうでしたか。ですが、心の底から感謝しているのです。これから、この国はいい方向に動いていくと思われます。(わたくし)は、もうここに居なくてもよいという事にもなります。ルモンドの件についても、(わたくし)は眼を働かせていましたから。思う存分、旅ができます。それに、クロイ様たちのお手伝いにもなるかと」




「手伝い?」




 僕は首を傾げると、バーナさんの口からある単語が、飛び出してきた。




「はい。───〈魔王〉と〈悪魔〉についてです」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ