表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/34

20.〈仲間〉

「僕たちと、共に旅をしないか? いや。───共に旅を()()()()




 復讐を遂げ、今後の人生に不安を抱いていたルキアさんに、僕は共に旅をして欲しいと、頼んだ。




「クロイ殿……」




「無理にとは言わないが、死ぬくらいなら、僕たちと共に行動をした方が、楽しいだろう? それに、出逢った頃みたいに、また話をしたいんだ。ルキアさん……。どうだろうか?」




 彼に対する想いは、本物だ。「噓」ではない。この短期間だが、彼と共に過ごす日々は、色々と楽しかった。彼の本心と過去を知れて、彼と昔に出逢っていたことも知れた。




(ルキアさんと、もう一度だけ。一緒に居たい)




 心の中で、彼が頷くのを待っていると、ルキアさんは震える両手で、僕の左手を握った。とても冷たく、水のように繊細な触り心地だ。




(怖いんだな。この先のことが)




 僕は、彼の手を握り返し、そのままそっと、抱きしめた。




───あの時と同じように。




 彼が静かに涙を流し、背丈は僕よりもあるが、細い身体を震わせている。落ち着きを取り戻すまで、雨に打たれながらも、このまま待つことにした。








───数分後




 ルキアさんは、何とか落ち着きを取り戻し、僕から身体を離した。




「クロイ殿。すまなかった。寒かっただろう……?」




「平気だ。ルキアさんこそ、もう大丈夫か?」




「俺も大丈夫だ。この埋め合わせはする。それとは別で、お前と一緒に居たい。初恋相手というのもあるが、シエル殿とクロイ殿と一緒に居たせいなのか、誰かと過ごす日々が、こんなにも愛おしいと感じてしまった。それを、改めて実感した。死ぬくらいなら、この命。クロイ殿に捧げたい」




 その場に立ち上がり、騎士らしく片膝を立て、胸に手を当てた。僕は、彼の答えに頷いた。




「命を捧げるというのはなくても良いが、一緒に居れるのであれば、それだけで僕は嬉しい。これから、よろしく頼む。ルキアさん」




「ありがたきお言葉。このルキア・マエロン。()()()()に忠義を誓います」




「クロイ様って。クロイでいいから」




(流石に、恥ずかしい)




「それなら、俺のことは()()()と呼んでくれ。これからよろしくな。()()()




 ルキアさん。いや、ルキアは僕たちと共に旅立つことを、決意してくれた。このことをシエルに伝えなければと思っている矢先、僕の背後から気配を感じ、振り向くと、シエルが立っていた。




「い、いつからいたんだ!?」




 僕はシエルに問いかけると、ため息を吐かれた。




(いや、なんでため息?)




「君たち、本当に警戒心無いね。特にクロイ。流石に、あたしの魔力を感じないと。ちょっぴり、出してたんだけどな~」




 シエルの言う通り、少しだが、魔力を放っているのを確認できた。




 すると。シエルは、魔力を鎮め、僕たちに近づいてきた。




「ルキア君。これからあたし達と来るのであれば、一旦この場所を離れようか。クロイ、あの宿に行くよ。そこで、店主から話を聞こう。〈ユーベル〉で起こったあの出来事に関すること。そして、魔王についてね」




 こうして僕とルキアは、シエルの言われるがままに、僕たちが止まっている宿屋に戻ることとなったのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ