表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/34

15.〈ルキアのもう一つの秘密〉

 ルキアさんは、僕にある秘密を話し始めた。




 夜空に浮かび上がっている、月の光に照らされた……この場所で。




「俺は、同性愛者でもあるんだ」




「同性愛者?」




 僕は、意味を知らないため、首を傾げた。そんな僕を見たルキアさんは、一から意味を教えてくれた。




「あぁ。同性愛者というのは簡単に言うと、男が男を好きになること。そして、その反対も然り。女性が女性を好きになる。恋愛対象としてな」




「そんなこと、あるんだな」




「俺も気づいたときは、驚きを隠せなかった」




「いつからなんだ?」




 僕は、ルキアさんに問いかけると、包み隠さず話し始めた。




「あれは、俺が十歳の頃だな。それこそ、〈モーリス〉に遊びに行った時のこと。姉とはぐれたことがあって、不安になりながらも前を歩いていると、俺と歳の近い子が泣きじゃくっていてな。声をかけると、迷子だって。俺とその子は、手を繋いで姉と、その子の家族を探して歩いたんだ。夕暮れ時に、その子の()()()()()()がやっと見つかって、意外と楽しかった日が終わるんだなと、思いながらその子の手を離した瞬間。その子は俺に、()()()笑顔を向けたんだ。それが、初恋だったな。無口で、()()()()()()()だ」




「……」




(それ、僕じゃないか?)




「ん? どうしたんだ?」




 幼い頃の記憶をたどっていると、ルキアさんに顔を覗き込まれた。僕は咄嗟に、『はぁ?』と声を出してしまった。




「やっぱり、気持ち悪いよな。姉からは「気にしなくてもいい」と受け入れてくれたんだが、他の連中は違った。「同性愛者なんて、はぐれ者」と言う奴もいるし、「同性を好きになるなんて、気持ち悪い」「汚らわしい」と言う奴もいる。お前も……。クロイ殿も、そう思うんだろう?」




「いや。別に何とも思わないが? 恋愛なんて、自由じゃないのか? そもそも、誰がそう決めたんだ? 例え、異性が好きだろうが、同性が好きであろうが、ルキアさんの人生に関係あるのか?」




 僕は、思ったことを口に出すと、ルキアさんは呆然と、僕の顔を見つめた。




「ク、クロイ殿?」




「他の人に何を言われようとも、ルキアさんはルキアさんだ。少なくとも、僕やルキアさんのお姉さんは、そう思う。僕も、散々〈勇者様〉と言われて、比べられてきたが、今はもうそんなことを考えなくて済む。まぁ、故郷に残ってれば、この考え方はしなかっただろうが。僕は僕で、ルキアさんはルキアさんだ。それだけは言っておく」




「……ハハッ。本当に、クロイ殿は真面目だな」




 ルキアさんはそう言うと、涙を流し始めた。僕は咄嗟に、ズボンのポケットに入っていたハンカチを差し出し、それを受け取ったルキアさんは、声を震わせながら『すまない』と言った。




()()()()()()()()()()()()()()()()()。ルキアさんは、何も悪くないのだからな」




 僕は、彼が泣き止むまで、夜空を見上げながら頭を撫で続けた。














───あの時のお礼として。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ