夢の中の散歩
新宿の街を歩いている。
空がない。
いや、見上げた瞬間に青空が出現した。
今は8月のはずだ、それにしては暑くない。
思った瞬間に汗が出てきた。
いつのまにか海に来ていた。
俺は場違いなスーツ姿のまま...
いや、すぐに派手なアロハと短パンに変わった。
ひとりで来ているのか?
パラソルと見知らぬ女が出現した。
彼女と二人で来ているのか?
いまだかつて彼女など出来たことはない。
とすると、この女は何だ?
こっちを見て何か言っているぞ。
え?夢がどうしたって?
君も夢をみているんだって?
どうやら、彼女も夢の中のようだ。
スタイルも悪くないし、美人の部類に入るだろう。
彼女という設定で続けてみよう...
名前がわからない。
夢なのだから何でもいいだろう。
「久美子そろそろ帰ろうか」
「そうね、帰り渋滞するのもいやだしね」
え?車で来たのか?
俺は免許を持っていない。
彼女の車か?
「家まで送ってくれるんでしょ」
俺の車なのか!
一番高そうな車のそばに行き、
ポケットにあった、キーを押した。
ピピッと音がしてロックが外れた。
俺はシートに座って困った...
運転などしたこともない。
これからどうすればいいのかわからない。
新宿に戻っていた。
さっきの彼女が目の前にいる。
「あら?また会ったわね」
「あれからどうしたの?」
彼女が言うには、
アパートまで送り届けた後...
いい感じになったところで...
俺がいなくなったというのだ。
残念な気がした...。
「今日の予定は?」
夢なので軽く聞けた。
「なんにもないわよ、また家に来る?」
彼女のアパートにいた。
彼女は短パンとTシャツ姿だ。
「今度は途中で消えないでね」
海に来ていた。
誰もいない夜の海だった。
ポケットには車のキーもない。
目を瞑って...
彼女のアパートを思い浮かべた。
目を開けた...
やはり夜の海だった。
夢から覚めてしまったのか?
なんとなく頭がぼんやりして来た...。
新宿を歩いていた。
向こうから彼女が来た。
俺とそっくりな男と腕を組んでいる。
すれ違いざま彼女が囁いた。
「これは私の夢なのよ」
気が付くと俺は彼女と腕を組んで、
新宿の街を歩いていた。
振り向くと夜の暗い海に一人で、
ポツンと立っている俺のうしろ姿が見えた。