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チャラ男はチート性能

「マジかよ……」

 俺はこの身体のスペックを完全に甘く見ていた。


「今回は完全に私の負けね。

 ……悔しい、急に満点とか卑怯よ」


 いつもの冷静な千早らしくなく頬をぷぅと膨らませる。

 普段は知的メガネ美人がたまにそういうことすると可愛いね。


 うんうん、頭撫でてあげようか?

 何故かゾクリと背中に感じた視線による殺気で、寒気がしたからやめておいた。


「おいおい……、恭平。

 ついにカンニングを極めたのか!?」

 翔吾が俺に詰め寄って身体を揺らす。

 やめろ!


「極めたらオール満点とか取れるのか?

 誰からカンニングするんだ、神か?

 神なのか?」


 定期テスト基本5教科の上位50名が張り出された中の1番上。

 俺の予想外の名前がある。


 川野恭平 1位 500点。

 100点満点のテスト5教科で500点。

 つまりミスが1問もない。


 俺が張り出しを見に来たら、周りから注目を集めてしまったので何事かと思った。


 それもしばらくしたら落ち着き、各自それぞれの自分の順位をチェックしだし、翔吾や委員長もさらに細かく張り出し順位を見るために人の中に入っていく。


 俺はそれに紛れず呆然と立ち尽くす。


「今回、これが理由で俺たちの勉強会参加しなかったのかぁ〜?」

 親友の春田真幸はるたまさきがそう言って俺の肩をポンっと軽快に叩く。


 普段は真幸とその彼女、彼女の友人と俺という4人で試験勉強をしていたが、今回は俺が都合が悪いと言って参加しなかったのだ。


 その本当の理由は姫乃から無理矢理距離を置くためだ。

 そうでもしないとどこまでも溺れていく自信があった。


 真幸たちのいる前で姫乃への視線を誤魔化せる気がしなかったのだ。


 チャラ男の俺の記憶を思い返してみるとその勉強会でチャラ男の俺が勉強している様子はない。


 記憶の中で勉強している3人の姿……というか姫乃の勉強姿を1番記憶しているから、つまりそういうことなのだろう。


 ちなみに姫乃は上位20位以内の成績で、普段は俺も同じぐらい。


 真幸と夢野はほぼ中間の成績、かなり調子が良くてたまに50位の端っこ。


 今回の4人で集まっての試験勉強会については、俺の代わりというわけではないが、真幸たちと同じクラスの東堂とうどうという陽気な男が参加したらしい。


 姫乃に余計なちょっかいを出してないか、激しく嫉妬してしまったのは俺だけの秘密だ。


 こっそり聞き込みをしたところ、別の学校に中学から仲の良い好きな相手がいるらしく、そんな真似はしないと結論づけた。


 友人の彼女に手を出すようなクズは俺だけだ。


 いや、もしも東堂が振られたらどういう行動を取るかはわからないぞ?

 恋は人を変えてしまうからな、恐ろしい。


 自分のことは棚に上げてそんなことを思ったものだ。


 幸い、姫乃と東堂が特に接触している様子はない。

 どちらかといえば夢野の方に話しかけに行って玉砕しているような感じだ。


 しかしこんなふうに、ふとした瞬間に津波のように姫乃への感情が湧いてしまうのはどうにかならないものか。


 特に夜になどは、姫乃が真幸の腕の中にいるのではないかと想像して絶望した気分になる。


 いやいや、それが正しい立場だからと自分にツッコミを入れるが、そんな真っ当な言葉など俺の心と身体は納得してくれないらしく、眠れない日が多い。


 試験間近だったので、それら複雑な想いを振り切るために、とにかく勉強に思考の全てを捧ぐというチャラ男にあるまじき行動を取ってやった。


 その結果がこれ。


「あははは……」

 俺はひどく乾いた笑みを浮かべるしかできない。


 なんだよ、なんだよ、なんなんだよこいつ!!!


 俺のことだけど満点ってなんだよ!?

 そんなの見たことねぇよ!

 取ったこともなければ、取ったやつすら!!


 俺をねぎらうように肩をポンっと叩き、真幸はそのまま他の人の成績結果を見るために人の中に入っていく。


 転生直後から、激動の1日を送り一時はどうなることかと思ったが予想外に安定した日々を送っていた。


 記憶ではチャラ男のくせに転生前の俺より勉強してやがった。

 以前のチャラ男の俺は学年でも20位以内に入っている。


 へへへ、その違いがブラック企業にハマるかどうかだって?

 ストップ!

 考えるな!


 それはともかく姫乃とはあれから挨拶以外は話していない。

 目線は交錯するけど、そこまでだ。


 近いうちに2人で話せる機会を作って、俺たちの関係に終止符を打たなければならない。


 それをどうしようと考えると、強烈な絶望感のような寒気がしてなかなか思考をまとめられない。


 たとえて言うなら、失恋したみたいな?

 要するにそういうことだろう。

 認めたくねー。


 流石にこれ以上、寝取り浮気の罪を重ねるわけにはいかない。


 そもそも最初からそんなことをするなと声を大にして言いたい。


 反対にもう全部どうなってもいいから、姫乃が欲しいとか思ってしまうことはもっと認めたくねぇえ!


 これも全ては寝取り浮気の禁忌に浮かされた快楽から来る熱病のせいだろう。


 たとえば、そういう浮気者同士の薄っぺらい関係は1つ問題が発生すれば容易く相手を見捨てる。


 あくまで快楽のみの関係なので、多少の情はあっても不快なナニカを我慢してまで、相手のためになにかをすることはない。


 そう、これが愛する相手ならば、人はその命も賭けられるものだ。


 対する俺はどうかといえば……正直に心の中だけでいうが、かなりやばい。


 どれぐらいかといえば、姫乃のためなら別に《《俺の安い命ぐらい》》賭けてもいいだろうと思ってしまうほど……。


 俺は慌てて思考をストップさせた。

 ……危ない危ない。


 まあ、なんだ。

 チャラ男恭平女性耐性200のところから、俺恭平女性耐性0になったようなもの。

 それでラスボス姫乃に対抗しようとするのが間違えている。


「恭平くん、すごいね」


 ぐるぐると思考のドツボにハマっていた俺に、背後からそのラスボス姫乃が声をかけてきた。


 いつの間に背後を取った!?

 久しぶりに感じるその声は俺の脳髄を刺激する。


 動揺する俺を知ってか知らずか、さらに姫乃は畳みかける。

 タイミングを見計らい、俺の耳元に唇を寄せ、人に聞こえないぐらいの声で甘くささやく。


「私以外にあんまり格好いいところ見せたら……ダメ、だよ?」

 俺はそのささやきに背中をゾクリとさせられる。


 おまえは俺をどうしたいんだ。


 こんな人のいるところで、そう叫びそうになった。


 思わず姫乃の方に視線を向けると、意味ありげな様子で妖艶に目を細めながら赤い唇の端を釣りあげた。


 身体中の熱が上がり、脳みそが沸騰するような感覚。

 人がいなければそのまま抱き締めて唇を奪う衝動に抗うことはできなかったことだろう。


 だがそれも気のせいだったと思うほど刹那のこと。


 姫乃はすぐに教室内で見るような当たり障りのない笑みに戻し、俺からくるりと背を向けてその場から離れていった。


 おまえは一体なにしに来たんだ!?

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寝取り浮気の原罪
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