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何でもできるが売りのゲームで筏を組んで海に出た  作者: 赤鯨
【針無し羅針盤】is マイフレンド
18/18

筏の上でキャンプファイヤー

晴れて蛮族巫士(サベージシャーマン)となった新生リュージ君。じゃあまずやることはといえば、そうだねステータスの確認だね!


リュージ

Lv.37 蛮族巫士

HP:350/350

MP:120/120

ATK:77

DEF:63+31

INT:87+12

DEX:111+18

AGI:105+20


スキル

木工Lv.8

盗みLv.4

格闘Lv.6

槍術Lv.8

航海Lv.7

採取Lv.5

星見Lv.1

踊りLv.13

基礎魔法Lv.8

蛮族巫士Lv.1


蛮族巫士は上位職業らしく全能力に補正がかかるけど、特にDEX、AGIには強い補正があるんだな。INTもやや強め。


DEFがちょっと低いのが目立つかな。でもそれだって純粋な魔法使いのリンドーに比べたらだいぶ硬い。ユゥリには負けるけど防具次第でジェーンは抜けそうだ。


INTの方がちょっと高いけどATKもあんまり変わらないから武器次第で物理も魔法もどっちでもいけるね。だけど物理はジェーンに、魔法はリンドーに届かない微妙なライン。


「『踊り』の攻撃アーツはDEX依存なことが多いし、バフをかければアタッカーもやれないことはない感じのステータスだな」


「バッファーとしてはやれることが多くていいんじゃない?AGIもボクと同じくらいあるし、バッファーなのに単独行動もできるのは強みだね。器用貧乏とも言えるけど」


「あっはっは、筏で海に繰り出してる時は独りで何でもしなきゃだからな。器用貧乏ドンと来いだ!それに図らずとも【贄の送り火(サクリファイス)】っていう照明まで手に入れちまった俺のダンスショーはもっと派手になるぞぉ!」


持続時間的に照明として使う時は踊りながら贄を捧げなきゃいけないけど、それすらもパフォーマンスの一環だとすればなんの問題もないね!


それはそうとお礼を言わねば。挨拶、お礼、謝罪は人間の基本だって母ちゃんが言ってた。


「おばちゃん、いや師匠!色々教えてくれてありがとうございました!世界にその名を轟かせる蛮族スターになるから、弟子の活躍を楽しみにしててくれよな!」


「思う存分にやりゃいい。アンタはこんなショボくれた部族のまとめ役のアタシなんかよりよっぽど大物になるだろうさ。……いい贄になりそうなもんが手に入ったらたまには持ってくるんだよ、バカ弟子」


「我らの仲間、リュージの旅立ち!ヨォーーーッ!!」


「「「ホッホゥ!!」」」


師匠から別れの言葉をもらう時にはいつの間にか集落の蛮族たちが集まっていた。いい声してんなぁ!


こいつらと仲良くなるため殴り合って踊り合ったのもつい先日のことなのに懐かしさすら覚える。楽しかったぜ、お前たちとのファイト&ダンスは。


「じゃあな師匠!またな、みんな!」


「あ、いいですねその構図!ちょっとそのまま10分ほど止まってもらっていいですか」


その言葉を聞いた瞬間、即座に俺たちはピシッと体を固め警告を発した。


「おいおまえら、表情含めて動きを止めろ!いいか、動きさえ止めてればユゥリはおとなしい。動けなくされたくなければ動くんじゃねーぞ!」


「ボクたちみたいに口だけ動かすんだ、いいね?」


「ステーイ、ステーイ……グッボーイ、グッボーイ……10分なら軽い軽い。俺は初見で2時間だったぞ」


普段優しい人ほどキレると怖いんだよね。ジェーンが一回やらかしてから、俺たちはユゥリのスケッチチャンスだけは潰さないことを誓ったのだ。


「トンデモ弟子の仲間もトンデモかい。まあワニの口に手を突っ込むマネはしないよ。アンタたち、動きを止めな!」


微動だにせず口だけで蛮族のみんなに指示を出す師匠。ありがとな、本当にいい判断したよ!



そんな感じでユゥリを満足させた後、心ばかりのお礼としてインベントリに入ってたモンスターの肉を蛮族に渡して俺たちは撤収した。


そして今何をしているのかというと━━━


「やっふー!捧げろ捧げろーぅ、踊れ踊れーぃ!」


「うっははは!いいな【贄の送り火】!キャンプファイヤーって感じがするぜ!」


(いかだ)の上で火を囲んで踊るのは楽しいなぁ!ただのちょっと大きめの焚き火なのになんでこんなにも心が踊るんだろ、火って不思議だ。


「火を燃やし続けるのもタダじゃないんだけどさ。まあインベントリの枠を圧迫してる素材のゴミ箱として使うには有用かもね」


「海の上だといつ海棲モンスターが出てくるかわかりませんから。楽しみながら戦いに備えれる一石二鳥のアーツだと思います」


あらやだ女性陣ってば真面目ね。でもそれがいい、みんなバラバラのことを考えているからこそ俺たちの可能性は無限に広がるんだ。


「よっしゃ、即席でリンボーダンスのセットを作ったぜ。やれるか、リュージ?」


焚き火の横に設置された、腰よりやや低めにセット済みのリンボー。そんなのよ、答えはYESに決まってんじゃん!


「ホッ、ホッ、ホッホッホッ!ン〜〜〜リンボーッ!!」


「イエーーーッ!!」


うん楽しい!楽しいけどリンボーはダメだこれ!


「アバターの体だから疲れないし、リンボー特有の身体機能ギリギリを攻めるスリルが薄いな。怖がりさえしなけりゃ誰でもできちゃうぞ、リンドー」


「なんてこった、こんなところでゲームであることが裏目に出るなんて!クソッ、キャンプファイヤーにはリンボーだろうがよ!」


ガッデム!と床を叩いて悔しがるリンドー。その気持ちは痛いほどわかる。この悔しさをバネにしてもっと上に、楽しみの高みを目指そうじゃないか!


男二人で肩を組み、燦然(さんぜん)と煌めく太陽を見上げる。そう、俺たちならどこまでだって行けるさ!


「おーいバカその1とその2、そろそろ次の話しない?」


「おー、いいぜ」


「なになに、どんな面白いことするんだ?」


我ら【針なし羅針盤(コンパス)】メンバーの切り替えの速さはすごいぞ。イジケてちゃ楽しいことに乗り遅れるかもしれないからな!


「単純なことだよ。みんな上位職業になったんだから、ここらでひとつ派手なことでもやってみない?」


「よしきた、ファーファンの真ん中でダンスライブだな」


「うん却下。背骨じゃなくて脳で考えてから声帯を動かして?」


どうやら俺の提案には不満がある様子。なんということだ、俺の中では完璧で究極のアイデアだったのに。


むむむ、と考えていたらやれやれと首を振りながらリンドーが俺の肩に手を置いた。


「おいおいリュージ、ジェーンが怒るのも無理はないぜ。……ここからだとファーファンより次の街の方が近い、だろ?」


「なるほどな!さすがはリンドー、俺の親友!」


「なるほどでもさすがでもないんだよ!移動するのが面倒くさいって話じゃなーい!!」


俺とリンドーの二人がかりでもダメとは。なんて理想の高い女なんだ、おまえは俺の予想をいつも超えてくれるぜジェーン。


バン!と筏の床を叩いたジェーンは俺たちを睨みつけた。そしてその横でユゥリがニコニコ笑ってるのがとても微笑ましい。俺が微笑んだらいよいよジェーンがブチギレそうだからやんないけど。


「いい!?リンドーのハンググライダーもリュージの筏も、もっと改良したいなら強いモンスターを狩る必要がどうしても出てくるの!特に筏の帆なんかの布系の素材はモンスターの皮に変えた方が良いって分かったんだから!」


そう、強い布というものが少なくとも現在のレストレムには存在しないんだな。厳密には多少強度のある布はあるにはあるけど、モンスター素材の前では大した差じゃないって感じ。


布を何枚も重ねて厚く縫い上げるよりも適当なモンスターの皮をつなげて大きな一枚にした方が筏の耐久値がグッと上がったんだ。


「だから強いモンスターを倒そうってこと!全員が上位職業になったし、今まで避けてたモンスターとも戦えるようになったはずだよ」


「ジェーンちゃんはみんなのことを考えてくれてるんですよ。ボクが言わないとみんな横道に逸れ続けていくからって」


ユゥリの言葉に腕を組んでフンと鼻を鳴らす我らがツッコミ担当。だけどその態度が照れ隠しなことくらいみーんな分かってるとも!


「別に。この間はボクが手伝ってもらったからね。ちょっと借りを返そうかってだけさ」


「リュージとジェーンが出会った屋敷のリベンジか、アレ面白かったよな。オッサンが寝てるベッド以外全部盗んで空っぽにしちまったのは爽快だったぜ」


「私はそのガラガラになった部屋の中でリュージさんが音を立てずにオジサンの周りをグルグル踊り回ってたのが良かったですね。笑いを堪えるのに必死でした」


うむうむ、やっぱりみんなで一緒に一つのことを成し遂げるというのはいい思い出になるな。あの時は結局盗みらしい盗みはできなかったけど、今回は仲間も増えたことで派手に盗むことができた。


「よーし、リーダー権限で次に【針なし羅針盤】みんなでやることは強いモンスター討伐に決定!んでジェーン、肝心の標的は?」


メンバーの背中を押しつつも先頭で走るのがリーダーの仕事だもんな。難しいこと考えるのを任せる代わりに、やる時は俺が声を出しちゃうよ!


「茶化さずに聞きなよ?ボクたちが仕留める標的は『ケルピー』、その特殊個体だ」


聞き覚えがない名前に首を傾げていると、リンドーが知ってる知ってると説明してくれた。


「ケルピーっつったら湖とか川なんかに棲む、上半身が馬で下半身が魚っていう結構メジャーどころの空想生物だな。アレそんなに強いのか?」


「特殊個体だって言ったでしょ。拠点からはしばらく北側に行ったところにケルピーが群れでいる湖があるらしくてね。その群れのボスが『金の鬣(ゴルドメイン)』って名前付き(ネームド)なんだ」


ほほうネームド!いいねいいね、ネームドと言えば強敵の証だ。思わず心と体が踊り出すぞ!


「唐突にコサックダンスしだしたのは捨て置くとして、ゴルドメインの討伐に異議はある?」


「ないない、さっきやるって宣言したじゃん。俺、自分の言葉には責任持つことを心がけてんだ」


へ、とジェーンには鼻で笑われたけど、その笑い方は嫌みなものじゃなかった。


「言葉だけじゃなくて行動にも責任持ってくれると助かるんだけどね。まあいいや、ゴルドメインを出すための特殊クエストはボクが受注するよ。今日はもう時間が微妙だし、決行は明日でいいかな」


「「「異議なーし!」」」


やっぱりファンタジーゲームをやるからには強い敵との戦いは避けて通れない。いやレストレムだったら結構避けて通れるわ。


それはそれとしてネームド狩り、楽しみだな!

蛮族と友好関係を築くには、蛮族に好意的に接しつつも売られたケンカは全部買って叩きのめす必要があります。

リュージが仲良くなった蛮族は序盤に出てくるだけあって比較的弱いのでそこまで難しい話ではないです。

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[一言] 背骨じゃなくて脳で考えてから声帯を動かして? ジェーンさんは甘いですね……某奇妙な冒険ではないですが世の中には脳で考えた瞬間に口に出る人種がいるので、その前に精査するというワンクッションを…
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