003 新学期
夢
これは夢だ
何時も見る前世の夢
夢の中の俺は、死地と化した森の中を四肢を使って駆け抜けていた。
「くそっ、まんまとハメられた」
誘い込まれた俺達は、気付けば完全にエルフの精霊結界内に捕えられていた。
この俺の鼻を欺く程の偽装には舌を巻くしかない。
一斉に森自体が賦活化し、あらゆる精霊がこちらに対して悪意を剝き出しにして襲い掛かってきやがった。
森を駆ける四肢には草花や弦が纏わり付き、舞い散る木の葉が視界を遮り細かな刃物と化して身を削る。踏みしめるべき大地さえ、感覚を裏切りくぼみと化す、挙句には足元からの石礫だ。
慌てて個体領域結界の範囲を広げ、精霊の直接的な干渉を防ぐが、既にエルフの結界内に捕えられている以上限界がある。
探知系の魔術など当然の如く妨害され発動すら困難だ。
風の精霊が一層木の葉を舞い散らせて視界を塞ぎ、さんざめく精霊達により聴覚も碌に役に立たない。
微かに飛来する矢音を聞き分け反射的に身を交わそうとするが、それは危険だと告げる第六感に従い反対方向へ身を伏せる。
刹那、音による予測と全く別の方向から矢が飛来し、第六感のおかげで辛うじて交わす事に成功する。
安堵する間もなく、第二第三の矢が飛来し次々と同胞に襲い掛かる。
人狼族の種族的特性により通常の武器であれば俺らの身を傷付ける事など不可能だが。
ここまで用意周到なエルフがそんな失策を犯す事などあり得ない。
回避に失敗した同胞が次々と矢に貫かれていく。
「よりにもよって水晶銀の鏃かよ」
俺らの弱点と言えば有名な物は銀の武器だが、銀という金属は魔力を込めても尚一定以上の強度を出す事は困難で、基本武器には不向きな金属だ。
対してエルフの作り出す水晶銀は銀以上の魔力特性と鋼以上の強度を持つ、俺らにとって真に弱点となり得る金属の一つだ。
だが精製に長い時間がかかる水晶銀は防具や剣など永続的に使用可能な武具の素材にするのが当たり前で、基本使い捨てにせざる得ない可能性が高い矢を水晶銀で作成するなんて費用対効果が最悪なはずだ。通常はせいぜいいざという場合に備えた切り札といった扱いだろう。
そんな高価な矢を湯水のように放ち続ける、この敵の執念に背筋が寒くなる思いだ。
逆を言えばそうまでしてこちらを仕留めようと必死なんだろう。
視覚も聴覚も役に立たないと言う絶望的な状況に、即座に撤退を命じる。
本来のエルフの森であるならば半ば現界化した精霊結界を解除する事は不可能だが。
ここは元々は魔族が支配していた事もある土地だ、竜脈源に根を張り領域化する事で結界を維持しているハズ、術者を攻めて竜脈源から離す事が出来ればこの精霊結界は解除出来るだろう。
この窮地を脱し同胞を逃すには俺が直接この結界を張っている術者を叩くしかない。
竜脈の流れなら辿れるはず、この地の竜脈の源となっている個所を目指す。
同胞を救う為、分の悪い賭けだが俺がやるしか無い。
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AMI10年4月 犬上家 犬上亮人
「あー朝か・・・」
毎夜見る前世の夢から目を覚ませばいつもの見慣れた天上だった。
しかし今回のは大ピンチな場面だったなー
エルフの精霊使いの罠にハマったんだなあれ、この後どうだったんだっけなぁ・・
ベッドから抜け出し、着替えながら前世の記憶を思い出そうと頭を捻る。
しかしちびちびねちっこくこちらを追い込む嫌らしい精霊魔法だった、視界を奪い機動力を奪い矢音の偽装までしてのご丁寧な波状攻撃だ。呪力が込められた水晶銀の矢はかすっただけでもこちらに激痛をもたらし命を削ってくる。
俺でなけりゃとっくに致命傷を負ってたわ。同胞も何人か命を落としてたしなぁ・・
恐るべき事実は、先ほどの夢で受けていた襲撃はたった一人のエルフの精霊使いによるものだった事だ。
あれ程の規模の精霊魔法を駆使しながら、狩猟の女神もかくやと言う程の弓の腕前だ。
森でエルフと戦ってはならないと言う戒めの意味が良くわかる。
少し思い出してきたぞ、あの後なんとか感だけを頼りに竜脈を追いエルフの精霊使いの所まで辿り着いたんだよな。
接近する程に増し続ける矢の嵐に何度死にそうになった事か。
接近戦ならこっちのものだと勢い込んで攻め立てたんだが、それすら罠で特大級の攻撃魔法のトラップが待ち受けていたんだった、我ながらよく生き残ったもんだ。痛みに耐える為に狂乱の加護を発動してたおかげもある。
最後は奴の細首を顎にかける直前までは迫れたのだが、一角獣が邪魔に入ってまんまと逃げられたんだった。
前世の俺は、果ての無い争いを続けていた。
狂乱を司る月の女神の眷属たる我等人狼の一族と。
狩猟を司る月の女神の眷属たる月の森のエルフ族。
それは月の聖地を巡る、相反する月の女神を奉ずる者同士の退けぬ争いだった。
まぁそれもあくまで前世の話だ、今の俺にとってはかつての争いもどうでも良いな。
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夢
これは夢ね
何時も見る前世の夢
夢の中の私は、必殺の罠を張って黒狼王を待ち受けていた。
「もう何で当たらないのよっ!?」
長い時間をかけて作り上げた渾身の罠だった。
怨敵の黒狼王を討つ、その為持ち得る精霊石を全てつぎ込み、長年かけて精製した水晶銀の矢をありったけ準備し、修行時から馴染みの精霊達を総動員して作り上げた罠だった。
視界、聴覚、走力、臭覚、人狼族の優れた点を思いつく限りつぶした上で木魂の術を応用して矢の風切り音を錯誤させ意識の死角から射貫く予定の一撃は、何一つ前兆は無かったハズなのに命中寸前に回避された。
理不尽極まりない。
そもそもあの個体領域結界の強度は何なの?精霊を使用した自立型妨害魔術が全く機能していない。上位精霊を召喚すればさすがに突破出来るだろうが、精霊援助の許容量は既に限界だ、このうえ精霊支配を使用するとなると今使用している魔術を解除して組み直す必要がある。
これは魔術演算領域配分を誤ったかも、きっちりリソースを使い切る律儀な性格が仇になってしまった。
奴の配下にはちゃんと矢が当たっているのに、肝心の黒狼王にだけは当たらない。
「もー頭来た!!」
曲射を交え矢を連射、風の精霊を駆使し3方向から同時に着弾するよう調整、激痛の呪を矢に込め、風切り音を無くす為の沈黙を重ね掛けした、さすがにこれは避けられないはず!!
矢が3方向から同時に襲い掛かるが惜しくも直撃にはならない、でも2本が奴の身体を掠めた!!
「やった!これで激痛で動きが鈍くなる・・・はず・・・なのに、何で全然動きが鈍らないのよっ!?」
その後も幾ら攻撃を重ねても致命傷を与える事が出来ず、必中を誇っていた己が弓の技量に疑念を抱く暇もなく徐々に間合いを詰められていく。
「て言うか何で正確にこちらの位置を捉えてるのよっ?」
矢の射角からはこちらの位置が判明しないよう、風の精霊を駆使してわざわざ四方八方から向かわせているのだ。
「はっ!?まさか竜脈の流れを辿っているの?」
これだけの精霊結界を維持するには、継続的な幽界との接続が必須なのだから、こちらが竜脈源に陣を張っている事は予測されてしかるべき。
なんたる失態、ここまで準備を重ねておいて竜脈の流れを偽装する程度の事を忘れていたなんて。
「にしたってこの状況下で地中深くの竜脈の流れを正確に追えるなんてどんな感覚してんのよ・・」
「ちっ」
念の為準備していた最終手段の使用を決意する。
10年単位で魔力を注いだ精霊石を設置、展開中の精霊援助を解除して、新たな魔術の構築に魔術演算領域を全振りする。陣取った竜脈源を利用した設置型の攻撃魔法を準備。
自らは隠形の術で身を隠し、幽体複写体に複合幻術を施して第六感までも欺く囮を作成、まんまと囮にひっかかった黒狼王に上位精霊4体を駆使した四重暴風刃が襲い掛かる。
月の森のエルフたる私が最も得意とする魔術は当然月の精霊を扱うもの。
月の精霊が司る、精神、幻惑、感情、生命力等、幽体に干渉する魔術なんだけど。
しかしこれらは今相手にしている人狼族には効き目が薄い。
なぜなら人狼族が信奉する狂乱の女神もまた月を司る女神の為、同系統の魔術に対する強い加護がある為だ。
その為、月の精霊の次に得意としている風の精霊を操る魔術の中で、最大の威力を誇る魔術を罠として使用していたのだ。
四重暴風刃は精霊支配で使役する風の上位
精霊四体を標的の四方に配し、同時に四つの暴風刃を発動させる事による相乗効果で単発での暴風刃発動時の10倍する威力を発揮すると言われている。
更に通常広範囲に対して威力を発揮する魔術を、効果範囲を限定した空間へ作用させる事で密度と威力を増している。
ただでさえ大きな負荷がかかる強力な魔術行使に更に細かく操作を加えたその過干渉は、私の負担となって反動が襲い掛かってくる。
私の幽体が限界を超えた魔術演算領域の行使で悲鳴を上げている。同調する肉体も危険信号を発して激しい頭痛が襲ってくるが決死の思いを抱き魔術の発動を維持する。
しかしその甲斐あって魔術は完璧に発動し、余すことなくその殺傷力を相手に叩きつけていると手応えを感じる。
「やった!?」
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AMI歴12年4月 砂金神社境内 社務所裏居住区 砂金奏
注:やってません
「もー何なのよアイツ!!」
毎夜見る前世の夢から目を覚ませばいつもの見慣れた天上だった。
夢の内容に憤りを覚えつつ、速やかに起きて朝の支度をはじめる。
機械的に朝のルーティンをこなしながらも、先ほどの夢の続きを思い出してムカムカが収まらないんだけどどうしてくれよう。
勝利を確信した私に対し、血まみれになりながらも衰えを見せない勢いで襲い掛かってくる黒狼王。
渾身の罠でも仕留める事が出来ず、最終的には相棒の一角獣の助けを借りて逃走するしかなかった。
思い出すも腹立たしい、怨敵を倒すため用意していた長年の蓄積が一瞬で全て無に帰した虚しい戦闘だったわ。
前世の私は、果ての無い争いを続けていた。
狩猟を司る月の女神の眷属たる我等月の森のエルフ族と。
狂乱を司る月の女神の眷属たる人狼族。
それは月の聖地を巡る、相反する月の女神を奉ずる者同士の退けぬ争いだった。
幾ら前世の事と思っても未だにもって許しがたい。
私は奴の所業で消せない呪いを受けた、転生したらしい今生においてもそれは私を苛んでいる。
呪い、心の傷、私は未だにに犬上亮人が前世でしでかした事が許せない。
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AMI歴12年4月 秋月家 宮代伊織
4人での賑やかな朝食を終え、支度を整えたら登校の時間だ。
揃って仏間で薪染武父さんに手を合わせ3人で家を出る。
「「「行ってきまーす」」」
家を出てすぐ、栫さん宅の軒先で待っていた少女と合流する。
「おはよう風香ちゃん」
「風香おはよう」
「風香おねーちゃんおはようー」
「3人ともおはようございます」
ニコニコと挨拶をする栫風香ちゃん、何度か話に出てきたけど、栫工務店の一人娘で、辰吉棟梁のお孫さんにあたる。性格はおっとりして心優しい女の子だ。体形はちょっぴりふくよかで(控えめな表現)運動とかは苦手な読書好き。乳姉妹達とは別の意味で貴重な一緒に居て心安らぐ笑顔の可愛い女の子だ。
ちなみに学校1のおっぱいを誇っている。(教師除く)
いや、本人は誇って無いけど。
「私は本当に待ちに待っていた5年生のクラス替えだよ、今度は絶対皆と一緒になりたいよ」
「そうだね、みんな一緒だといいね」
「私は何があっても伊織と一緒」
他はともかく2年前の悲劇を踏まえ、学校側も玲ちゃんと僕を別のクラスにするような事はしないだろう。
「私は何があっても同じクラスになれないんだけどーー!不公平だーー!待遇の改善を要求するー!」
「さすがに学年の違いばかりはゴネてどうなる物でも無いねぇ」
ちなみに歩いている時のフォーメーションは。
羽依は僕の右側で手をつないでいて、風香ちゃんは羽依の後ろを歩き。
僕はリュックを後ろでは無く前に抱える形で、玲ちゃんは後ろから僕に抱き着いた状態で歩いている。
くっついて歩くなんて、はた目には足をもつれさせて転びそうな危なっかしい事をしているように見えると思うけど。
僕と玲ちゃんは阿吽の呼吸で平然と普通のスピードで歩いているのだ。
なお、この体制をし辛いという理由で玲ちゃんは決してロングスカートを穿かない。
御覧の通り我が乳姉は四六時中状況が許す限り僕にひっついてます。
曰く僕と一緒でないと「落ち着かない」との事。
先ほども言ったけど春先だともう玲ちゃんの体温で暑いんだよね。
席が離れるくらいなら許容出来るようなんだけど、別のクラスとなる事は許容出来ないらしく、そのせいで2年前の悲劇が起こってしまったんだけど、その話は長くなるのでここでは一旦割愛します。
あ、トイレにはさすがに付いて来ないのでご安心を。
「皆さん、おはようございます。」
雑談しながら登校していると、後ろから声をかけられる。
振り返るとそこには砂金神社の神主さんの長女、砂金奏ちゃん。
「あ、委員長おはよー」僕
「奏さんおはよう」玲
「砂金さんおはようございます」風香
「奏おねーちゃんおはおはー」羽依
僕の呼び方は砂金さんと呼んだり奏ちゃんと呼んだりブレブレなんだけど、3,4年生の時のクラスメイトで、クラス委員長だったのもあってつい委員長と呼んでしまった。よく考えたら今日から新学期なんだから、委員長呼びはおかしかったな。
砂金神社では節句の折に宮代流の奉納舞いを捧げたりと縁が深いので、奏ちゃんも昔からよく知る幼馴染です。
砂金神社では弓道場も開かれており、奏ちゃんも幼少から弓道を嗜んでいる。神事の一環で山に矢を射る儀式をする事もあり、幼いながらも凛としたその姿は見惚れる程様になっていたね。
そのまま奏ちゃんも合流して一緒に登校。
話題はやっぱり今日のクラス替えに関しての事が多い。
誰それが一緒だと良いなとか、誰それとは今年こそ別のクラスになって欲しいとか。
他愛無い会話を続けている中、奏ちゃんが羽依に話しかける。
「そう言えば羽依ちゃんは一君と同じクラスだったのよね?」
「うん、少し思い込みが激しい所があるけど、基本真面目で良い奴だから今年も同じクラスだったら良いですねー」
「ははは、一君はちゃんと真面目に道場には通い続けているの?」
「私にとっては貴重な組手の相手として重宝させてもらっていますよーまぁ未だに私にすら勝てませんけどねー」
「それはさすがに通い始めてまだ2年なんだから、長い目で見てあげてよ」
今話題になっているのは奏ちゃんの従弟の十一君だ。
漢字で書くとちょっと冗談のような個性的な名前で、どんな公式書類でも三角でフルネームが書き終えると言うのはある意味羨ましいと思わないでも無い(フリガナの方が長い)。僕はね、伊織の織の字の画数が多すぎだと常々思っているんですよ。
とは言え、行く先々で真面目にフルネームを書いているのに「ふざけないで真面目に書いて!」と理不尽に怒られる一君の悲劇を思うと隣の芝なんだろうけど。
そんな理不尽に曝されながらもヘンにスレた所も無い、真面目な良い子なんですよ。
まぁ、ただ一点だけちょっと困った所と言うか悪癖と言うか、扱いが面倒になる場面があって。
「よう!お前ら何の話してるんだ?」
と、また一人後ろから話しかけて来たのがタイムリーな事にその一君の問題点の原因だ。
振り返った先にいるのは犬上亮人君、やはり3年生からのクラスメイトだ。
僕とは正反対のタイプである、つまり大柄でワイルドな顔立ちのとても男らしい男の子だ。
「お早う亮人くん」
「おはよう犬神君」
「犬神さんおはようございます」
「亮人ちんだおっはー」
「・・・・・」
「んだよ奏、ちゃんと挨拶位しろよ、又お得意のツンデレか?」
「誰がツンデレよっ!!アンタに対して私が一体いつデレたって言うのよ!何時何分何十秒地球が何回回った日よっ!?大体アンタのは挨拶ですら無いじゃない!!!」
「おっ、おう朝から元気だな」
「誰が元気よっ!こちとら朝からアンタのせいで最悪な気分だったんだから!!責任取って存在ごと消え去って!」
「ははーん、また俺の夢見ちゃったかー?俺も今朝お前の夢で目を覚ましたぜ、やっぱり息ピッタリだな俺達!」
うーん、一気に賑やかになっちゃったなぁ。別に悪くは無いんだけどね、いつもの光景だし。
ケンカする程仲が良いなんてうっかりこぼそうものなら真顔の奏ちゃんにガン詰めされてしまう。
奏ちゃんと亮人くんは幼馴染らしく、基本亮人くんがちょっかいをかけて奏ちゃんがあしらったり切れ散らかしたりする仲だ。
もし今年も同じクラスになるとしたらいささか賑やかに過ぎるかなー(フラグ)
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AMI歴11年4月
アメリア合衆国 NSB(連邦捜査局国家公安部) 内
対新人類作戦室 ミハエル・カースティン
サンチュリ-1が撮影したアンゴルモアの映像を見て衝撃を受けた私に室長が話を続ける。
「ムーンインパクトから11年経った今でも、アンゴルモアには不明な点が多すぎる、スペクトル解析で判明したのはありきたりな成分のみ、謎の電磁パルス、不自然に大きすぎるコマ、落下したはずの隕石すら煙のように消え去る始末だ、なんとも笑えない冗談のような状況だ・・・すまない今更な話だったな」
「いえ、お気持ちは痛いほど」
「話を戻そう、先ほども話したがムーンインパクト時、地上へ堕ちた数多の隕石の内、20mを超える特に巨大な7つの月の欠片達だが、その被害は落下物の予想質量から想定される被害を遥かに下回っていた。更に落下点をいくら調べても落下したはずの隕石を発見する事は出来なかった。先ほどの写真に写っていた謎の影・・・それらが7つの月の欠片の正体だったのではないかと考えている。」
「さすがにそれは発想が飛躍しすぎではありませんか?11年前に遥か外宇宙から彗星に乗ってやって来た七体のドラゴンが人知れず地球に降り立っていたと?」
あまりの話に思わず声が大きくなってしまった私に対して頷く室長。
「我々の追いかけている新人類・・・『DMC(夢見る月の子供達)』は、例外なくムーンインパクト以降に誕生した子供だ。ムーンインパクトで地上に降り注いだ月の欠片達に紛れ、アンゴルモア由来の得体の知れない何かが地球に降り立ち、新世代の人類に影響を与えていると、そう考えるのが合理的な判断だろう」
「それは・・・そうですが」
「そこへ来てこのドラゴンの映像だ、知らぬ間に我々の世界はファンタジーに浸食されていたと言う訳だ」
「彼らの言を信じるならば、異世界からの転生なのでしょう?」
「フン、これまで子供たちの妄言と切り捨てて来た結果、後手に回ったUSAはかつてない侵略の脅威にさらされているかも知れんのだ。人類を超えた異能を持つ『夢見る月の子供達』、一人一人の力は小さくとも、年々増え続ける彼らがある日突然団結して人類に牙を向く、そんな日が絶対来ないとなぜ楽観出来るかね。」
「話を聞く限りでは、彼らも様々な種族、国家、それぞれ信仰や所属するコミュニティがあり、決して一枚岩では無さそうですがね。」
「それでもだ、何者かが意図をもって彼らを送り込んで来ている可能性は高い。」
「ドラゴンの話が事実だったとして、そんな巨大彗星を地球まで送り込めるような力の持ち主を相手に、我々が抗う術なんてあるんですかね?」
「ふう、それはわからん・・・が、だからこそ我々は何よりより詳細な情報を集めなければならん」
「そうですね・・・そう言えば室長に一つご報告したい件が」
「何だね?」
「詳細は後程レポートを上げますが、同盟国たる日本でも1人DMCを判別出来る能力の持ち主が発見されたとか」
「それが本当なら、是非とも我が国で押さえたい人材だな」
「そうですね、室長はご存じですか?日本ではDMCを転生モンスターと呼称しているそうですよ」
「ふっ、いささか即物的で情緒に欠ける名称だが、シンプルに本質を現しているとも言えるか」
「子供達の間では『ゼンモン』と呼ばれているそうです」
「『ゼンモン』?」
「ええ、前世モンスターと言う意味らしいです」
対照的な新キャラ二人登場です。
奏ちゃんは前世の記憶と幼馴染の亮人が結び付くまでは普通に亮人と仲良くしてました。
奏ちゃんの能力は話作りの上で色々と便利なキャラで、亮人は話を動かしやすくて助かるキャラクターですね。
この話から唐突な前世話が所々に挿入されるようになります。やっぱりコレ唐突かなぁ?
前世の記憶を夢で見る展開は自分的には昔の少女漫画「ぼくの地球を守って」からのネタです。
最近はゲームの十三機兵防衛圏で非常に効果的に使われてましたが。あ、この作品は直近で言うと十三機兵防衛圏の影響を多大に受けてると思います。まぁ十三機兵防衛自体、過去のSFオタク作品の総合デパートって風情なので、それぞれのネタに又元ネタは存在するのですが。
ここまで当作品をお読みいただきありがとうございます!
この作品を読んで少しでも
『楽しい』『続きが気になる』『この伏線ちゃんと回収されるの?』
などと思って頂けたのでしたら、感想やブックマークをお何卒よろしくお願い致します。
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