002 玲と伊織
AMI歴11年4月
アメリア合衆国 NSB(連邦捜査局国家公安部) 内
対新人類作戦室 ミハエル・カースティン
「急に呼び出してすまなかったな、さっそくで悪いが、先ずはこれを見て貰いたい」
室長の呼び出しを受け出頭すると、封筒に入った複数の大判写真を渡された。
「これは・・ムーンインパクト前のアンゴルモアの写真ですか?」
「探査機サンチュリ-1を知っているかね」
「確かムーンインパクトの直前に、アンゴルモアを調査する為に打ち上げられた探査機ですね、ロストしたと聞いておりましたが」
「ムーンインパクト時に月の欠片が送受信用のアンテナを直撃、軌道もずれたおかげで地上からは完全に見失ったが、12年の歳月を経て衛星軌道上のランダムビリヤードの結果、的玉は見事重力の井戸にポケットイン、度重なる衝突によるダメージと想定以上の入射角により大半は燃え尽きたが、肝心のデータ領域は何とか守られていた、それがその写真と言う訳だ」
「なるほど、12年ぶりの帰還と言う訳ですか、しかし・・・アンゴルモアの写真解析が我々の業務と・・」
「見て貰いたいのは、最後の1枚だ」
「これは・・・・」
「ムーンインパクトの直前、月の影に入ったおかげで一時的に組成物の蒸発が抑えられ、奇跡的に内部の氷がはっきりと写っているだろう・・・その氷の中の影、君には何に見えるかね?」
そこに写るCGとしか思えない非現実的な映像に、足元が揺らぐような衝撃を受けた。
「ドラゴン?」
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AMI歴12年4月 宮代流道場 宮代伊織
道場に入って神棚と祖父である総師範に挨拶をする。
ついでに例の男子達の事も報告しておく。
「ふむ、武骸流を名乗ってたのだね?藤堂君すまないが武荘君の所に事情を連絡しておいてくれるかね」
「はい」
どうやら師範代の藤堂さんに先方の道場へ連絡して貰うみたいだ。
「帰りに待ち構えていたらどうするつもりだい?家まで送らせてもいいんだよ」
「出来れば少し凝りて欲しいので、栫さんを頼らせて貰おうかと思ってます」
「わかった辰吉には私から連絡を入れておこう、又今度久保田でも持って挨拶に行くとしよう」
「どうも武蔵のせいもあってうちも変に悪目立ちしているようだな、今後は交流試合も少し考え直した方が良いかも知れないね」
「襲って来る方が悪いのだから、やっつけちゃえば良いと思いますけどやっぱりダメですか?」
と、物騒な事を聞く玲ちゃん。
「ははは、玲君が手を合わせたくなる程の相手だったら止めはしないよ」
「でもね、こういう道を歩む上で力を見せびらかしていたら、ああいった手合いは増える一方だよ、それを一々相手にしたいかい?」
「それは嫌です・・」
「そう言った意味でも、先日の交流試合は少しやりすぎだったかもだね」
「だって、伊織も宮代流の事も馬鹿にしたから・・」
「玲君が孫を思ってくれる事は嬉しいけどね、強者には強者の振る舞いが必要なんだよ」
そう言って祖父が玲ちゃんの頭をなでていると、玲ちゃんは黙ってコクリと頷いていた。
因みにその交流試合で玲ちゃんが何をしたかと言うと。
打撃のみの寸止めルールだったのだけど、自分からは一切手を出さず。
ひたすら相手の攻撃を回避しつつ、回避の一環としか見えない足裁きで、相手が踏み出そうとする場所に後から動き出して先に足を置いて転ばせるという屈辱的な舐めプを延々としてしまったのだ。
手を出さないから一本にならず、転んだ瞬間仕切り直しの位置まで下がって相手が起きるのを待つと言うドSの羞恥プレイである。
一つ年上の相手は散々悔し涙を流した挙句、最後は試合放棄で決着したんだった・・・鬼や・・
それを見ていた同年代の相手方門下生に、続いて玲ちゃんの相手を望む胆力の持ち主はいなかった。
いや確かにこっちを馬鹿にしたり突っかかるような物言いをしてたけど、あれは玲ちゃんの美しさに舞い上がっちゃったお年頃の男子が思わず暴走して口走っちゃったって感じだったからなぁ・・・そんな気持ちが分かってしまうから、そう悪気は感じ無いんだけどねぇ。
後からその後輩達の惨状を聞いて、先ほどの5人はここまで来たのだろう。
そう考えるとどちらかと言うと非はこちらにあるような気がしないでも無いと思ってしまうのは小心者と言う事だろうか。
いやでもやっぱり年下の女子供を相手に、男5人で徒党を組んで襲いかかるなんて相手の方が悪いな、うん。
報告も終えたので、ようやくいつもの朝の鍛錬を開始。
絞り(肘での匍匐前進)や海老、逆海老などの各種地味な筋トレ。
二人で調息法からの錬気、錬気交換、二人型などを淡々とこなす。
鍛錬のしめは、玲ちゃんと10分間の寸止め組手を行うのがいつもの流れになっているのだけど。
物心ついてから日課となっているこの組手で、一度として玲ちゃんから1本取れた事がありません。
いやもう本当に、どうやったら勝てるのよこの乳姉に?
体形の違い、体重の違い、リーチの違い、基礎的な筋力の違い、単純な速度の違い、反応速度の違いと、まぁ勝てない理由は無数にあるんだけど。
組手をするようになった当初1分に1本以上取られていた頃と比べると、10分に1,2本しか取られないレベルまで成長はしてるのですよ。
絶対勝てないと諦めてしまえばもっと楽になれるんだろうけど、僅かながらでも自分の成長は感じられているので諦める事も出来ず、試合運び、気の使い方、技のつなぎ方、緩急の付け方と日々試行錯誤して挑戦し続けているのだけどやっぱり1本取れません。
当面の目標は10分間1本取られないで引き分ける事だね・・・がんばろう・・
そんなこんなで今日の朝の鍛錬も終了です。
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朝の鍛錬を終え道場を後にして帰路に付く、ひとまず殊更ゆっくり歩いて帰るふりをしながら様子を探る。
「後ろいるね」
玲ちゃんは後ろも振り返らずに、追跡者の気配を察知している。
やっぱり諦めてくれて無いかー。
「後ろは2人かな、残りは前方で待ち構えてて挟み撃ちにする気だろうね」
「あの200m程先の角に3人待ち構えてる、直前で飛び出して道を塞ぐつもりなんじゃないかな」
うーん、後ろの追跡者の気配はかろうじて捉えられるけど、前方の気配はさっぱりわからない。
遥か先の角に隠れている人の気配さえ察知してしまう。
今更驚きもしないけど、玲ちゃんとはそういう存在だ。
待ち構えている角の手前は横道が無くなる長めの区画だ、区画の半ばで前後を塞げば逃げ場は無く、容易に挟み撃ちが可能となるだろう。
しかし河原ならまだしも、こんな住宅街で襲ってくるとか人に見られて通報されるリスクとか考えないのだろうか?道着さえ着てればどこでも稽古だと言い逃れが出来るとでも思っているのだろうか?謎が多い・・・怒り心頭に達して判断力が低下して何も考えられていないだけの気もする。
「じゃぁ飛び出してくる直前のタイミングで全力ダッシュ、後はちぎらない程度に目的地まで引っ張ろうか」
「はーい」
まぁ相手は隠れている事がバレてるなんて思いもしないで油断してるだろう。
裕福に見える庭付き一戸建てばかりが軒を連ねるこの一角は、路地裏なども無く差し渡し60mはありそうで、庭先の駐車場含め門戸が全て閉ざされた状態になっている。一方通行で道幅も狭い。
区画のちょうど真ん中くらいまでのんびりと歩き、残り30m位の位置から縮地を使ってダッシュを開
始。
「あっ」
「くそっ」
「なんでバレたっ!?」
瞬く間に男子が隠れていた角に到達、慌てて3人組が飛び出してくるけど反応が遅い、余裕で交わしてそのまま目的地を目指す。
「伊織早すぎる、後ろ全然追いつけてないから、このままじゃちぎっちゃう」
いけないいけない、自分で言ったのについ勢いで全力疾走を続けてしまった。
それにしても反応が鈍すぎやしないかなこのお兄さん達。
予定通りの付かず離れずで走り続け目的地まで到着、振り返って追っ手の到着を待ち受ける。
「はぁはぁ、やっと、観念、はぁはぁ、したか」
「はぁはぁ、もう、はぁはぁ、逃がさねぇぞ、はぁはぁ」
「あなた達走り込みが足りてない」
息も切らさず涼しい顔でまたこの娘が煽りおる。
「先ほども言いましたが、師匠の言いつけもあるのでお相手は出来ません。依頼は道場にして下さい」
「問答無用だ!抵抗しないって言うなら一方的にボコるだけだ!」
「あの、今日この後5年生の始業式なんですよ」
「だったらなんだ?今更命乞いか?」
問答無用と言う割に付き合いの良い人だ。
っていうか命乞いって何、殺す気なの??
「お兄さん達は何年なんです?」
「?今年から中2だ!」
律儀に答えてくれるなぁ、なんか本当は人が良いんじゃ無いかと錯覚してしまう。
「疑問なんですが3つも年下の女子供を大人数で追いかけ回した挙句殴りつけるのは武骸流の名折れにはならないんでしょうか?」
「そんな事はてめぇに言われるまでもねぇよっ!!!」
「ふざけやがって!」
「頭来たぞ!泣きわめいても許さねぇからな!」
うーん、我慢出来ずについ煽るような事を聞いてしまった。
でもやっぱり疑問だったんだけど、言われるまでもないってセリフから察するに自らの行いを客観視する力が皆無な訳では無さそうって事は、この襲撃には事情があるのかな?もっと上の人から言われて仕方なくやってる唯の使いっ走りなのかも。
「何だ何だ朝っぱらから人の庭先でガキ共が物騒な事言って騒ぎやがってあぁっ!?」
と、会話(?)で時間稼ぎをしていると待望の人物がようやく顔を見せてくれました。
「ああっ?なんだてめぇじじぃ!関係ない奴は引っ込んでろ!」
「じじぃがケガしたくなきゃどっか行けや!」
そう、栫工務店の棟梁辰吉おじいちゃんです。
ここは栫さん宅から少し離れた仕事場で、目的地と言うのはここの事でした。
「関係なら大ありだぞ、そこのお嬢ちゃん達は大事な孫娘の友達だ。それにケガするだぁ?ガキ共がいっちょ前に俺を脅してるつもりか!!?」
辰吉おじいちゃんが腕をたくし上げると、年齢に似つかわしくない逞しい上腕二頭筋と異常に発達した前腕筋が握力のえげつなさを物語っていた。
そしてその手に握られているのは愛用の黒光りする大玄翁だ、重さ300匁(≒1.12kg)はあると聞いた事がある。あんな物で頭を殴られようなら普通に死ねるし、腕で受けようなら軽く骨折する事請け合いである。
長年棟梁として荒くれ者もとい若い衆をまとめ上げて来たおじいちゃんの迫力に、既に5人の中学生は押され気味である。
「どうしやした棟梁!?」
「何事ですか棟梁?」
「何ですかこのガキ共は?」
「んだぁてめえら!?栫組にケンカ売る気かぁ!?」
とそこへ追い打ちをかけるように、ぞくぞくと若い衆が手に手に大工道具を携えて出てきて、あっと言う間に5人を囲い込んでしまう。
鋸に蚤、玄翁、大ハンマーなど見るからに凶悪な大工道具の数々。
1人墨壺もってる人がいるのはご愛敬か、墨打ち中だったのかな。
5人の中学生は完全に顔面蒼白である。それでも何とか声を震わせながら文句を言っているけど。
「なっ、何だよお前ら大の大人が子供相手に大人数で、卑怯だぞ」
「恥ずかしく無いのかよ!?」
うん、見事なブーメラン。
「てめぇ、わざとここに逃げ込んだんだな!卑怯だぞ!!」
と、こっちに言いがかり(?)を付けてくるので、無言で木材の影に隠れて見えにくくなっている「のぼり」を指さしてここが何処か教えてあげる。
そののぼりを見て目を丸くする中学生たち。
「子供110番・・・?」
「おう、ここはボランティアで子供110番の家やってんだ!お前らみたいなのに追われた子供が逃げ込んで良い場所だぞ!」
「お前達は武荘の教え子なんだってな?もうあいつには連絡してあるから後で引き取りにくるぞ、それまでこっちでお灸をすえてやるから覚悟しろっ!」
まぁ知らないよねぇ、親切に事情を教えてあげる。
「あのね、武骸流さんの道場も昔ここの栫工務店が建てたそうですよ、当然顔見知りです」
知りようもなかった大人達の繋がりを聞いて、5人は絶望的な顔を深めるのであった。
ちーん
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AMI歴12年4月 秋月家 宮代伊織
「「ただいまー」」
朝から精神的な疲労が続いたけれども、ようやく秋月家に帰ってこれた。
「二人ともおかえりー、少し遅かったわね?早くシャワー浴びちゃいなさい」
朝食を料理中の美沙母さんに出迎えられ、バタバタとお風呂場に向かう。
「ねぇ玲ちゃん・・・」
「ん?」
「今日からもう5年生なんだから、もういい加減シャワーは別々に入った方が良いんじゃないかなぁ」
「なんで急に?別に今まで通りで良いじゃない?」
「ん、もうね僕達も大分大きくなったんだから、もう少し世間の常識に合わせて行った方が良いんじゃないかと思うんだよね」
「伊織は私とお風呂入るの好きだよね?私は一緒が好きよ」
「いや、だから好きとか嫌いとかの話じゃなくてね、大きくなっても男女で一緒にお風呂入るなんて皆に変だって言われるよ」
「私たちが一緒にお風呂入る事と他の人に何の関係があるのよ?」
「いやだからそう言う事じゃなくて、大体美沙お母さんにも1年になった時に別々に入りなさいって言われたじゃん」
「羽依がごねて延期した」
「それって羽依が1年に、僕たちが3年になるまでって話だったじゃん」
「別にその後は何も言ってこないんだから良いのよ時効よ時効、ほらもう時間無くなるから入るわよ」
「あうー」
結局乳姉の言う事には逆らえない僕であった、本気で逆らう気が無いんだろうと言われてもなーんも言い返せない。
そりゃ僕もずーっと一緒に入ってるんだから、その方が良いとは思ってるんだよ。でもねホラ世間の目ってあるじゃない。
地獄のようなシャワータイムを終えて廊下に出ると、起きてきた羽依が笑顔で待ち構えていた。
「伊織ちゃんおはよーっ!」
「おはよう羽依」
二つ年下の羽依は、姉に負けず劣らずの美少女で、金髪翠眼と言う珍しい外観の持ち主だ。(尚フィクションの世界ではありふれている模様)
長身の姉と違い僕より若干小さい程度の年相応の身長で、二つ年下にも関わらず二次性徴が早いらしくお胸のサイズは既に姉を凌駕しつつある、将来が恐ろしい存在である。
人が寝っ転がってTVを見てたりすると、突然プロレスの寝技を仕掛けて来るのだが、お胸が大分育ってきてるのに関わらず家では簡素なスポーツブラだけなのでちょっと困る。己の武器を最大限利用してくる、将来どころか現時点で十分恐ろしい乳妹だった。
これ大丈夫?同級生の他の子はまだ殆どツルペタだよね?クラス中の男子の視線独占してない?お兄ちゃんはちょっと心配だよ。
普段は人のことを伊織ちゃんと呼ぶが、お願い事がある時などだけは「お兄ちゃん」と呼んであざとく甘えてくるのだ、非常に性質が悪いといえよう。
わかっちゃいるのだがお兄ちゃんと呼ばれるとどうしても悪い気はしなくて、つい言う事を聞いてしまうちょろい僕である。
乳姉にさっぱり勝てない僕だが、乳妹にもやっぱり勝てないのであった。
ちなみに玲ちゃんの事は基本「お姉ちゃん」と呼んでいるが、時々「お姫様」と呼んでいる。そんな姫っぽいかな?まぁ外見は姫っぽいかとも思うが自分だって相当だろうに。
玲ちゃんの場合外見は完璧美少女だが、自分の着るものなどには基本無頓着で、ほおっておくと美沙母さんの用意した服をローテーションするだけなのに対し。
羽依はとにかくファッションや小物等、自分のセンスで着飾るのが大好きで、最近は玲ちゃんのコーディネイトもすっかり羽依の役目になっている。
「もーお姉ちゃんはどうしてこの美貌を台無しにするような事が出来るのっ!?」
「その組み合わせはあり得ないからーー!」
「もう少し他人にどう見られるか気にしよう!!」
「うーん?別に他人にどう見られようとどうでも良くない?」
日々こんな感じである。
実際どんな格好をしていても玲ちゃんの美少女っぷりは変わらないと思うのだが。
羽依に言わせるとより美しさが引き立つように着飾るのは美少女の義務だそうだ。
僕?
あ、うん残念ながら僕に自分のファッションをどうこうする自由は無いんだ・・・美沙母さんがね、実母がよくしていたファッションを僕で再現するんだよね・・はははっ・・それで凄く嬉しそうにされたらね、もう逆らう気も起きないんだ。
最近は美沙母さんと羽依で僕のファッション戦争をしているよ。
何を言っても無駄なので、もう抵抗は諦めました。
はぁ、せめてもう少し男らしくなりたい。
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AMI歴12年4月 阿波根達己
俺の目前で、使えない先輩方がブルってる。
あーイライラするわー、これだからムーンインパクト前(BMI)世代の奴等は雑魚過ぎて役に立たねぇ。
「で、俺のお願いは聞いて貰えなかったって訳ですか?」
「ちっ違うんだよ達己くん、あいつら卑怯なマネしやがるから」
「そうなんだよ、あいつらが師範にちくりやがって、仕方なく」
「宮代流の奴等、逃げてばっかりの臆病者で悪知恵ばかりが達者でさぁ俺らハメられたんスよ」
どいつもこいつも言い訳ばかりで鬱陶しい。
「うるせぇんで一遍に囀らねぇで貰えます?言い訳はいいから成果を教えて下さいよ」
「いや、だから結局一度も手合わせは出来なかったから・・」
「ハァーー、だから一方的におちょくられたんだろ?虚勢はいいからありのまま肌で感じた奴等の実力を教えろってんだよ雑魚共、俺みたいな『ゼンモン』持ちだったのかどうか位感じられなかったのか?実力差がありすぎて気付く事さえ出来ませんでしたってのか?」
「その、足が凄く早かったです」
「一瞬で間合いが詰められて、殴られるかと思ったら猫だましをくらって」
「気付いたらもう抜かれて何mも先まで逃げてて」
「振り返って走り出そうとしたら思うように足が動かなくて」
「後ろから掴みかかったのに、まるで見えてるみたいに避けられた」
ふん?幾らコイツ等が雑魚とは言え、さすがに3つ年下の一般人には負けねぇだろう。
AMI世代なのは間違い無いし、やっぱりそいつ等は『ゼンモン』持ちの線が濃厚だな。
何かの種族的技能でも使ったのかもな、地球の魔力の薄さで祖霊憑き系は無理でも身体強化系の種族的技能なら多少の効果が見込める事は俺が実証済みだ、加速系と足が動かなかったってのは対象の動きを阻害する俺と同じ咆哮威嚇系あたりか?
「それで、聞いてた以上に二人とも可愛くって・・」
「マジビビりました、秋月玲は可愛いってよりもうすげー美人て感じで」
「銀色でキラキラしてて綺麗すぎてモデルってか非現実的過ぎて人形みたいだった」
「あの碧い瞳でじっと見つめられたら心臓がマジヤバイっす」
「小5のくせにおっぱいもわりとあったし」
「伊織タンハァハァ」
何かキモイ事言言い出したぞ・・・
「伊織って、宮代流総師範の孫の宮代伊織の事だろ?男だろそいつ??」
「いや、そっちはちっこくて本当にすげー可愛かったっす」
「笑顔がやばかった」
「あんな彼女欲しいっす」
「伊織タンハァハァ」
「はぁ、分かりましたもういいっすよ先輩方、やっぱり俺が直々に確かめるしかねぇって事だな」
「そんな、達己くんが・・」
「別に流派がどうとかはどうでもいいけどな、俺様の手下が舐められっぱなしってのは気に食わねえ、俺の格まで落ちちまう。そいつ等が使える奴等ってならボコった後で手下にしてやってもいいしな、そんなに美少女だってならお楽しみがあってもいいだろ」
折を見て噂の銀髪碧眼の美少女を拝みに行くとするか、気に入ったらそのまま俺様の女にしてやるとしよう。
ククク・・地球の伝説じゃ俺様には生贄が捧げられてしかるべきだよなぁ。
機嫌が良い時の前世の癖で、つい自分の頭の角をいじろうとするが、持ち上げた手が空を切り角が無い事に幾ばくかの寂寥感を抱いた。
「ちっ、もうちっと地球の魔力が豊富ならなぁ・・・」
あっちと同じだけの力が振るえれば、警察や軍隊だって相手じゃねーだろうに、そしたらもっと好き勝手暴れてやれるんだがなぁ。
あーもっと好き勝手暴れてえ。
唐突に登場の対新人類作戦室は、まぁセリフで世界観を説明する要員です。
果たしてこれから本筋に絡んで来る事はあるのでしょうか?
この物語はフィクションです、実在の人物、団体、国家等は一切関係はございません。
阿波根くんはとりあえず顔出しだけです、本格的な出番はもう何話か先になります。
重ねて唐突にスキルやなんだ独り言ちてますね、果たして彼は重度な厨二妄想癖なのか・・?
謎ワード『ゼンモン』ここまでの展開と匂わせでこの言葉の意味を予想出来るのかしらん?
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