孫悟空に学ぶ、効果的レベルアップ方法3選
「ドラゴンボール」といえば、もはや説明など不用の超人気漫画作品。
自分も大好きな作品だし、アニメでは残り数分で見つめ合いが始まったらそのまま終わりなことに何度もガッカリしたし、かといえば「5/8チップ」や「サラスパ」のCMに懐かしみも覚える。
いつか「かめはめ波」がこの手から出ると信じ、あの構えや動作を練習した方も多いのではと思う。
さて、ドラゴンボールは本来「願いを叶えてくれるボールを集める冒険作品」だったはずが、早々に「次々に現れる強敵たちと戦うバトル作品」に転換した気がする。
最終的に、ドラゴンボールは単なる回復アイテムにすらなっていたような……。
そして、なぜか毎回うまいこと(?)、主人公の孫悟空よりも強い敵が現れるため、それらに打ち勝つべく「修行」をするのだが、
大人になった今、よく読んでみるとそれらの修行の中には、現実にも十分通用する「レベルアップ方法」を暗に説いているように感じるものもある。
そこで今回は、数多あるドラゴンボールの修行の中から、三つほどチョイスして取り上げてみたい。
あくまで個人的な見解なので……あしからず。
・その1 亀の甲羅を背負う (負荷)
最初のドラゴンボール集めを終えた悟空が、武術の神様と言われた「亀仙人」のもとに弟子入りした時、すべての修行を重さ20キロの甲羅を背負ってやるように、という指示があった。
最終的には40キロの甲羅を背負って修行したが、この「負荷」は、手っ取り早いレベルアップ方法のひとつだと思う。
そして、重たい亀の甲羅のような「物理的な負荷」に限らず、「与えられた条件下やネガティブな環境下で試行錯誤すること」が、自身の力を普段以上に鍛え上げてくれると感じる。
修行後、甲羅を外し身軽になった悟空たちが天高く大ジャンプをしたが、あのような解放感を自分もこれまで何度も覚えた。
そして解放後、それまでの制限や抑圧のある環境で過ごしたことで、実は心身ともに鍛えられていたんだなと、ふと実感してきた。
余談だが、ランチさんてどこに行ったんだろう?
・その2 カリン塔で超聖水を飲む (慣れ)
これは、 カリン塔という天高い塔を登った先に住む、カリン様という仙人(仙猫?)様に修行をしてもらう時の話だ。
内容は、飲むだけで力が何倍にもなるという「超聖水」なる水を、カリン様から奪うって飲むこと。
ネタバレをしてしまうと超聖水はただの水で、塔を登ったり水を奪うこと自体が修行だった。
その途中、カリン様は悟空の持つドラゴンボールを奪い、下界へ落としてしまう。
頭にきた悟空は急いで地上に降り、ボールを拾うと今度は一気に登って帰ってくるのだが、その悟空にカリン様はこう言う。
「前は登るのに1日近くかかったのに、今は往復で3時間ほどですんだ」と。
自分はこのシーンで、「慣れ」というものの力を感じた。
要は、最初は「そんな無茶な!」と感じることも、慣れてくると意外とできるようになるのだ。
例えば、作曲家として自分はコンペ(プレゼン大会)に曲を提出するが、単にメロだけ考えればいいんじゃなくて、オケも全パート作り仮歌を入れ、ミキシング&マスタリングをして、「売り出せるレベルの音源」を、時には数日で作らないといけない。
初めは本当、無茶苦茶に思えたが……要領を得てくると案外なんとかなるもので、慣れてくるとまず仮歌さんにスケジュール確認し発注日を決め、あとは逆算で作業計画を立てそれをこなしていき、締め切りに間に合わせる。
これができるようになった時、自分は「カリン塔を2回目に登った時の悟空」を思い出した。
余談だが、カリン様が終盤ではただの「回復アイテム職人」になってしまうなんて、この時は思ってもみなかった。
・その3 スーパーサイヤ人常態化 (ベースアップ)
これはかなり後の、「セル」という強敵との戦いに備える時の話。
スーパーサイヤ人というのは「千年に一人現れる(はずなのだが、いつしか悟空たちの子供までもが変身できるようになった)伝説の戦士」で、髪が逆立ち金色のオーラをまとい、強さがとんでもなく上がった状態のこと。
セル戦へ向けて鍛錬を積む中、悟空は「スーパーサイヤ人に変身した状態で常に過ごす」という修行を発案し、それを息子の悟飯と共におこなう。
そうして「ベースの状態が底上げ」されたことで、セルとの戦いでは悟飯が覚醒し、「スーパーサイヤ人2」に進化するのだが……。
自分はこの「スーパーサイヤ人常態化」というアイデアは、レベルアップに最も大事な「ベースアップ」そのものだと感じる。
簡単に言えば、自分の「当たり前」のレベルを上げることだ。
「当たり前」のレベルを少しずつでも上げていけば、必然的に自身の実力が底上げされていく。
そして、先の「負荷」や「慣れ」で引き上げたレベルも、その場限りのものでなく「常態化」することが大事に思う。
余談だが、悟飯がピッコロさんの服を着た時は格好良すぎて震えた。
自分がチョイスした修行は以上の三つだが、きっと皆様にもそれぞれ、共感する修行やエピソードがあることだろう。
ところで、「ドラゴンボール」作者の鳥山明先生を見いだした、初代編集者の鳥嶋和彦氏は、ジャンプの「努力・友情・勝利」というスローガンの中の「努力」が大嫌いで、「努力じゃどうにもならない現実があることくらい、読者の子供たちは知っている」と仰っている。
確かに、ドラゴンボールの修行場面は内容のハードさの割に、描写やページ数は結構あっさりしている……が、その修行の中には時に、「正攻法」のレベルアップ方法を説いているものもある気がして、それがちょっと嬉しくなったので、今回エッセイとして取り上げてみた。
そもそも、鳥山先生自身がデビューまでの間に、「500ページ以上のボツ」を鳥嶋氏に出されるなど、正真正銘の「修行」をおこなっているのだ。
そう考えると、先生が下積み時代や過酷な週刊連載の中で得た経験や上達の秘訣を、作品にもこっそり投影しているのでは?、とも思った。
最後にもう一つ余談だが、アニメ「ドラゴンボールZ」のOP曲である「CHA-LA HEAD-CHA-LA」はサビで1音転調しているが、普通1音転調はkeyが「上がる」ことで盛り上がりを出すのが普通。
が、CHA-LA〜〜の場合はkeyが1音「下がる」。
なのに全く違和感がないどころか、むしろ「上がった」高揚感さえ感じる。脱帽だ。