5月3日
「計画通りね」
計画の協力者であるユキはかすかに笑った。
「とりあえずは」
よし──。
がんばるとしよう。
恭介は、席に着いて本を読んでいる紅音に話しかける。
「あぁ紅音」
「ん?」
紅音のツインポニーが揺れる。
「なぁ、今日も良かったら遊び行かないか?」
「え、ああ、まぁ良いけど……」
「本屋とかどうかな?」
「ちょうど欲しい本あったし」
よし──計画通り。
♪
紅音と二人で本屋を歩く。
恭介は、特に欲しい本が無いので、紅音に着いて行く。
クラスメイトと比べれば、少し幼い容姿をした紅音だが、彼女が好きなのは少女漫画でも恋愛小説でもない。
「あったあった」
本棚から一冊の本を取り出す紅音。
タイトルは『華麗なる殺人者』──人気ミステリーだ。
紅音は大の推理小説好きだった。
エラリークイーンを読んだのをきっかけに、のめりこんでいき、今では彼女の部屋に膨大な推理小説の山が出来ている。
「良かった──売り切れてたらどうしようと思ってた。」
安堵の表情を浮かべる紅音。
「あ、そうだ紅音。図書カードやろうか?」
「え?」
「いっぱい持ってるからさ」
「え──いいの?」
「ああ。それ以外にも欲しいのがあるんだろ? 俺あんまり本買わないからだ。やるよ」
そう言って恭介は財布から数枚の図書カードを差し出した。
「──ありがとう!」
計画は──順調だな。
♪
夜。ユキに報告のメールを送る。
すぐに返信が来る。
──順調みたいね。よし。じゃぁ、そのまま頑張ってねb