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ロープウェイで山頂まで

前回はこの町のコーディネーターである

宝山ケンタに会いに行く途中に彩とはぐれてしまいました。


「おい幽刻寺お前しっかり聞いておけよ!」

「そうすよ!僕らのご先祖様の武勇伝が聞けるのはここだけなんですよ!」

「はい・・てか知っていますから・・」


三人は麓にあるロープウェイ乗り場から、黄色いゴンドラに乗り込んで宝登山の山頂を目指していました。

ゴンドラは三人で乗るのには、あまりにも広すぎました。

こんなに広いのに、後方に三人で固まって外の景色を眺めているのは

何か意味があるのかと幽刻寺は少し疑問に思いました。

そんな最中ゴンドラ内のアナウンスで宝登山についての話が流れていました。


「いい話だろ!俺とこのケンタのご先祖様がこの山を山火事から救ったんだぞ!」

と言いながら春日はケンタの肩に腕をまわして自慢げに話していました。

「流石すよね!カッコいいすよね!幽刻寺さん!」

「は・・はい・・そうですね・・凄いですね!ケンタさんも春日も」

「だろ!」と春日とケンタは二人息をそろえて言いました。

しかし、幽刻寺は「本当に凄いのは二人のご先祖様じゃない?」と心の中で思いました。

「やっぱり春日もケンタさんも神様の眷属なんだ、この地の英雄とオオカミの神様か・・」と、今まで曖昧だった話もはっきりしました。


「やっぱりゴンドラ楽ちんですね、登りは絶対こっちの方が楽ですよね」

 宝登山の登山道に幽刻寺は目を落としながら言いました。

「今回だけっすからね!僕の特権で特別に片道無料にして貰ったすからね!」

「マジかよ!サンキュー!持つべきものは親友だぜ!」

「春日の頼みなら断れないっすよ!」と言いながら耳をピクピクさせました。

「この二人本当に仲が良いな・・」


そんな会話が続いている中、ゴンドラはぐんぐんと登っていきました。


「だいぶ小さく見えますね長瀞町、さっき僕らが通った白い第一の鳥居ってあんなところにあるんですね。この高さになると皆野町にある高原牧場の場所が解りますね!」

「僕も今朝その牧場で仕事していたっすよ!」

「は?お前どんだけ仕事掛け持ちしているんだよ?」

「えっと、朝は高原牧場の動物の餌やりや乳しぼりとヤギの放牧、昼から夜に掛けてこの神社の清掃と事務、登山道の管理、たまに山頂の動物園も手伝いに行ったりっすね」

「え?」幽刻寺と春日は同時に言葉が出ました。

「お前、何時間働いているんだあ!休めよ!」

「そうですよ!働き過ぎですよ!」

「え・・でも僕は好きでやっているっすから。それに五月の中旬にはポピー祭り有るっすから、かなか休めないっすよ!」

「偉いな・・幽刻寺も見習え!観光を命がけで守れ!」

「へ?無茶言わないでくださいよ!」


三人はそんな他愛のない会話に笑いつつゴンドラは僅か五分で頂上に到着しました。


「何するのよ!あんた達!」

彩は驚くほど早く三人に捕まった。彩を中心に三人が逃げないように囲みます。

「そりゃ、お前鐘なんか鳴らしていたらそりゃ見つかるだろ!」

「こんなところに鐘があったら鳴らしたくもなるでしょうが!」

「まあ二人とも落ち着いてくださいっす!」

「誰よ!このワンちゃん。」

「今回のこの観光地を案内してくれるコーディネーターになりまして、名前は宝山ケンタさんです。あと、このニーソックス返します。」と言って幽刻寺は彩にニーソックスを渡しました。

「あっさっき逃げるときに落とした奴だ」

そういって、彩もローファーを脱いでニーソックスを履き始めました。

「何で靴履いているのに靴下が脱げるんだろ?」

幽刻寺は気になっていましたが、面倒なので聞くのを止めておきました。


「それにしても、ここからの景色最高ですね!」

鐘の後ろに広がる街並みと、遠くに見える山々が青々としています。

「目の前に広がる町は皆野町になるっす!左方面に行くと秩父方面になりまして、右方面の山沿いの道を行くと小鹿野で春日の育ちの故郷になりますね。」

「春日は小鹿野出身だったんですね、伝統的な花火祭りがある場所になりますね。」

「あっ!私知ってるよ!あの昼間にやる花火大会でしょ?竹使って空に打ち上げるお祭り!あと、発射台でドカーンって爆発する事とかもあるとか!」

「ああ、つっぱねだな・・思い出しただけでヒヤヒヤするぜ」

「あと、私あれ食べてみたい!大きなとんかつ!たしか小鹿野が発祥でしょ!」

「え?彩さん良く知っていますね!そうです。わらじカツですよね。秩父と見せかけて小鹿野のお店屋さんが発祥なの意外と知りませんよね。」

「ふふん!観光情報誌ルンルン部で見たもん”!美味しそうだなぁって!」

「僕もあれ好きっすよ!一枚はごはんと一緒に食べて、もう一枚はお酒と一緒につまんで!」

「あれ・・もしかしてケンタさん年上?」

「そっすよ?お酒も飲める歳すよ!綺麗な水もあるこの地方は、地酒も多くて日本酒がとにかく美味いっす!」

とケンタは耳をピクピクさせて話しました。

容姿が幼く見えたせいか幽刻寺は春日や彩と変わらない年齢かと思っていたようです。

「でもよくよく考えてみたら、ケンタさんは働いているから当然か」

 そう、幽刻寺は自己完結させている最中、彩に肩を叩かれて話しかけられました。


「ほら見て見て幽刻寺!あの山ピラミットみたいね!」

彩は秩父方面にある段差の付いた山を指さしていました。

「ええ、あれが春日が駅で言っていた武甲山ですよ、ピラミッドに見えますよね。」

「正午になるとなんかデカい音するんだよなぁ」

「そうすよ、ハッパ掛けるんっすよ!」

「ハッパ!なんで?なんで?」

「今でもセメントの採掘が今も行われているからですよ、爆薬使って掘り進めているんですよ」

「でも昔は、もっと綺麗な山だったんすよ・・あの削られている部分も緑に生い茂っていたんすよ。」

その言葉を聞いた春日はケンタの学生帽に手を置きました。

「まあそう気を落とすな、ケンタ。あの山のお陰で助かった人達も大いにいるんだからよ!特に熊谷なんてそうだろ!あそこは大昔に空襲を受けて町が焼野原になったが秩父の豊富な資源もセメント有って戦後直ぐ復興したんだからよ!感謝している人も大勢いたはずだろ?」


「そっすね!・・まだ結構この景色見て話したい事いっぱいあっすけど、三人に見せたい景色はもっと他にあるっすよ!こっちに来てくだいっす!」

と言うとケンタは三人を案内するために先頭を歩いて誘導した。


「いよいよ今回の旅のメインになりますね!」


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