うますぎるまんじゅう
「食べないでください!」
私は馬乗りにされながら、金髪の少女は私にそう言いました。
見た目は中学生くらいの小柄な女の子でした。
目は青色で金髪のショートカット、ブレザーの制服に黒のハイソックス。
そして不思議と耳のように伸ばしたサイドの髪。
歳は恐らく見た目の幼さから14~5才ぐらいの中学生のような容姿でした。
「美味い、うますぎる」
ふと目を閉じた私は妙な体験をしました。
口に入った何かがとても甘く口の中に広がっていくのを感じ、
その時に風が吹いてきて何か語り掛けて来るようだった。
ぶぉぉぉとなんか笛のような音と、
竹林が目の前に広がってくる感じが脳裏に広がって来ました。
そしてふと我に返り一言
「何なんだ今の映像は・・」
私はその後、左手に握られた何かを確認しました。
そこには白くて茶色い文字で何かが書かれていました。
かじった跡がありかろうじて読めました。
「じゅう・・まん・・ごく?」
そういいながら私は中身を確認する。
中身は紫の物体で多分あんこでこしあん
たったそれだけのシンプルなものなのになんなんだろうか?
今の感覚は・・それよりもこの状況だ・・。
自分の目の前には目を丸くした少女は何か浮かない表情でした。
とにかくそれよりも私は腹の部分が苦しかった。
「おっ・・重たい・・降りてくれる?」
腹の上に尻もちをつかれている為腹がとても痛い、しかし、
その言葉に彼女は腹を立てていた。
「へっ?重たいって何?私そんなに太っていませんから!勝手に私のお饅頭ガチャで現れたのに何なのその態度?私は彼方みたいな失礼な神様を降臨するつもりは無かったのにリセマラよリセマラ!お饅頭返して!」
そんなことを言いながら私の頭を叩くのだった。
「リセマラって何ですか?」
「はい?あなたそんなことも解らないの?リセットマラソンよ!強キャラクター 出すために何回も引き直す事よ!だからお饅頭返して!」
彼女は膝たちになり私の手の中にある饅頭を力ずくで取り返そうとすため、
手から離れて地面に落ちた。
そして、そこにカラスが飛んできて食べられてしまったのだった。
「は?!あんたなんてことしてくれたのよ!?これじゃ、もうおしまいじゃない!」
彼女は訳解らないこと言っているため、
イライラする中私は無理やり立ち上がろうとしました。
少し突き飛ばす形になり彼女は少し後ろに下がる形で再び尻もちをつきました。
「いっ、たい!何するのよ!」
彼女も、そういいながら立ち上がります。
思っていたよりも背丈は低く私の胸元ぐらいしかなく小学生並みです。
「背ひっく!」
私がそういうと、少女はみぞおちに拳をぶつけられました。「いたっ」と言いながら
私はうずくまりました。そして、その時にあることに気が付きました。
「なんかついてる」そういって私は股を掴む、そして驚愕しました。
少女もその姿を見て「何やっているの」と驚いた様子でした。
どうやら私は私ではなく僕であったらしい。
「何よ、彼方自分の性別まで転生時忘れてしまったの?」
「転生?何ですかそれは?」
「この世界を救うヒーローを降臨しようとしたの、あのお饅頭で・・・なのに彼方のようななんにも特技が無さそうなのが、神様転生してしまい困っているのよ!もっとこの町の英雄のような・・それこそ駅前ロータリにそびえる直実様のような英雄が!」
彼女の言っていることはサッパリだが、
どうやら僕はこの世界を救うために彼女に呼び出されたらしい・・。
しかし、彼女の言う通りだ・・自分には何も特別な能力は無さそう・・。
けどなぜか彼女のいった言葉には何か言いたかったのか私は
思わずこんな言葉をつぶやいていた。
「ここは熊谷ですか?あの夏には毎年のように最高気温を記録する、あの熊谷?・・ん?あれ?何でこんなこと知っているんだろう?・・」
彼女はその言葉に驚いた様子で顔を上げた。
「何で知っているの?彼方?まだ私熊谷なんて一言も言っていないのに」
「あっ、多分なんか直実って言っていたから多分熊谷次郎直実のことじゃないかな?と思いまして・・もちろん直実のことだけでなくこの町のスイーツやスポーツも何かわかりそうです。」
それを聞いた彼女は神妙な顔つきでこう話します。
「あなたもしかして凄いのかも!?・・そういえば名前は?」
彼女にそう言われて僕はそういえば名前が解らないことに気が付きました。
その時、私はほかにも持っているものがあると気が付きました。
「はがき?ええっと僕宛の手紙なのかな?なら名前があるはず・・幽刻寺?」
「よし!なら今日から幽刻寺君ね!私は彩よ!宮浦彩!よろしくねこのさきたまの地を救済するために舞い降りた天の使いなの!この世界を救うまで帰ってくるなとか言われて!そして、契約者をこの神社でお願いしたら彼方が来たわけ!この土地の救済活動が完了したら彼方を元の世界に返してあげるわ!だからね力を貸してくれる?」
彼女はそういうと手を差し伸べました。
多分この子に協力しないと、僕も元の世界に帰れないのか・・多分選択肢がないんだろう。
先ほどの会話に強い嫌悪感を抱いたが、このままでは前に進まないので協力することにした。
「いいよ手伝ってあげる・・!」
僕はその差し出された手を手に取ると、彼女は「じゃあ行こう!」と手を引いて神社の出口である鳥居のほうに走り出していました・・。
まだ、肌寒い春前の陽日でした。
新米の天使と神様のこの地を救う物語が今始まります・・。