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第三十四話 ラザルとの久しぶりの再会

 アシスヘイム城の王座の間にて、リリーザは王座に座りながらニコニコと笑いながら自らの髪を触っている。

 もうすぐジークの心が晴れやかになる時が来る。そう思っているリリーザはうれしくてたまらないようだ。


 だが、そんなリリーザとは対照的に表情が強張っているクルザからの客人が二人、ラザルと外交官のアランだ。

 彼らはアシスヘイム城でジークを待っている間、眠れぬ夜をもう何日も過ごしていた。


 ラザルは失敗すればどうなるかわからないそう考え、アランは失敗すれば最終手段を実行するしかないそう考えているからだ。


 そんな二人の表情は強張っているが、罰を受けて改心寸前のラザルとは違い、アランには若干の余裕があった。


 その余裕の元はナナに捕まる前のユーフェや宰相だった時のラザルと同じであるクルザ中心思想だ。


 基本的にラザルの人々ですらその思想を持っていた。

 貧しくなった今となっては信じがたいがラザルはクリスタルの加護を受けた地であるから、他国とは違い優れている。

 そう、根拠もなく信じていたのだ。


 だから、上級貴族でしかも役職付きであるアランもまたクルザ中心思想な考えを持っていた。

 しかも上級貴族であるから、ピラミッドの頂点に立っていると考えているのだ。


 具体的には、    

 王

 アラン、宰相、アルベール等

 上級貴族

 下級貴族

 クルザの民

 他国民

 蛮族


 というようなピラミッド構造であるクルザ中心思想を持っている。

 つまりはリリーザや王座の間にいる他の重鎮たちはアランにとっては下から2番目に位置する下民であり、緊張する必要もない相手ということになる。


 そんなアランはまるで王同士の面会のように、豪華な椅子を用意させ、リリーザと対面するように座っている。


「まだジークは来ないのか?」


 アランが口を開く。


「もうしばらく待て」


 無礼なアランに対し、リリーザは至って冷静。笑顔のままそう答える。


 そんなリリーザに対してアランは聞こえるように舌打ちをする。


「チッ! 帝国の奴らは礼儀がなっていない。いっそここで......」


 アランはそこまで言って、続きをいうことを止めた。

『いっそここで、我が魔法によって息の根を止めることだってできるんだぞ』


 イライラしているアランはそう言おうとしたが、さすがに自分の立場は弁えているのか、ハッと気づいたアランは再び舌打ちをして目を伏せる。


 そんな時だ。まるで空気を読むかのように後方の扉が開け放たれた。


 その瞬間リリーザは目をキラキラさせながら、手招きをする。


「客人だぞ!」


 ジークはリリーザのその声に反応するかのように知っている人物をみて、怪訝そうな表情をしている。     


「なぜ、ここに?」


 ジークのその声にびくっとしたラザルは俯き、振り向こうともしない。 

 だが、アランは違う。アランはラザルの襟を握り、立ち上がらせるとジークたちに振り向く。 


「これはジーク様! 私は外交担当のアラン・ウォード。宮中では何度か顔を合わせてはいたのですが、挨拶もせずに申し訳ありません、元聖女の護衛役のあなたに対して」


 アランは『くそったれの平民上りが』そう思いながらも、機嫌を損ねるわけにはいかないので、作り笑いをしながら頭を下げていた。


「お前も下げるんだよ! ラザル!」


 アランは自らが頭を下げているというのに、いつまでもぼーっと突っ立っているラザルにそう言うと、頭を掴み強引にラザルの頭を下げる。


「申し訳ありませんでした。ジーク様」


 ニコッとわざとらしい笑みを浮かべるアランに対して、ジークは鳥肌がたっていた。


 宮廷内でラザルにしょうもない仕事をさせられていた時、アランの仕事もさせられていたからだ。


 今更作り笑いとは何か企てているなとジークは思いながらも、外交的な儀礼は果たす。


「これはラザル殿に、アラン殿。遠路はるばるどうも」


 ジークも頭を下げながらそう言うと、横に立っていたリスティアはむっとした表情のままジークの頭を無理やり上げる。


「頭なんて下げる必要なんてないわ!」


 リスティアは二人を睨みつけ、そういう。


「聖女様の言う通りです。ジーク様。どうか普段通りに」


 そんな発言にジークはぶるっと震えた。

 クルザにいたときは、俺のことをまるで雑巾としか思っていないような態度だったのが、この変わりようだ。

 ジークにも怒りや不満といった感情はアランたちにあった。


 だが、出会って最初に感じた感情は気持ち悪さだ。


「なんだか、気持ちが悪い奴らだ......」


 そうボソッと呟いたジークは矢継ぎ早に話す。


「それで、帝国に何の用だ?」


 さっきとは違った声色。真剣さと怒りが感じられる口調と表情でジークはそう言う。


「その件ですが――」


 アランがそう言おうとした瞬間、リリーザは割って入った。


「長話を人数分の椅子もなく話すわけにはいかないのだ! これは皇帝命令だ!」


 リリーザはさっきまでのアランの様子を観察していてわかったことがあった。

 それはアランは終始緊張していることだ。

 クルザ貴族であるアランがどういう態度でリリーザと対面するかということはリリーザにもわかっていた。

 だが、傲慢さの中に隠れた何かがある。そう察したリリーザは話が長くなると思ったのだ。


 そんなリリーザの発言に誰も反論するわけがなく、ジークもエスティアも、アランも首を縦に振る。


「では続きはテーブルを用意してから!」


 リリーザは横に控えていた従者に頷くと、従者はどこからかテーブルとイスを王座の間に持って来るのだった。

よんでいただきありがとうございます。

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