第三十三話 客人がクルザから来る
北部での魔法陣の回は長ったらしい、ブクマの減りとともにそう思ったのでカットしました。
主人公の魔力をなくしたいがための話なので、簡単に2、3行で書いてもよかったのかも知れません
「どうしたんですか、大元帥。さあ、始めましょう」
ヨセフのその言葉に驚きつつも、時間がないから俺は魔法陣を描くことを進める。
今もこうしている間に、クルザでは何かしら起こっているかもしれない。ナナのことも心配だ。
これは俺のミスでもある。
俺がもう少ししっかりとクルザ貴族の連中のことを知っていたら。
そんなことを思う。
だが、今更何を思っても遅い。今やらなければいけないことは、ただひたすら魔法陣を描くこと。
俺は魔法陣を描くことに集中した。
魔法陣を描き、トラップを設置してから2時間ほど経ったか。
俺たちはようやく1つ目の砦を完成させた。
急いだからか、汗が体中に纏わりついていて気持ちが悪い。
「ようやく一つ目か」
「あといくつあるんだっけ?」
ティアも汗をかいたのか、白い服が若干湿っているような気がする。
「あと、五か所に設置だな。加えて平野にも設置しなければならない」
「大元帥、魔力のほうは大丈夫なんでしょうか?」
「ああ、問題ない」
魔法使いは朝布団がかかっていなかったらわかるように、魔力が減っていたら気づく。
俺は意識を魔力に集中させ、少し魔力が減っていることに気づいた後にそう言うと、ヨセフは傍にいたモココに跨る。
「さあ、次の砦に急ぎましょう。一旦、引き返してから別ルートを通らなければなりませんが、モココなら3時間以内にはつきましょう」
「でも、いいのかヨセフ。もう日も暮れた――」
「急ごうと行ったのはあなたですよ、大元帥。部下である私に遠慮など無用です」
もう何度目かわからない眼鏡くいっを行ったヨセフは、先に旅立つ。
俺はそんなヨセフに感謝しつつ、ティアとヨセフの後を追った。
そうこうして、俺たちは砦5つと平野部に魔法陣とトラップを展開し、徹夜明けで帝都アシスヘイムへと戻った。
途中、北部と帝国が隣接する国境線沿いの平野で、北部の軍勢が待機していたということもあったが、200の魔法陣を展開したら怪しい北部の連中は陣営を後方に下げたようだ。
平野だというのに、北部の連中はそれっきり姿を見せなかったので、俺たちは北部とのいざこざはまだ起きないだろう、そう推測した俺たちは急いで帝都までモココを走らせた。
もちろん、俺の魔力はもうないといってもいい。
意識を俺の中にある魔力に集中させても、前のように天へと続く魔力の炎が見えるようなことはない。
あるのはほんの少し。心臓辺りに拳ほどの大きさの魔力がある感覚だけだ。
初めて味わったその、魔力がなくなるという感覚に、今でも違和感はある。
それはまるで、五体満足な体だったが急に5歳児になったような感じだ。
動けるし、不自由もあまりない。だけど、大人の体を知っていたらその体は不自由だと思うように。
でも、やらなければならない。
なにも魔力量だけが、クルザを救える唯一の手段ではない。
色々と策を講じ、一番いいのを実行すればいいのだ。
つまりは、俺の戦闘力を使わなくてもいい方法を考えればいい。
それはこの先で待っているリリーザとの話し合いが終わってからだ。
まだクルザの現状すら確認していない。やることは山ほどある。
俺は疲れた脳に鞭を打ち、横にいるティアとヨセフを見る。
二人も疲労が溜まっているのか、くまができている。
そんな二人に感謝を心の中でいいつつ、俺は王座へと続く扉を守護している魔法部隊の一員に頷いた。
「開けてくれないか」
「はっ!」
そういって二人の門番は大きな扉を開けると、リリーザが王座に座って待っている姿が見える。
そんなリリーザは笑顔で手招きをしている。
「客人だぞ!」
リリーザの指さす方向を見ると、そこにはクルザの貴族らしい色鮮やかな装飾を施した服を着ている男がいた。
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