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第三十一話 天剣を受け取る

長らく更新できずすみませんでした。いわゆるスランプってやつでした。

 宣言通りに速攻で魔物を片付けた俺は、一人先を行くヨセフの後をティアと一緒についていく。

 どちらかといえば、俺が前を歩いて爺に会いに行くべきなのだろうが、今のヨセフはそっとしておいたほうがいい気がして俺たちは後方を歩いている。


 個人的にはヨセフと打ち解けることができたと思っていたのだが、それは勘違いのようだ。

 ヨセフの魔法嫌いは想像以上だった。

 前を歩いているヨセフの姿を見てもそれは分かってしまう。ヨセフの後ろ姿はまるで魔法など必要ないのですよと言いたげだった。


「はぁーどうしようか......」

「ふふふ」


 思わず出た言葉にティアは手を口に当て笑っていた。


「ティア! 俺は何にも面白いことなんて言ってないぞ!」

「そうね! でも、なんでもできちゃうジークが人一人の心を掴むことができないなんてやっぱりおかしくて」

「なっ! 失礼な!」

「でもジークは昔からそう。自分では気づいていないようだけど!!」


 ティアはそういうと、ウインクをしている。

 さて、何のサインなんだろうか。


「とは言ってもな。苦手なものは苦手なんだ。だから追放されたと理解もしているよ。だがなあ、こればっかりは」


 俺はそういい、ため息をつくとティアは立ち止まり俺の真正面に立つ。


「その理由はね、壁を作ってるからだと思うの。私ならこうやってなんでも話してくれるでしょ。でもほかの人なら?」


 心の底ではわかっている問いかけに対して、俺はティアにむっとしてしまう。


「そんなのわかってる! それが難しいんじゃないか!」

「大丈夫よジーク。ヨセフさんは悪い人じゃないわ。きっと打ち解けられるはず」


 俺の手を握りながらそういうティアにちょっとドキッとしてしまう。

 なぜか俺はティアにこういうスキンシップをされるのに弱いらしい。

 俺はなんだか照れ臭くなり、ティアの手を振りほどく。


「ああ、もう! わかったって! やってみるさ。腹を割って話せばいいんだろ」

「そういうこと! 円滑なコミュニケーションは必須!」


 再びウインクしてくるティアに若干腹をたてながらも、俺はうなずいた。

 実際、ティアの言っていることは間違っていない。もし仮に俺が宮廷内でもっと知り合いがいたらまた違った結果になっていただろう。

 宰相であるラザルは別として。


「だが、どうすればいいんだ?」


 俺のその問いかけにティアはため息をついていた。


「この国には魔力を持たない人がいるって自分で言ってたじゃない。以上!」


 ティアはそういうと、スタスタと歩き始めた。

 たくっ。困ったもんだな。

 俺もティアの後を追った。




 ティアの後を追い、爺のいる滝の裏の洞窟に行くとヨセフはもうついていたようで、出されたお茶をまずそうに飲んでいた。


 そんなヨセフは俺たちに気づくと、立ち上がる。


「大元帥。天剣の用意はできたようで」

「そうか」


 俺はそういうと、さらに奥に進むと爺は青白い光を放つ剣をうっとりした顔で見つめていた。

 相変わらず仕事が早くて助かる。


「例の魔物は倒したぞ」


 すると、爺は振り返り天剣を俺に差し出している。


「相変わらずだな、ジーク」

「そっちこそ。ありえない速さじゃないか」


 俺はふんっと鼻を鳴らしている爺から天剣を受け取ると、爺は口を開いた。


「何もまた自分が犠牲になる必要はないんじゃないか」

「あの時とは状況が違うし、俺の実力だって以前よりある」


 そう、グレアにいたころとは違う。

 あの時より、俺は大分成長したはずだ。


「そりゃ、そうか。あの時とは相手も違えば状況も違う。今回の敵はまだぬるい。いらぬ者を処分するグレアとは違ってな」

「それってどういう意味でしょうか」


 俺の後ろからヨセフの声が聞こえてくると、ヨセフは俺の横まで歩き出す。


「なんじゃ。やっぱり小僧は変わっておらんな」


 そういって爺はため気をついた。


「継承者序列一位のジークがなぜグレアから追い出されたのか。その理由はグレアの脱落者、つまり子供たちを保護したからじゃな」

「おい、勝手に話すな――!」

「なるほど。グレア出身の大元帥がなぜクルザにいたのか。その理由がわかりました」


 ヨセフはそういうと、眼鏡をくいっと上げる。


「前々から疑問だったんですよ。グレア出身の武闘派の大元帥が、なぜ魔法国家のクルザなんかにいるのかって」

「まぁ、言わなかったからな」


 俺は諦めてそういうと、後ろにいたティアはスタスタと俺の真横に来ると口を開く。


「ジークは別に悪い人じゃないでしょ?」

「ええ、それは分かっていました聖女様。ですが、やはり魔法に頼るのは嫌なんですよ。強力なのは知っています。ですが、それを認めては帝国という国の存在意義がなくなってしまう」


 ストレートにそういうヨセフに俺はいつの間にか口を開いていた。


「じゃあ、どうすれば打ち解けられる......」


俺がそういうとヨセフは驚いたように目を見開き、ごほんと咳ばらいをすると再びいつものヨセフになり口を開いた。


「私だって子供じゃない。大元帥のことはとっくの昔に認めていますよ。その地位に相応しいとね」


 再び眼鏡をくいっと上げ、


「それに今回の話で、大元帥、ジーク様が信用に値する素晴らしいお人だということもわかりました。私は魔法は嫌いです。ですが、大元帥のことはもう認めていますよ。だから、そんなに気にしないでください」


 そういうと、ヨセフは足早に外に出て行く。

 俺は案外あっさりと解決してしまったことに、驚きつつもティアの言うとおりだったことに感謝する。

 ちょっと恥ずかしかったが言って正解だったな。

 

「ようやく頑固者同士の会話が終わったか」

「そりゃあんたもだろうが」


 俺がそう突っ込むと、爺はにっこりと笑う。


「さあ、時間はないんだろ? 先を急げ」

「爺さん、ここにずっと住むつもりか?」

「なんだ、そのおなごを捨てて、わしと一緒に暮らしたいのか」


 何を言っているのだろうか、この爺は。心配してあげているのがわからないらしい。

 俺はザンビの爺にわざとらしくため息をつくと、首を大きく横に振った。


「ティアは俺の親友だ。わかってて言ってるだろ」


 俺がそういうと、今度は爺がため息をつく。


「すまんの。こいつの頑固さは岩より硬い。いつか気づく時が来る。その時まで待ってはくれんか。ところで、太もも触らせてはくれないか?」


 そういうと爺はティアの太ももを触ろうと手を伸ばしたので、俺はその手を払いのける。


「まぁ、こういうことじゃ」


 何がだろう。爺さんはたまに意味の分からないことを言うから困る。

 そう思っているとティアは口を開く。


「ザンビさんの助言通り気長に待つことにします」


 そういって深く礼をするティアに対して、爺は満足したのか首を縦に振っている。


「うむ。まぁ、話も終わった。さっさと行け」


 爺はそういってしっしと手を振る。


「久しぶりだというのに、全く変わらないな」


 俺はその態度に再びため息をつきつつも、にっこり笑うザンビの爺さんに軽く手を振った。




読んでいただきありがとうございます! 


そして『お願い』したいことがあります。

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