第三十話 優しい拷問を始める3
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ナナは思いっきりユーフェの尻を鞭で叩いた。
「だから痛いっての!! もう居場所教えたから私を解放してよ!!」
世間知らずなユーフェは痛みで顔を歪めながらそう言うが、もちろんナナの手は止まらない。
パシッ
「痛い!」
パシッ
「......」
その行為が数十回ほど繰り返された頃、ユーフェは無表情でずっと床を見るようになっていた。
(もしかして拷問はこれ以上に痛いものなのかしら。いいえ、そうに違いない。私はそんなことをしていたのかも)
「どう? 痛い?」
ナナは抑揚のない声でそう言うが、内心は『子供に悪いことはしちゃダメ!』と教えているつもりだ。
実際にはナナの方が歳は下なのだが、ユーフェは世間知らずなお嬢様。
どんなことをすれば悪いことかを知らずにで育ってきた。
そんなユーフェはナナの問いかけに顔を上げると、きりっとした目で睨む。
「何を理解するって?」
ユーフェがそう言うと、ナナは嘆息する。
「どうやら時間がかかりそう」
「ナナ様。私どもにお任せください。分からせます」
町人はそう言うと、家の中にあった女性用の服を取り出す。
「こんな高価な服は農作業には必要ない。この服を着せて農業の有難みを」
「はっ! ふざけんな! 中央の高級貴族のこの私が、そんなダサい服なんか着るわけないでしょうが! 死んだほうがマシ!」
中央貴族というところだけには誇りがあるユーフェはそう言ったが、数秒も経たないうちに自らの発言を後悔した。
(どうしよう...... もしかして殺されてしまうんじゃ...... 私って馬鹿!)
「い、いや! これはその、例えよ! 例え! 貴族のプライドってやつ!」
短刀を鞘から抜いたナナを見て、ユーフェは必死にそう言う。
「そうだったの。死にたいと思ったから」
ナナは無表情でそう言うと、町人に出ていくように言う。
すると察した町人は家の外に出ていくと、ナナは町人が持っていた服をテーブルに置くとユーフェの服を脱がしていく。
「ちょっと! 嫌だ! 離せ!」
「私も時間がない。後は隣町の町人たちに任せる」
ナナがそう言うと、ユーフェはまるで幽霊でも見たような表情をしていた。
ユーフェは自分が犯される。そう思ったのだ。
「お願い。それだけは許してください! 何されるか分からないわ! あなたも女でしょ?」
「あなたの考えていることは分かった。だけど、あの人たちはあなたみたいな思考の人間じゃない。安心して。それに私も言っておいてあげる」
ナナはそう言い泣き叫ぶユーフェにオンボロの服を着せると、ユーフェの上半身に縄を巻き付け、強引に家の外に出る。
「農作業と、質素な食事、風呂はもちろん3日に1回。家は豚小屋で外敵から野ざらしのところ。町人より少し質素な暮らしをさせてあげて。あと、性的なことはダメ」
ナナはそう言うと、ユーフェが携えてた杖を勢いよく折った。
「あ...... 終わった......」
ユーフェはその瞬間、頭をガクッと下げた。
もうこれで逃げることは出来ない。こんな辺鄙な場所で子を作り一生を終える。
そう思ったユーフェの心は折れていた。
「じゃあ、私はアルベールを探しに行く」
「お気をつけて」
そんなユーフェをナナは一度たりとも見ずにそう言うと、二人に背を向けた。
1日後。
ユーフェは胴体に縄を巻き付けられ小言を言いながらクワで土を耕している。
その様子はまるで犬。縄の一端を町人が持っていてるこの状況を他人が見れば『犬』そう思うだろう。
「あー! やめよ! やめ! もう疲れたわ! 休憩させて」
「ダメだ!」
町人はそう言うと、地べたに座ろうとしているユーフェを起こす。
「なんでよ! あんた達だって魔道具を使ってるじゃない? なんで私だけ!」
唾を地面にぺっと吐いたユーフェは、心を再起動させることに成功していた。
町人は手を出してこない。短絡的なユーフェはそう考え、町人を睨む。
「楽をすれば大変さが分からないと、ナナ様が言っていたからだ」
「ナナ様? あんな奴、グレアの田舎者じゃない。様をつけるなら私でしょ」
完全に舐めていたユーフェは懲りずに町人を挑発するが、町人はその発言を看過しなかった。
町人は持っていた鞭で尻をペシンと叩く。
「いたっ!」
ユーフェにとっては予想外の行動だったようで、涙を目に浮かべながら尻に手を当てる。
「ナナ様はこの国のために頑張ってくれている。あんたと違ってな。と言うより、こんなくだらない罰で済んで有難いと思え」
そう言うと町人は尻を撫でているユーフェにクワを渡す。
「さあ、続きだ」
「いやよ。誰が農民の言うことなんて聞きますか」
さっき罰を受けたばかりだというのに懲りないユーフェはそう言うと唾を町人の顔に吐く。
「おまえ! いい加減に......」
町人は怒り心頭ででユーフェを睨みながら、かけられた唾を手で拭き取ると、ビンタをしようと手を上げるが寸前のところで止めた。
ナナの言うことを守ろう。そう考えたのだ。
「何よ、その拳? 殴れないの? は! だっさ」
見下した目でそう言うユーフェに町人はただ黙ってクワを押し付けると、町人は黙って背を向ける。
「交代の時間だ。あと、今日の夕食はパン。おかずはなしにする」
背を向けながらそう言う町人をみて、ユーフェは笑顔で手を振る。
(たった1食、おかずなし? そんなの余裕よ、この愚民が。よくよく考えてみれば私がいなくなって数日が経てばラース王だって派兵してくれるはず。簡単ね。馬鹿なことをしたわね)
ユーフェは不敵な笑みのまま最後まで町人たちの言うことを聞かずに、最初の夜を迎えた。
が、ユーフェにさきほどまでの余裕はない。
(薄い木の板だけで仕切られた豚小屋だからか家畜の匂いがする。寝るスペースしかない狭い空間。こんなとこで動物は暮らしているわけ? もっといい所だと思ってた......)
絶望で目の前が灰色に見えたユーフェはそのまま藁に寝そべる。
「かたっ!」
ユーフェは硬い藁の上に寝そべると、次はかけ布団がないことに気づく。
「は! どうやってこんなところで寝るのよ!」
逆切れをしたユーフェは大声でそう言うと、タイミングよく町人がパンをもってユーフェを訪れていた。
「飯だ」
町人はそう言うと、パンをユーフェに手渡す。
「なにこの石材は! パンじゃないじゃないの!」
ユーフェは驚いた表情でそう言うが、もちろんパン。町人は呆れて嘆息すると、ユーフェを無視して踵を返す。
「は!? この私を無視するわけ?」
ユーフェはそう言うと持っていたパンを町人の頭に投げていた。
何の音もせずにパンは町人の頭にぶつかると、町人はユーフェを馬鹿にした表情で振り返っていた。
「この2週間、ずっとこんな食事ばかりなんだよ! 俺たちはさ! お前、そのパン無駄にしたこと明日にはもう後悔してるからな」
町人は楽しそうにそう言うと、スキップ気味で豚小屋を出ていく。
(やった! 言ってやったぜ! あの糞女に! 最高だ!)
そんな内情を知らないユーフェも出て行った町人の背を見下した目で見ていた。
「ふん! 馬鹿な奴! 救出されるまでの2、3日食を抜いた程度でこの私が根を上げるわけないじゃない」
ユーフェはそう言うと、半分の藁を体にかける。
「でもこの臭いは何とかしてほしいわ。私の体も臭くなってる気がするし..... ま! でも、馬鹿なあいつらは私を殺さなかったことを後悔するんだろうな。後、数日で迎えが来る。その時は皆拷問ね」
ユーフェはそんなことを考えながら肌寒く、臭い環境でイライラしながら眠りにつくのだった。
だが、ユーフェは知らない。
怠惰なラース王がユーフェが捕まっていることを知ることなど永遠にないという事を。
数日後には豚のように臭くなっていて、如何に自分が馬鹿だったのかということを泣きながら町人に説明していることを。
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