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第二十四話 天剣を作ってもらいに行く

 ヨセフと共に北部へと続く針葉樹に囲まれた道を進んでいるのだが、辺りを氷でカチコチにしてしまったように俺たちの間には会話がなかった。


 というか、俺たちとヨセフの間には壁があった。


 モコンに乗れるようになったティアは俺の隣にいるのだが、ヨセフはモコン5頭分先を行っている。


 そんなヨセフの後姿からは話しかけるなオーラが出まくっているので、俺たちは触れないようにしていた。


 きっと、ヨセフは魔法使いが気に入らないのだろう。


 困ったもんだな。どうやったら打ち解けられるんだろうな。


 そう考えているとティアが、話しかけていた。


「ヨセフ様。さきほどの会議で魔法使いがお嫌いなようなことを言っていましたが、どうしてでしょうか?」


 直球すぎる!


 俺は思わずむせた。女という生き物は強い。


 するとヨセフは振り向きもせずに、口を開いていた。


「別に嫌いではないですよ。聖女様」


 素直じゃないな。


「ティア。この国には魔法を使えない人たちがいる。きっとヨセフも。だから」


 俺は相変わらず前を行くヨセフをちらりと見ると、クルザ以外のことをまるで知らないティアにそう囁く。


「え? ご、ごめんなさい......」


 ティアはそんなことあるのと言うように驚くと、謝っていた。

 いや、俺に謝られましても。


 しかし、クルザから少ししか離れていない国だというのに魔法が使えない人が出てくるという事は、クリスタルの影響と言うのは案外狭い範囲なのかもしれない。


 この辺りにはクルザで頻繁に見かけるようなクリスタルが地面に埋まっていることもないし、どうやらそうらしいな。


 俺はそんなことを考えながら針葉樹だらけの森を見ていると、なにを思ったのかヨセフはモコンを止まらせると、口を開いた。


「嫌いではないです」

「なにが?」


 するとヨセフは俺たちの方を向く。


「魔法使いですよ。ですが、我が国の歴史的視点からクルザを見ると華やかでキラキラしていて、我々が冬だとするとクルザは常に春です。そんな彼らを羨ましいと思うのは普通ではないでしょうか」


 あまりにも素直だ。ヨセフはきっといいやつなんだろう。


 それに俺はヨセフの言うようなことを今まで考えたことがなかった。


 魔法を使えない人が、どういう気持ちでいるかなんて考えたことが。


 このことも後で考える必要があるな。


「でも、ヨセフには頭がある。そうだろ? 俺たちではできないことを知っている」

「ええ、そうですね。魔法を使わなくてもいいように技術と言うものは発展してきた」


 ヨセフはそう言うと、振り向く。


「ですから、ジーク大元帥。私は魔法と言うものを認めませんよ」


 眼鏡をくいっと上げたヨセフは再び先を行く。


 俺はそんなヨセフの元にモコンを走らせる。


 これはヨセフと仲良くなれるいい機会だ。この期を逃すのは愚か。


「ヨセフ。その技術とやらを俺のために使ってくれないか」


 俺のそんな言葉にヨセフは眉を怪訝な顔で見る。


「これだよ。アーダル鉱。これの柄の部分を作って欲しい」

「それって、アッティアの村でもらった物?」


 追いついたティアがそう言う。


「ああ、そうだ。天剣の元だ。偶然ってものはあるんだな。あんなところにあるとは思わなかった」


 アッティアの村で代々受け継がれてきた秘宝。

 グレアでも数十年に一つしか取れないというのに、それがアーダル鉱だったとは俺も驚きだった。


「ですが、天剣ですよ?」

「ああ、鉄とかよりもいい物なんだろ?」

「ええ、そうですが」


 ヨセフはそう言うと、何やら考えている。


「頼む。帝国のためだと思ってくれ」


 そう、実際にこれは帝国のためでもある。

 北部で俺が魔力をほぼ使い切ってしまったら、俺は鉄の剣だけで対処することになる。


 それだけだと心もとない。


「そう言われてしまえば仕方がないですね......」


 ヨセフはやはり責任感が強くいいやつだった。ヨセフはそう言うと、少し口角が上がる。

 良かった。これで、ヨセフにも自信がつくし、俺も天剣を作ることができるかもしれない。


 だが、問題はあの爺だな。やってくれるかどうか半々だが、行く価値はあるか。


「ありがとうヨセフ。ということで、作るために寄り道していく。この先にあるモラの村に行こう」


 急がなければいけないのは理解しているが、こればっかりはやっておきたい。

 もしリリーザが許可してくれて、助けることができたとしても、俺自身に力がなかったら守れるもの守れない。


「モラの村?」


 ティアがそう言う。


「ああ、そこに天剣を作れる爺さんがいてな。その爺さんじゃなきゃ、この国で作れる人はいないと思うから」

「なるほど。そういう事ですか」


 ヨセフはそう言うと再び俺たちより先を行く。

 だが、ヨセフの表情はさっきよりもほんの少しだけ柔らかった。


 うん。これでよし。一魔法二鳥だ。


 俺とティアもヨセフに続いた。


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