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第十七話 反対派を倒し、英雄となる

 山岳国家グレアでハデン流を学んでいた12歳の時。

 俺は最年少で継承者序列一位の地位を得た。


 その時に、2位に陥落したのが今目の前にいる男。サイハス・アーデンだ。


「サイハス・アーデン?」

「ああ、そうだ。久しぶりだな坊主」


 そういうサイハスは白髪が目立っていた。もうあれから13年も経つ、無理もない。


「サイハス。グレアを出たと思ったら、こんなところでリリーザの暗殺を企てていたとはな」

「なぁに。それは俺の考えじゃねえ。俺はただ12歳の餓鬼に負けたのが悔しくて仕方がなくてな。俺は大陸中を旅したんだ。北の猛者たちとやり合い、仲良くなり、そして俺は強くなった」


 サイハスはそう言うと、サイハスの後ろに控える5人を指さす。


「ところで、坊主。お前はなんでこんなところにいる。もしかして、何かやらかしたか?」


 サイハスはにやりと笑う。

 俺はそんなサイハスの言葉で、グレア時代の過去が甦ってくる。


 俺はああするしかなかった。グレアという、過酷な環境でみんなが生き残るためには。


「その様子じゃ図星だな。だが、俺には好都合だ。お前を倒せるチャンスが舞い込んできたんだからな」


 そう言うとサイハスはアダマンタイトで出来た黒い剣で演説台を一刀両断する。


 俺とティアは浮遊して、広場に着地すると、俺めがけ走っている。


 流石に早い。

 サイハスはたったコンマ1秒ほどで俺の前に現れると、にやりと笑いながら黒い剣を振るっている。

 だが、こんなものはただの挨拶だ。


 俺はサイハスの黒い剣を弾く。


「ふむ。お互い天剣なしか。まぁ、あの剣があればここら一帯は壊れちまうからな」


 天剣。あれはハデン流に所属していても、ごく一部の選ばれた10名しか持てない剣。

 その剣であれば本気で剣を振るえば、突風が沸き起こり、地面はひび割れ、ここにある建物は崩壊するだろう。


サイハスが持っていなくてよかった。



「そんな世間話をするために、俺に剣を振るったのか」

「ははは。相変わらず生意気な餓鬼だ」


 サイハスはそう言うと、ハデン流の2の型で構える。両手で剣を持ち、頭のラインで水平にする持ち方。


 俺が得意とするハデン流1の型、両手で剣を突き刺すように持つ持ち方。

 つまり攻撃を得意とする型とは正反対だ。


「ティア! リリーザの護衛はケルベロス共に任せたぞ」

「わかったわ! ジーク、気を付けてね」


 ティアはそう言うと、浮遊して天幕へと向かう。

 ティアならきっと他の5人も楽々倒してくれる。


 ならば俺はサイハス、一人に集中すればいい。


 だが、その前に。


 俺は杖を取り出し、魔法陣を描く。


「なんだ。ジーク。お前、そんなオモチャなんか扱うようになって」

「魔法はオモチャじゃない。強力な力を秘めている。それに、この魔法陣は後ろにいる民衆を守るためのものだ。お望み通り、剣で相手してやるから安心してくれ」

「相変わらず坊主は甘いな。民衆が傷つこうと気にしないほうがいい」


 俺はイラっとしながらも冷静さを保ち、笑うサイハスの前方に巨大なタイタンを召喚する。


「ほう。これは見事だな!」


 サイハスは巨大なタイタンの股の間を高速で通り抜けて、軽い攻撃をしている。


「どうした? 継承者第二位だったんじゃないのか?」


 俺はサイハスを煽ると、サイハスは第2の型の姿勢を崩さない。


「馬鹿いえ。俺は守備型だ。お前みたいに一瞬で決着をつけるんじゃなく、守って勝をもぎ取る。そうだったろ!」


 そう言うとサイハスは俺めがけ、またもや軽い斬撃で攻撃する。

 俺はそれを剣で受け流すと、斬撃は民衆の方に向かって飛んでいくが、タイタンはそれを防ぐ。


 やはりタイタンを出しておいて正解だった。


「じゃあ、お望み通り見せてやるよ!」


 俺は一の型から素早く剣をサイハスに振る。


 その瞬間。カキンという金属特有の音が俺の耳に届くと、衝撃波が辺りに拡散されていく。


 俺はタイタンやティアががその衝撃波を止めているのを、ちらりと確認すると

 何度も何度も高速でサイハスを斬ろうと攻撃するが、防がれる。


 カキンカキンカキン。

 という音が何度も聞こえ、衝撃波が何度も俺たちを中心に発生している。


 流石に元序列2位は強い。だが、強くなったのは気のせいだ。

 年老いたせいか、前よりも剣のキレがまるでない。


「サイハス。悪いが、少々本気でいかせてもらうぞ」


久しぶりの戦い(・・)で楽しいが、そうはいかないからな。


「ようやく、本気ってわけか! いいだろう!」


 そう言うとサイハスの黒い剣が、魔力を伴い、どす黒くなる。


 魔力を剣に送り込むことができる。ハデン流が強いとされる所以だ。


 俺は鉄製の剣に同じく魔力を送り込む。


 すると剣身が青白く光りだす。魔力そのものの色。


「相変わらず、化け物みたいだな。なんで坊主だけ、魔力と同じ色を出せる?」

「それは神にでも聞いてくれ」

「ははは。面白い奴だ。さあ、来い!」


 サイハスはそう言うと、剣を水平に構えたまま動かない。

 俺の体力が尽きるまで、てこでも動かないってことだろう。


「一瞬で終わらせるがいいか?」

「流石のお前でも、それは無理だ」

「残念だが、今のお前はグレアで何かを守っていた時より弱くなった。それに俺は昔の俺じゃない」


 俺は一の型から大きく剣を後ろに反らせる。

 せめて一撃で仕留めてやる。


『ハデン流』第一継承者にしか受け継がれない奥義。青龍波。


 俺は思いっきり、剣を振ると青白い剣身がさらに力強く発光し、人10人分の巨大な斬撃が現れる。


「それほどの青龍波を鉄の剣でよく出せる。相変わらずだな坊主! だが!」


 サイハスは黒く光るアダマンタイト剣を水平に構えながら「はっ!」と意気込む。


 ハデン流、第2の型特有の技。玄武の守り。


 サイハスを中心に、レンガ造りの広場は波紋のように壊れていく。

 そして波紋は触れれば、致命傷だ。俺はタイタンを横に寝ころばせ、ティアを見る。


 だが、ティアは対処できそうで頷いている。


 俺が安心したその瞬間、巨大な斬撃が波紋とぶつかり合う。

 ぶつかり合うたびに衝撃波がやはり俺たちを中心に発生する。


 それだけ見れば、確実に互角だった。

 だが、違う。俺の斬撃の後ろには青白い龍が敵を喰らおうと波紋をいとも簡単にぶち破っていく。


 そして、サイハスは地面に倒れた。


 その瞬間、広場だけでなく建物からも大歓声が聞こえてくきた。


「うおおおおおおおお!! ジーク様!!」「帝国の救世主だわ!」「一生ついていきます! ジーク様!!」


 そんな俺はこの出来事をきっかけに、リリーザと帝国を救った英雄として認められ、俺の銅像もアシスヘイム広場に建てられた。


 ちょっと恥ずかしい。



読んでいただきありがとうございます!

次回からは、クルザ王国と帝国の話の予定です。ざまぁもより濃くなる予定です。


そして『お願い』したいことがあります。

ブックマークや、下の☆☆☆☆☆評価を押して応援してもらえると嬉しいです!

もちろん、つまらなければ低い評価でも構いません!高評価の方が嬉しいですけど!

何卒、よろしくお願いします


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