第十五話 平和路線反対派を捕えるための罠を仕掛ける
ニールを拘束し、アシスヘイム城へと戻るとティアとリリーザは俺を待っていた。
「ありがとう! 本当にありがとうだ! ジーク!」
そう言いながら、ツインテールの髪を揺らす。
そんなリリーザは妹のようにかわいい。
「なに、そんな大したことじゃない」
「でも、リリーザちゃんを暗殺しようとしていたのが、補佐官だったなんて」
俺はティアの言葉に頷いた。補佐官はリリーザの側近だ。
それに、側近であるのが厄介で、階級こそ高くはないが、発言力がある。
「それが厄介だな。発言力があるニールが暗殺を企てたという事は、他にも仲間がいる可能性が高い」
「うーん! 私も平和的な路線を気に入らない奴らがいることは知っていたぞ! でも、ジーク。どうすればいいのだ?」
「急だが、明日、大勢の民衆の前で俺たちの就任式を行おう。そうすれば、聖女とクルザ出身の俺を見に大勢の人が集う。そんな絶好の機会を反対派は逃すわけがない。そこを俺の魔法でどうにかする」
就任式を行えば、クルザ出身の俺や魔の力を削ぐ聖女見たさに人が大勢集まる。
そんな就任式でリリーザをあえて狙いやすい場所にいさせれば、平和路線反対派は必ず食いついてくる。
今後二度とそんなチャンスはこないかもしれない状況で、クルザ出身の俺を殺すことや平和路線を止めるチャンスが転がっているんだからな。
まさに一魔法二鳥だ。
だが、それは俺たちにとっても一魔法二鳥だったというわけだ。
リリーザを助けることで俺の印象が良くなるし、反対派も片付けられる。
「流石はジークだぞ! だが、具体的にはどうするのだ?」
「アシスヘイム広場を使う」
アシスヘイム広場はアシスヘイム城へと続く大通りにある広場だ。
そんなアシスヘイム広場はかなりの広さがあり、大勢の民衆を集めることもできるし、周りにはちょうどいい高さの建物があるため暗殺するにはもってこいの場所だ。
俺はそのことをティアとリリーザに伝える。
「おおー! なるほどなるほどな! ジークとティアが広場中央で民衆を釘付けにしている間、私はあえて民衆の目が届かないところにいればいいんだな!」
「まぁ、そう言うことだな」
俺がそういうとリリーザは広場を指さす。
「じゃあ、早速行こうではないか!」
というわけで、俺たちは広場に着く。
「まずは俺とティアが目立つための高い演説台を作ろう」
俺はそう言うと、予め魔法で持ってきていた木々を丁寧に加工し、演説台と梯子を形作る。
「なんと! 魔法はそんなこともできるのか、ジーク!」
「リリーザちゃん。これはジークだからできるのよ。普通の人は出来ないわ」
そんな二人の会話を『いや、簡単にできるはずなんだけどな』と思いながら、数分で演説台を作り上げる。
すると、広場にいた帝国民からは色々な声が聞こえてくる。
「おいおい! 魔法使いがいるぞ!」「恐ろしいわ! 早く逃げましょう!」「でも、すごいね! お母さん」
うん。真っ当な反応だ。
「して、次はどうする?」
「次は待機場所だが、待機場所は演説台からなるべく離れた場所に陣取ろう」
俺は馬車30台分のところに簡易な待機場所を作る。
そして、杖を出し魔法陣を描く。
「これはなんだ?」
「幻影の魔法陣。幻の人を出現させる魔法陣だわ」
流石はティア。この魔法は幻影の魔物を倒さないと覚えられないんだが、ティアは倒しているようだ。
「明日、この魔法陣を起動すれば、敵は罠の可能性を疑わない」
「おおーー!! すごいな! すごいぞ! 魔法は! して、次は次は??」
俺の袖を引っ張るリリーザに俺は辺りを指さす。
「この辺りには高い建物がある。そこからなら容易にリリーザを狙うことができるだろ? そいつらを捕える魔法を設置する」
「おおー! すごいなジーク! 早速行こうではないか!」
俺は袖を引っ張るリリーザを止める。
「待ってくれ、ティア。右側の建物に拘束の魔法陣を設置してくれないか?」
するとティアは微笑む。
「任せて」
そう言うとティアは右側の建物に向けて歩きだしたので、俺たちも左側の建物に向かった。
「さて、これからは地味だ」
俺はそう言うと狙うことができる高さまでリリーザを抱えながら空中に浮遊する。
「と、飛んでるぞジーク!! 私は飛んでるぞ!」
大はしゃぎしているリリーザ。
そうか。リリーザは魔法があまり得意じゃなかったんだった。
「ああ、落ちないように気を付けてくれよ」
俺はリリーザにそう言いながら、片方の手で杖を取り出し窓の近くの壁に魔方陣を描いていく。
「これは何の魔法陣なんだ?」
「言った通り拘束の魔法陣だ。武器を持った奴がこの窓を開ければ、魔法の壁によって拘束される」
まぁ、絶対拘束されるわけじゃないんだがな。強い魔法使いなら簡単に抜け出せる。
「おおー!!」
リリーザは目をキラキラさせながら、工程を見守っていた。
「よし! できたぞ! あとは、最後に民衆の中からリリーザを襲ってくる奴に対処するために、リリーザに召喚獣を持たせる」
再び魔法陣を描くと、魔法陣は赤く光だし、火で燃えている。
「なんだ! 今度は何が出てくる?」
「リザードだ」
リザードは手のひらにすっぽりと収まるサイズのかわいい小さな火を噴くトカゲ。
だけど、その強さはサイズとは比例しない。
かわいい見た目とのギャップもあって、クルザの貴族の女には人気の召喚獣だ。
リザードは魔法陣からぴょんとリリーザの手のひらへと着地する。
「うわーー!! かわいいぞ! こやつ、かわいいぞ!」
「だろ? なんなら、そのリザードをあげてもいいぞ?」
リリーザがここまで喜んでくれるのは嬉しい。まるで妹のようだ。
少し魔力は使ってしまうが、微々たるものだ。
「いいのか? ジーク!」
「ああ、もちろんだ!」
「やったー!」
ツインテールを紐のように揺らすリリーザと俺はティアと合流すべく、広場へと向かった。
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