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第十四話 暗殺計画を阻止する

 部屋を出たニールはやはり怪しかった。ニールはアシスヘイム城を出て、怪しげな建物へと入っていた。

 俺はニールに気づかれないように扉を開け、ハデン流の忍び足で狭い廊下を抜けると、ニールと知らない男は何やら話をしている。


「あの小娘! 何にも分かっていない! 平和なんていう、理想事を語りおって」

「その通りです。補佐官。騙されてはいけない」

「分かってる。もう我慢の限界だ。だからあの小娘を暗殺するのに手を貸してほしい。このままじゃ、帝国がクルザに侵略されてしまう」

「いいでしょう。ですが、お忘れなく。成功した暁には、我々、北部ガザド共和国がクルザに攻め入る際に手助けをお願いしますぞ」

「私が皇帝になった暁には協力すると約束しよう」


 やはり、こいつはリリーザのことを邪魔な存在だと思っていたようだ。

 前々から暗殺を企てていたような口ぶりだ。


 それに、北部ガザド共和国という国は一体何なんだ。

 アーシス帝国の北に国があるのは分かっていたが、その国がガザドなのか?

 後々調べる必要がありそうだな。


 だが、今はこいつを止めなければいけない。


 俺はニールたちの前に出る。


「そんなことはさせない。さあ、両手を出せ」


 急な登場でニールと男は最初は驚いた表情をしていたが、男はやがて口を開いた。


「ニール殿! 後を付けられましたな!! あれほど注意しろと!」

「そんなことはどうでもいい!! いいからこいつを倒してくれ!」


 ニールが地団駄を踏む。

 謎の男はそれに頷き、アダマンタイトで出来た剣を振るっていた。

 アダマンタイトで出来た剣は、天剣を除いて、最上位の剣だ。

 そんな剣を持つこの男は『できる』そう思っていた。


 が、俺はそれを指でつまむ。


「やるじゃないか」


 謎の男はそう言うと、つまんでいたというのに振りほどいていた。


「もうおしまいか? 北部の剣技と言うのは随分未発達なんだな」


好戦的な割には大したことのない剣技にため息が出る。


「ふん。ほざけ! どこのだれか知らないが、北部の人間を舐めるなよ!」


 謎の男は鉄製の剣を振るうと、赤い斬撃が俺を襲おうと迫る。


「なるほど。斬撃が放てる人間がグレア以外にいるとはな」


 俺は謎の男が放った斬撃を剣で薙ぎ払う。


「馬鹿なっ!! 私の斬撃が止められただと!」

「まさか、お前グレアの生まれか!」


ニールは目を丸くしていた。


「ああ。ハデン流第一継承者、ジーク・アルバート」


 俺がそう言うとニールは慌てふてめいている。

 そこまでだろうか。


「ダメだ! ダメだダメだダメだ!! おい、北部人! 逃げ道は作れるか?」

「北部の人間は決して逃げない。どんな時でも」


 ニールは北部の男のそんな言葉に舌打ちをしていた。


「これだから辺境生まれの人間は!」

「話は済んだか?」


堂々と敵の前で話すニールたちに付き合っていたが、そんな時間がもったいなくなった。

まだまだやることがあるからな。


俺がそう言うと、ニールは頭を下げる。

 


「申し訳ない! 許してくれ!」

「ダメだ。リリーザを殺そうとした奴を許せるか」


 リリーザは主君である前に、友達だ。俺はニールにとても腹が立っていた。


「戦闘中に世間話でもするつもりか!」


 俺の後方に陣取っていた男の声が聞こえる。

 卑怯な奴だ。


 だが、そんな子供のような攻撃は俺には効かない。俺は最初から気づいていた。

 面倒だったから振り向かなかったが。


「ダメだ。それじゃあ、誰も倒せない」


 ハデンの道場で稽古していたころは、これよりももっと恐ろしい攻撃を何度も受けてきた。

 そんな俺にとっては男の荒い不意打ちなんて、ないようなものだった。


 俺は危機察知能力で予め知っていたので、あえて前方のテーブルにあったフォークを持ち、フォークで男の剣を受け止める。力の差を示し、降参させるために。


「舐めるなと言ったろ!」


 男は腰に携えていた短刀を抜くと、一般の剣士なら即死するだろう速度で俺に短刀を投げていた。


「舐めてはいない。レベルが違うだけなんだ」


 剣の腕だけは自信がある。誰にも負けない自信が。俺は短刀をやはりつまむと、謎の男の方に向かって投げ返す。


「ぐはっ!!」


その瞬間、男の口からは血が吐き出ていた。


何度も見てきた光景だ。


 「お前何ものだ!? なぜ私の剣をそうやすやすと!? どこでその剣を習った――」

「言ったろ。山岳にある国家グレアだ」


 俺は素早く謎の男に近づき、剣の柄で殴る。

 結局、期待していた相手とは違った。ちょっとがっかりだ。


 久しぶりに強い敵と出会ったと思っていたが。



 俺は血を吐きながら倒れている北部人を無視して、ニールを見る。

 なぜならこの男は多分もう持たない。残念だが。


「さて、ニール。どうする?」


俺がそう言うとニールはまるで悪魔でも見ているよう目をし、震えていた。


俺はそこまで鬼じゃないんだがな。殺すつもりなんて最初から予定していない。


「ひぃ! 命だけは! 許してください」


 ニールはひれ伏す。


覚悟もないのに行動したニールに溜息する。


馬鹿な奴だ。


俺は未だにひれ伏しているニールを捕えると、アシスヘイム城へと向かった。



 




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