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第十三話 リース王と貿易の約束を取り付ける

 どこからともなく現れる魔物に襲われていた少女を無事に両親のもとに送り届けた俺たちは、あっという間にアーシス帝国の帝都アシスヘイムに到着した。


 王都クルザよりも大きなアシスヘイムの大通りを抜け、巨大な滝が流れている前方にあるアシスヘイム城に着くと、俺たちは大勢の帝国魔法部隊に歓迎されていた。


 そんな俺とティアは分かれることになった。

 ティアは聖女という職業がどういうものなのか教えるために、アシスヘイム一、クリスタルに詳しいクリスタル元老院に行っている。


 そして俺は城でリリーザと会った後、

 リリーザと補佐官ニール、リース王アリアと共に円卓を囲んでいる。


 聞けばアリアは俺に会うために、帝国に仕えたという情報だけを頼りに帝国に来たらしい。


 そうしなければいけないほど重要な用があるのだろう。


「ジーク様! お会いできるのを楽しみにしておりました!」


 青い髪のアリアは両手を組みながら、微笑んでいる。そしてアリアはティアと同じように気品があって女らしい。


 そんなアリアにそう言われると、少し照れる。


「こちらもだ。アリア」

「ふふふ。ありがとうございます」


 アリアはそう言うと矢継ぎ早に、


「さて、ジーク様の言いたいことは分かります。食料を売って欲しいのでしょう?」

「ああ、そうしてくれると助かる」

「いいですわよ! ジーク様には数えきれないほどの恩がありますから」


 よし、これで食料問題は解決だ。貧しい人や兵士もこれでもっとましな食事ができる。


「良いのか!? 我々は帝国だぞ!? リースとは敵対関係」


 そう言うのはリリーザ。


「もちろん、帝国とリースは敵対関係でした。でも、ジーク様には返せないほどの恩があります。だから関係ありません」


 そういうとアリアは俺に対して深く礼をすると微笑む。


「まぁ、そういうわけで、俺としては国民感情を刺激せずにする方法、陰で貿易を行いたいと思っているんだ。どうだ?リリーザ」

「んー!!」 


 リリーザは体を揺らしながら幼い顔に似合わない渋い表情で考えていた。

 だが、決まったのかリリーザは俺を見る。


「ジークが言うことに私は従うぞ! ジークがすることはきっと正しいのだからな!」


 よし、決まりだな。俺はアリアと握手をかわそうとすると、補佐官であるニールが立ち上がる。


「リリーザ様! リースは1000年の敵! クルザ王国と戦っている最中に、同盟を破棄して攻め入ってきたことをお忘れか!」

「過ぎたことだぞ! 補佐官! 今の私達には何にも関係ない」


 リリーザがそう言うとニールは俺を睨む。

 その視線はまるで俺の責任だといいたいようだった。参ったな。


「第一、私はクルザの馬鹿を招くこと自体反対だったのです! こいつはクルザのスパイかもしれませんぞ!」

「それは違うな」


 俺は即答していた。違うと断言しておかなければ色々と面倒だからな。


「なにがだ?」

「もし俺がスパイだとしたら、聖女を連れてくる理由がないだろ。捕らわれるリスクを負いながら任務を行う馬鹿なスパイがどこにいる」


まぁ、ティアの場合はそんな心配はないのだが。


「そ、それは......」


 俺は反論できないニールに対し、さらに言葉を加える。


「それに、アーシスの貧しい民や末端の兵士がどんな食事をしているか分かるか」

「クルザとは違って、肉や魚を毎日食べれるに決まっているだろう!」


 ニールは俺が間違っていることを言っていると思ったのか、にやりと笑う。

 そんなニールに俺は首を横に振る。こいつは何もわかっていない。


 補佐官失格だ。


「補佐官とは名ばかりだな」

「なにぃ!!」

「アーシスの食糧事情は良くない。その証拠に偉大壁(グレートウォール)の兵士は週6でパンと芋だ」

「むむむむ!! それの何が悪い! 帝国は貴様らの魔法に怯えずに暮らすために、農業ばかりやっているわけにはいかないのだ!」


 唾を飛ばしながらニールは俺を敵だと言わんばかりに、指さしていた。


「ああ、そうだ。だから農業国であるリースの力を借りる必要がある。国民を飢えさせたいのか?」


 俺は冷静にそう言う。


 するとニールは地団駄を踏む。


「うるさい! うるさい! うるさい! 私は認めんぞ! さあ、リリーザ様。私にこやつの処分をお任せください」

「見苦しいぞ、ニール」 


 リリーザの幼い顔は、きりっとしていた。


「いまなんと?」

「見苦しいと言ったのだ!! お前の意見は何一つ正しくない。ジークの言う通りだ!」


 リリーザがそう言うとアリアも頷いていた。


「他国の事情には干渉しないのが礼儀ですが、ニール殿。ジーク様がいるからこそ、我々は前に進むチャンスを得たのです。それを台無しにしたいのですか?」


 二人のそんな言葉にニールは歯を噛みしめながら物凄い形相で、俺を睨んでいた。

 そんなニールはちらりちらりと時折、リリーザを見ている。


 間違いない。ニールはリリーザのことをよく思っていない。


「お二人がそう仰るのなら、補佐官ごときが口をはさむ権利もありません。ですが、私はこれにて失礼させていただきますぞ」


 ニールはそう言うと、大股でこの部屋から去っていった。


「流石ですわジーク様!」「ああ、私のジークはすごいだろ! 欲しくても上げないぞ!」


「すまん、二人とも。ちょっと用があるから、俺もこれで席を外すぞ」


 ニールはきっと何かを企てようとしている。そんな目をしていた。


 俺はニールを尾行するために、「待ってくださいませ!」「わかったぞ!」そんな二人の声を聞きながら部屋を出た。

 

 



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