第十二話 魔物に囲まれていた少女を救出する
「大元帥閣下! 帝都にもう行かれるのですか?」
国境を沿うようにある偉大壁に魔法陣を九つ、一晩で描いた俺たちを心配しているのか部隊長は言っている。
それにしても、大元帥と言う言葉に未だに慣れない。帝都に着いたら、名称を変更してもらうのもありだな。
「まだまだやることがあるからな。長居している時間はない」
俺がそういうと、部隊長は何か準備していたのか部下を見ると頷く。
すると白い毛におおわれた2足歩行の龍のような動物が現れる。
だが、竜と違って恐ろしさは感じない。
その愛らしい顔の動物は俺たちの前にテクテクと歩いてくる。
「モコンか」
「流石ジーク様です。モコンならば帝都まで1日で着くでしょう」
毛がモコモコだからモコン。
先人がそう名付けたモコンはアーシス帝国固有種だ。
「ありがとう部隊長」
俺はモコンの頭部を撫で、モコンに乗る。
「キュルルルル!!」
「どうやらモコンは大元帥閣下がお好きなようです」
モコンは嬉しそうに毛がふさふさのしっぽを振っていたので、俺は撫でる。
とても癒されるな......
「ティア。どうした?」
ティアは何故か固まっていた。
「こ、これに乗っていくのかしら?」
俺はティアのその一言で、ティアが意外と怖がりだっていう事を思い出す。
小さい頃、ティアを馬に乗るのも一苦労した。
「心配するなティア。こんなにも可愛いじゃないか」
俺はモコンを撫でると、「キュルルル!」とモコンはしっぽを振る。
「そ、そうだけど..... たしかにかわいいのだけれど......」
ティアはモジモジしたり、体をゆすっている。こういう時のティアは時間がかかる。
馬に初めて乗る時は半日を要した。
流石にそこまで待てない。ティアには悪いが、荒療治だ。
俺は一度モコンから降りると、ティアを抱きかかえてモコンの背に乗せる。
「え...... えええええええ!! ちょっと、ジーク!!」
「すまん、ティア」
俺はそう言い、ティアの後ろ側で、モコンに乗ると、モコンは急発進した。
「えええ!! ジーク怖いよ!」
ティアは俺に抱き着いていた。柔らかい感触が全身を包む。
ちょっとドキドキするな......
「もう少しの辛抱だ。我慢してくれ、ティア」
ティアは一度触れれば後はすぐに慣れる。だからもう少しだぞ、ティア。頑張れ。
俺はティアを落ちないようにがっちりとホールドし、「ジーク様お元気で!」という魔法部隊の皆に別れを告げた。
その後、ティアはすぐに慣れた。
「モコンってかわいいわね! もふもふ~!」
今では微笑みながらモコンの頭を撫でている。
ティアはいつもこうだ。動物が好きなのに触れない。それがちょっと不憫に思える。
「だろう。そんなモコンはモコモコの毛が――」
「助けて~! 誰か! お父さん、お母さん!」
そんな声が前方から微かに聞こえてくる。
距離にして500メートルほどだ。木々が生い茂っていて姿は見えないが、間違いない。
俺は声の方向に急いでモコンを走らせると、少女が泣いている。
その周りにはスケルトンが数体、少女を囲んでいた。
スケルトンは魔物の中では一番あり触れた種だ。
そんなスケルトンを含む魔物はクリスタルに守られているクルザから遠ざかるほど、どこからともなく出現する。
謎多き存在。
「あれが魔物.....」
クルザから出たことのないティアは初めて見る魔物に少し怯えているようだ。
無理もない。俺だって黒い服を着た骸骨を最初に見た時は気味が悪かった。
「ああ、そうだ。こいつは見た目こそ気持ち悪くて強そうだが、ただの雑魚だ。さあ、早く助けよう」
「ええ、そうね!」
俺たちは杖を取り出し火球で数体のノロマなスケルトンを素早く倒す。
すると、少女はキラキラした瞳で俺たちに駆け寄ってきた。
「お兄ちゃん! お姉ちゃん! ありがとう! それと、さっきのって魔法?」
「ああ、そうだぞ!」
俺はそう言うと、杖でハートの形の火を作る。
「うわー!! すごい! 私ね、初めてこんなにすごい魔法みたー! もっとやって!」
宝石のように瞳をキラキラと輝かせながらそう言う少女の頼みを誰が断れるだろうか。
俺は嬉しくなり、照明魔法と呼ばれるもので様々な色の光を見せたり、土をかき集め大きな城を作ったり、少女のために持っていた純度の高いクルザ産クリスタルを星型に加工してペンダントにしたりした。
「うわー! 綺麗なクリスタル! ありがとう! お兄ちゃん!」
満面の笑みでそう言う少女。
かわいすぎる。
俺はそんな笑顔でそう言う少女に、心がポカポカした。
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