第十一話 ラース王と宰相暗殺されかける
ジークが偉大壁で目覚ましい活躍をしている一方、宰相ラザルとラース王は王都の民衆の前でおろおろしていた。
「聖女様がいなくなったってどうなってる!」「ジーク様をクビにしたの?」「最近、食料品の値段が高すぎるぞ! お前らだけ肥えてるんじゃねーぞ!!」
「もうクルザはお終いだ!! 聖女様やジーク様に見放されたんだ!」
聖女リスティアの行方不明について、民を安心させようと民衆の前に出たラザルとラース王は自分達が歓迎されると思っていたが、予想外の反応に困り果てている。
「ええい...... この小うるさい馬鹿どもが...... ラザルよ。なんとかせい」
ラース王は苛立った声でラザルにそう呟く。
「お任せください、王よ!」
内心『お前が王なんだから、何とかしろ。この豚が!』と思いつつ、ラザルは微笑む。
「静まれい! 王の御前であるぞ!」
ラザルが大きな声でそう言うと、民衆は静まり返る。
「よろしい。ではこれより、聖女様の件について王の代わりに私から話す」
ラザルは『平民共に何故私が......』と内心思いながら、集まった民衆をざっと見ると、再び口を開く。
「聖女様は我々の敵であるジークによって誘拐された! 恋仲にさせようと何度もアプローチするジークに聖女様は何度も断っていた。そのあまりの執念に我々は素早く決断し、ジークを宮廷から追放したが、ジークという男は狡猾だった。出ていく素振りを見せたが、宮廷のトイレに隠れ、聖女様を我が物にしようと誘拐したのだ!」
ラザルはそう言うと、口を三日月のように歪める。
完璧な作戦だ、とラザルは思う。
ジークを悪者にしたてあげれば、もし血の夜明けが失敗しても、正式な部隊を送り込めると思ったからだ。
だが、ラザルは知らない。暗殺が失敗し、民衆はジークがそんなことをするはずがないと思っていることを。
「だが! 安心してほしい。クリスタルに守られたこの地で生まれた、魔法騎士部隊が救出に向かっている。すぐに見つかるだろう」
ラザルは得意げにそう言うと、民衆たちは怒りで先ほどよりもひどい罵倒を浴びせていた。
「そんな話信じるわけないだろうが!! お前馬鹿か!!」「お優しいジーク様がそんなことするわけあるか!」「そうだ! こんな嘘がつけるのも、経験があったからだろ! ジーク様に謝れ!」
そんな民衆の批判に完璧な作戦だと思っていたラザルは呆気にとられる。
だが、民衆は待ってはくれない。怒り狂う民衆の一人がラザル目掛け石を投げる。
その石は魔法によって速度をあげ、ラザルの額にぶつかる。
「いてっ!」
ラザルは自身のおでこを触ると、血がべとりと手に着く。
ラザルは怒りでわなわなと震えていた。
「ふざけるなっ!! この平民共が!!」
そう言いかけた時だ。隣にいるはずのラース王は痛みでウグググっと言いながらうずくまっているのを発見する。ラース王の右肩には矢が刺さっていた。
その瞬間、大勢の貴族で構成された精鋭騎士達はラース王とラザルを取り囲む。
「なにごとだ!!」
「何物かが、陛下を暗殺しようと試みたようです!」
「試みただと!? それを防ぐためにお前たちがいるのではないか!!」
「申し訳ございません!」
「もうよい! 宮廷までさっさと護衛しろ!あと、貴様らは降格だ!!」
クリスタルに守られた国であるラザルならではの出来事。平和ボケした貴族たちは、暗殺なんて起こるわけがない、そう考えていたのだ。
さらに言えば、ラザルはジークが暗殺を未然に防いでいたことも知らない。
そんなラザルはおでこの痛みのせいで自らの臀部が今にも燃えそうになっていることを知らずに、歩きだした。
そして、こんなのは始まりに過ぎなかった。
ラザルとラース王はジークを追い出したことを後々後悔する。
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