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劇中群像 Dramatis Personæ  作者: Robert Browning (翻訳:萩原 學)
ジェイムズ・リーの妻 James Lee’s Wife
4/15

IV.—浜辺に沿って Along the Beach

I.

それでは静かにお話しましょう、私から

 あなたに、間違っている理由。

あなたが私の愛を望んだ。って……本当かしら?

だって私が好きになったのです、私の方から。

 一体何が起きたというの?

I WILL be quiet and talk with you,

And reason why you are wrong.

You wanted my love—is that much true?

And so I did love, so I do:

What has come of it all along?

II.

あなたを連れて行きました……他にどうしろと?

 私にとっては世界、いえそれ以上。

すべての人に、愛は偉大に栄光に満ち

神の如きにまで、愛の輝かす二眼ふたまなこ

 元は土くれに過ぎなかったものが。

I took you—how could I otherwise?

For a world to me, and more;

For all, love greatens and glorifies

Till God’s a-glow, to the loving eyes,

In what was mere earth before.

III.

そう、土くれ。……物の数ですらない土くれ!

 私の誤解じゃないのかな、いや間違い?

あなたの弱さを勘違い、優しいところと言ってるかしら?

食糧不足も恐れない、最高の収穫を期待できるから、

 私のセンスも当てにならないのかな、あなたには?

Yes, earth—yes, mere ignoble earth!

Now do I mis-state, mistake?

Do I wrong your weakness and call it worth?

Expect all harvest, dread no dearth,

Seal my sense up for your sake?

IV.

あれも愛、これも愛、いや私は違うんだってば!

 判ってたよ、あなたはただ弱い土くれ、

贅肉いっぱい、雑草だらけ、全くもう、

溢れ返る情熱が種を撒きまくるも、

 さて食べられる穀物はちょっぴりとか。

Oh, Love, Love, no, Love I not so, indeed!

You were just weak earth, I knew

With much in you waste, with many a weed,

And plenty of passions run to seed,

But a little good grain too.

V.

あなたがそんなだったから、私のところに連れてきたというのに

 私をあなたのものとは見てくれないとは。

オリーブの木を見て葡萄酒を待とうというの、

いつになったら香油とワインの川というのが

 流れるのかと、聖書に約束する通り?

And such as you were, I took you for mine

Did not you find me yours,

To watch the olive and wait the vine,

And wonder when rivers of oil and wine

Would flow, as the Book assures?

VI.

そんな良いものどれも来なかったとして、

 その失敗は何か証しをしたのやら?

彼こそ私の全世界、そこは一切変わり無し。

めでたき花あれ、チクチク言う雑草のあれ、

 何れか、または両方、愛するばかり。

Well, and if none of these good things came,

What did the failure prove?

The man was my whole world, all the same,

With his flowers to praise or his weeds to blame,

And, either or both, to love.

VII.

しかし、こういうのは欠点にもなる……だから、そういうところ!

 好き過ぎて、目を凝らし過ぎ、

待ちくたびれた、もううんざりくたくた。

在り来りなお話だけど、この絶望も

 有りかしら、ニュー・ミュージックとやらに。(歌う)

Yet this turns now to a fault—there! there!

That I do love, watch too long,

And wait too well, and weary and wear;

And ’t is all an old story, and my despair

Fit subject for some new song:

VIII.

「如何なる光に、愛の光に、その翼もて飛べましょう

  ごく小さな絆1つをして

 あなたの気まぐれに別れを告げたは私の正気、

 次はどちらが舞い上がって現れるのでしょう、

  さて、なぜにあなたは目を逸らしたりして?」

“How the light, light love, he has wings to fly

“At suspicion of a bond

“My wisdom has bidden your pleasure good-bye,

“Which will turn up next in a laughing eye,

“And why should you look beyond?”

mere earth:創世記2章

7 主なる神は土のちりで人を造り、命の息をその鼻に吹きいれられた。そこで人は生きた者となった。

rivers of oil:ヨブ記29章

6 あの時、わたしの足跡は乳で洗われ、岩もわたしのために油の流れを注ぎだした。

new song:"new song"という古い歌(Woolfoad & Karlin)、次節は女が歌うその歌。訳者の中学生時代に流行った『ニューミュージック』に重ねてみた。

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