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1/9

プロローグ 世界が変わる時。






「おい、間宮! 今すぐ菓子パン買って来いよ!」

「俺はイチゴオレな!」

「うぅ、今日もパシリ……?」


 いじめっ子たちは、ケラケラと笑いながらボクにそう命令する。

 どことなく注文する商品が可愛らしくない? とか、そんなことを言い返してはいけない。少しでも逆らえば一転、目の色を変えて殴る蹴るの暴力だ。

 だから、ここは素直に従うしかない。

 ボクは財布を手にして、教室を飛び出した。


「はっ、はっ、はっ!」


 決して速くはない足を一生懸命に動かして、売店へと向かう。

 すると、その途中でも……。


「うわっ!?」

「おっと、悪いな間宮。足が出ちまった」


 ――わざと、だ。

 廊下の端にいた同級生は、わざと足を出してきた。

 突然のことに、ボクは避けることもできずに転倒する。


「く、うぅ……!」

「お、泣くのか? 男らしくないなぁ!」


 足を出した同級生は、隣にいる後輩たちと一緒に大声で笑った。

 悔しい、悔しい、悔しい。でも、ボクには逆らうだけの力はなかった。


「あ、チャイム……」


 そうこうしているうちに、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。

 ボクは立ち上がり、目元に浮かんだ涙を拭う。きっとまた、放課後に校舎裏に呼び出されるんだ。そして、暗くなるまで暴力を振るわれる。

 それを想像すると泣けてきた。


 でも、どうしようもない。

 ボク――間宮リンは、どうしようもないほど弱かったから。



◆◇◆



「ただいま……」


 ボクは一人暮らしのアパートに帰宅した。

 声をかけても、中から返事はない。あるはずがなかった。

 結局、今日も校舎裏でいじめられた。身体中に傷ができていて、少し痛むけど、最近ではもうそんな痛みにさえ慣れてしまっていた。


「はぁ……。お母さんには、迷惑をかけられないしな……」


 ボクは薄暗い部屋の中。

 布団を敷きながら、そんなことを口にした。


「もう、いいや。寝よう」


 考えるのも、もう面倒くさい。

 そう思ってボクは布団にくるまった。


「明日になったら、全部変わってたらいいな……」



 最後に、そんなことを漏らして。



◆◇◆



 少年たちは、リンから巻き上げた金をもってゲームセンターにいた。

 夜も更けたが彼らが帰宅する気配はない。


「それにしても、本当に弱っちいよな!」

「女みたいな顔して、泣き虫でな!!」

「ていうか、女なんじゃねぇの?」


 そんな会話をしながら。

 彼らは、最後の硬貨を投入してゲームを終了した。


「あー、楽しかったな。明日も間宮から金を借りようぜ?」

「返す気はまったくないけどな! はははっ!」


 三人組の、少年たち。

 彼らは大声でそんなことを口にしつつ、外に出た。


「ん、やけに静かだな」

「気のせいだろ? 今日は――」

「おい、ちょっと待て。あれは、なんだ……?」



 その時だった。

 彼らは、物陰に何かを見つけた。



「おい、なんだよ。あれ……」



 一人が、そう漏らす。

 全員が同じ顔をしていた。

 全身から血の気が引いていく。


「ば、バケモノ……!!」



 なぜなら、そこにいたのは――。



「くるなぁ!?」



 名状しがたい姿をした、一体の巨大生物。

 大きな口を開いて少年たちに迫り、捕食せんとする。




 この日、世界は一変した。

 世界には原因不明の毒が蔓延した。

 そして時を同じくして、異形の魔物が、姿を現したのだった。




 


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― 新着の感想 ―
[良い点] 早く続きが読みたいです [気になる点] 主人公の生い立ちが気になるぅ~ [一言] 期待してお待ちしてます♪
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