第9話
あと2話くらいで一旦完結させます。
第9話
「(ところで、何で銃しか持たないんですか?剣技の方は才能あるってサミュエルくんに言われてたじゃないですか?)」
「(唐突だなぁ。何の話だよ。)」
「(いや、銃より剣で戦う方が良いんじゃないかと思って。)」
「(おい!そんな事したら銃を使わなくなるだろ!)」
「(良いじゃないですか、どうせ当たらないんですから!)」
「(良いか?当たるとか当たらないとかじゃない。銃があったら撃たなきゃならないんだよ!さもなくば、チェーホフに撃ち殺されるんだぞ?)」
「(いや、多分それは何か間違えてると思いますよ?)」
「(分かった分かった。じゃあギルドに報告を終えたら射撃訓練をしてやろうじゃないか!)」
「(是非そうして下さい!逆に何で今までしなかったのか分かりませんけど!)」
そんな軽口を叩き合ううちにいつの間にか俺はギルドに着いていた。
ギルドはオフィス街にある昼時のコンビニくらいにめちゃくちゃ混んでいたので、人混みが落ち着くまでギルドの酒場で朝食を食べる事にした。
「(絡まれたり、罵声を浴びせられたりするかと思ったが、意外としないもんだな。)」
「(そんな事してたら目当ての仕事無くなっちゃいますからね。)」
「(それもそうか。しかし、荒くれ者に、おうおう兄ちゃんって言われてみたかったなー。魔法もルーファスから教えて貰ったわけだし。)」
「(そういえば、結局魔法って何を覚えたんです?)」
「(覚えたというか、俺のオリジナル魔法を作ったんだよ、ルーファスと相談しながら。)」
「(すごい!どんなチート魔法なんですか?)」
「(よし、じゃあこの場で披露しよう。)」
「(え!?ちょ、それはちょっと待って!?)」
「穢れを落としたまえドライクリーン!!!」
俺が魔法を唱えると少し汚れていた軍服がみるみる綺麗になった。
「(え?なんですか?)」
「(ドライクリーン、汚れを落とすだけじゃなく、滅菌殺菌除霊、乾燥も出来る優れた清掃魔法だ!ちなみに部屋掃除にも使えるぞ!)」
「(いや、すごいですけど、え?それ以外の魔法は?)」
「(ルーファスと三年掛けて作った魔法だ、とだけ教えておいてやろう。)」
「(それだけって事じゃないですか!?何してるんですか!?)」
「(お、そろそろ空いて来たぞ。依頼完了を伝えて来よう。)」
「(こら、話はまだ終わってませんよ!)」
俺はチッチキとの会話を切り上げて受付へと向かい、依頼完了の書類と謎の老婆が持っていたメモを渡し、イエストルデムの街の地下で何か行われているかもしれないという事を伝えた。
「では、地下の件はギルドマスターへと報告を上げておきます。今回の報酬は基本報酬の金貨10枚のみとなります。後日、教会側から特別報酬が出る可能性もありますが、その際は再びお知らせ致します。」
「分かった、ありがとう。じゃあ、地下の件はもう俺の手を離れたと思って良いのかな?」
「ええ、再び事情を説明してもらう事はあるかもしれませんので1週間はこの街から離れないで下さい。」
「分かった。」
と頷き、俺はギルドを出て宿屋へ向かおうとするが不意に身体が熱くなり意識を失ってしまった。
目が覚めると見知らぬベッドの上だった。
「1時間ほど眠っていましたが目が覚めましたか?」
起き上がるとベッドの横に受付嬢の1人が座っていた。
「え、えぇ。ところでここは?」
「ギルドの救護室です。あなたはギルドに本登録されているのでこの部屋の使用料は無料ですよ。」
本登録してなければ手数料を取られるという事だろうか?
「なるほど、ありがとうございます。」
「いえ、ギルドの決まりですので。ところで、体調に特に問題が無いようであれば、宿で改めて休息を取られた方が良いと思います。」
遠回しに早く出て行けと言われている気がした俺は改めて礼を言いギルドを出て、宿へ向かった。
宿で風呂に入り、ベッドに寝転がってからふと自分が倒れた理由が気になった。
元々、2日ほど徹夜しても平気だったのに何故倒れたんだろうか?
「やっぱ30歳超えると徹夜はキツいのかな?」
ふと我知らず声に出してしまう。
「(恐らく、原因は一気にレベルアップした事にあると思いますよ。)」
チッチキに訊いたつもりは無かったが、答えを持っているようなので詳しく聞いてみる事にする。
「(謎の女を倒した事で大幅にレベルアップしたって事か?)」
「(厳密には、学園に居た三年間で得た経験値が謎の女を倒した際に加算されて大幅レベルアップに繋がったと言うべきですね。)」
「全然わからん!」
あまりに分からな過ぎて声に出してしまった。
「(レベルアップというのは簡単に言うと肉体と魂の格上げです。これは倒した相手の持つ魔素を決められたパーセンテージ分吸収し、一定の数値になると行われるんですが、今回のように三年間学園で様々な知識を得て経験を積むと得られる魔素のパーセンテージが大幅に増えます。ここまでは良いですか?)」
「(つまり、経験値ってのは消費税みたいに一定のもんだけども経験や学習によって稀に数値が変わるって事だな。)」
「(概ねその通りです。そして、今回倒した敵は大量の魔素を持っていました。)」
「(ははーん?つまり、破格のボーナスが付くタイミングでそもそも得られる経験値が多い敵を倒したからアホみたいにレベルアップしたと?)」
「(えぇ、恐らくは。そして、肉体と魂の格上げも大幅に行われる為倒れたのだと思います。ステータスを見てみて下さい。)」
そういえば、そんな魔法?スキル?あったな、と思い出し、俺は「ステータスオープン」と唱えた。
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レベル70
HP 200000/200000
MP 700000/700000
物理攻撃力 89000
物理防御力 70000
魔法攻撃力 150000
魔法防御力 200000
知力 130000
体力 98000
信仰 50000
スキル:
ラッキーストライク(1時間に1度だけスキル使用者の半径50m以内に存在する敵に必中の一撃を放つ)
認識阻害(スキル使用者の認識することを阻害する)
幻影(スキル使用者の外見を任意のものに変化させる)
変声(スキル使用者の声を任意のものに変化させる)
ナイトウォーク(スキル使用者の姿が暗闇に溶け込み、足音は消え、その目は暗闇を見通せるようになる)
強者のオーラ(威圧感により敵を怯ませる事が出来る)
抜き打ち(鞘に納めた剣を抜くと同時に相手の不意を打つ斬撃を放つ)
ユニークスキル:
ガンマン(魔銃に魔力を込めて発砲することが出来る。込める魔力のイメージにより効果は変化する。魔力を使うことで魔銃を創造・改造できる。作成した魔銃は他人への譲渡不可。)
インベントリ(物体を虚空へと収納できる。生物の収納は不可。また、インベントリ内で分解、錬金、調合も可能。)
パッシブスキル:
疾病無効(ありとあらゆる疾病を無効化する。)
言語理解(ヒト族が話すあらゆる言語が理解できる。また、新たに言語を習得する際も素早く習得できる。)
ガイド妖精(異世界人の要求に応え会話を行う。同じ異世界人同士であっても他者のガイド妖精は認知出来ない。また異世界人のレベルが40を超えた場合、妖精を天界へ送還可能となる。送還した場合再度呼び戻す事は出来ない。)
雄弁なる者(巧みな話術により他者への説得・脅迫・取引が成功しやすくなる)
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三年以上前に開いたきりなのでどう変わったかイマイチ分かり辛いが、スキルや数値や説明文は増えている気がする。
レベルが上がった事でステータスの精度も上がったという事だろうか?
「(めちゃくちゃ強くなってる!スキルも知らないうちに増えてる!!)」
「(ではやはり、レベルアップが倒れた原因ですね。恐らく問題無いとは思いますが本日はゆっくり休まれた方が良いですよ。)」
「(まぁ、今日は仕事徹夜だったしそうするか。)」
そして、俺はチッチキの言葉に従い、今度は自らの意思で眠りに就いた。




