第5話
学園編は主人公がちょっと異世界の知識のベースを作った方が良いかなと思って入れました。
第5話
買い物をしたり、食事をしたり、寮の部屋に買って来た陶器の置物やキャンドルを置いたり、しているうちにあっという間に入学式の日になった。
「(いや、一週間でもう部屋が、何年も住んでるみたいな風格出してるんですが。)」
「(つい、小さい置物とか買っちゃうんだよね。会社のデスクにもミニカーとか飾ってたし。)」
「(でも、これオマケじゃないですよね?残り金貨はいくらあるんです?)」
「(1万2千枚……。)」
「(1週間で金貨8千枚も散財したんですか!?)」
「(いやいや、服!服が高かったから!服とか靴が全部で金貨3千枚くらいしたから!)」
「(結局、調度品に2千枚も使ってるじゃないですか!?しかもよく見ると燭台も純金!?成金ですか!?)」
「(うるせぇー!俺は入学式に行く!)」
「(下水路は嫌ですからね!ホントに!!)」
そう、最悪、下水路で稼げば良いのだ。とやかく言わないで欲しい。
そんなこんなで、俺は入学式に出席し、その後クラス分け試験を受けた。
入学式には貴族の子息子女たちとその親、そして恐らく各ギルドから推薦を受けたと思われる者たちが出席していた。各ギルドから推薦を受けた者たちは俺と同じくらいの年齢の者が多く、貴族の子息子女たちは中学生くらいの見た目の子たちが多かった。
想像していた入学式よりもかなり格式ばった式典だったので浮いていないか不安だったが、あたりを見回してみると推薦組は皆不安そうだったので安心した。
そして、クラス分け試験の内容は数学とアヴニール王国の歴史、法学、宗教学、それと訓練用の剣を使った実技試験だった。
試験終了後、学園への寄付を頼まれたので早く帰りたかった俺は金貨2千枚納めて寮の部屋に戻った。
「(また!散財しましたね!?何で寄付しちゃうんですか!?もう1万枚しかないですよね!?)」
「(まだ1万枚もあるんだから良いだろ。学園で過ごしやすくなる方が大事だ。)」
「(本登録に1万枚必要なの忘れてますね!?パトロン死ぬ気で見つけるしかないですよ!?)」
「(あ……。いや、覚えてるよ!だから1万枚残してるだろ!)」
「(絶対今のは忘れてたと思うけどなー。)」
「(あーあーお腹空いたなぁー食堂に行こうー。)」
「(こら!聞きなさい!散財をやめなさいっての!)」
そんなこんなで散財に関して注意されつつ更に1週間が経ち、クラス分けが発表された。
何と俺はSクラス。超エリートなクラスだ。
教室に入ると見目麗しい貴族の子息子女ばかりで俺ひとり場違いな気はしたが、その中にセシルくんを見つけたので彼の隣に座る事にした。
「あれ?お兄さんも新入生だったんですか?」
「あぁ、まだまだ学ばなきゃならない事が多くてね。」
「やっぱりすごいなぁ。お互い頑張って勉強しましょうね!」
「あぁ!よろしく頼むよ!」
まだ強者と思われている事に焦りつつ、なんとか誤魔化し切った所で俺より少し年上くらいの教師らしき男が入って来た。
また、イケメンか。
「皆さんの担任を任されている、教師のサイラスだ。厳しく指導していくのでそのつもりで。」
サイラスがそう促し、自己紹介を始めることになった。
最初はサラサラストレートヘアの金髪碧眼美少年が立ち上がり自己紹介を始めた。
「私はアヴニール王国の第一王子ラインハルト。学園内では身分差は気にせず、クラスメイトと共に切磋琢磨していきたいと思う。」
次に、どうなってんだと言いたくなるツインテールドリルヘアを持つキツめの顔の少女が自己紹介をし始めた。
「私は、メリディアス公爵家の娘でラインハルト様の婚約者コーネリアと申します。ドランブイ学園の名を穢さぬようSクラスの生徒として一層励みたいと思いますわ。」
風紀委員長かな?などと思っていると次の自己紹介が始まった。
「自分は、近衛騎士団団長セオドアの息子サミュエルと言います!王子をお守りする為精進します!」
短髪でガタイの良い少年が元気よく自己紹介を終える。
「アヴニール王国宰相ユリエルの息子ルーファス。」
俺と同じ黒眼黒髪を持つロングヘアの儚げな少年が投げやりに自己紹介をした。
「イグナート子爵家の息子のセシルと言います。強くなりたいです。」
そして、一見すると女の子っぽく見える可愛い系男子セシルくんの紹介が終わり、いよいよ、俺の番が回って来た。
「流れ者風のおっさん、ケントです。貴族のマナーとか教えて貰えれば嬉しいです。」
すべったかなと考える間もなく、どことなく垢抜けない美少女の子が紹介を始めた。
「あ、あたしは、ずっと孤児だったんだけど、えっと、モンテ男爵に引き取って貰えて学校に通う事になったアリシアです!小説みたいな恋がしたいなぁって思ってます!」
こうして無事クラス全員の自己紹介が終わった。
アリシアって子の前に自己紹介して良かったと心の底から思った。
コーネリアって子がめちゃくちゃアリシアって子を睨んでるのは多分風紀を乱すような事をやめろって言いたいんだろうなと思った。
そして、よくよく考えると俺以外みんな貴族だと言う事に気付き、不敬罪で打ち首にならないかと不安になった。
しかし、その心配は杞憂に終わった。
あれから一か月経った頃、何故か俺以外の男たちはアリシアを囲み、王子の婚約者であるコーネリアは事あるごとに婚約者の居る男性と行動するなんてはしたないと注意していた。
つまり、アリシア逆ハーレムグループVSコーネリア嬢という構図がクラス内で出来上がったのだ。
しかも、それはクラス内に留まらず学年全体を巻き込んでのものになっていた。
コーネリア派はアリシアに婚約者を奪われた者たちだけでなくアリシアに嫉妬している女子たちも多く所属していた。
反対にアリシア派は男子が多く、女子はそこに所属する男子に媚びを売る為という感じで所属していた。
そんな派閥争いを間近に見つつ、俺は気にせず久しぶりの学園ライフを謳歌するのだった。
学校で女子の派閥は必ず出来るんですよ。なんなら男子も派閥があったりするんですよね。




