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死んだら異世界転生  作者: 110
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魔法適性

【魔法は炎、風、土、水という四つの属性に別れている。これらを扱えるかはそれぞれが持って生まれた力によるが、この中で炎だけは力の差はあれど誰でも使うことが可能だ。炎の魔法を使うためにはその身に太陽の力を持っていなければいけないのだが、何故私達は太陽の力を平等に秘めているのだろうか。

私は、太陽は神なる人間の母だと考える。

母親が幼児に乳を与えるように太陽も平等に人に光を与え、夜には人と共に眠る。そして子供が親の特徴を持って産まれてくることと同じで、我々は太陽の光をこの身に宿しているのだ。】


「この説についてどう思った。」


実にアンナが問う。


「そんな考えもあるんだなって思ったよ。俺は無神論者だから『なるほど。』とはならなかったけど。

というかこの状況は何だ。まさか、また何処かに召喚されるのか?」


薄暗い部屋でアンナを含めた4人の魔導師が実を囲んでいる。

昼食後に本を返そうとしていたらクランニヒが食器を片付けながらアンナが呼んでいることを教えてくれた。何か魔法の説明でもされるのかと会いに行ったらまたしても強引に服を引っ張られ部屋に連れ込まれ今に至る。

適性を調べてもらえるのは有り難いが何の説明も無しに囲まれると動揺を隠せない。


「そのまさか。」


アンナがほくそ笑むと魔導師たちが両手を実に掲げたかと思えば足元には魔方陣が出現し目が霞むほどの光に包まれた。日差しの暖かさを感じて瞬間的につむった目を片目づつ開けてたら目前にはクレーターのように凸凹とした地面が広がっていた。


「ここはかつての魔導師達が創った魔法の訓練に使われる異空間さ。Sと呼んでいる。今いる子達は実を召喚したときにも居た魔導師だ。」


アンナにつられて右側にいた女に視線を移した。

彼女の水色の長い髪が風に吹かれて波打って太陽が反射して輝く海のようだ。


「私はフランって呼んで。水属性の魔法が得意なの。」


それを証明するように水でいくつもの動物を象った。

水のたてがみを揺らす馬は正に天馬のようで悠々と動く姿からは美しさすら感じられる。

魅入っていると動物達は突然切り裂かれるようにして水に戻り地面を濡らした。


「あ!ちょっとぉお!!」

「黙れフラン。俺は早く帰りたいんだ。もたもた自己紹介なんてやってられるか。」


鋭い目付きの男はフランの抗議の言葉を流して実を見る。


「俺はエンバー。風属性の魔導師だ。」

「わいはエーテル。土属性を主に扱っとる。二人はいつも喧嘩しとるから気にせんでな。」


栗色の髪が殆ど隠してしまっているが口元と声からは優しそうな性格が想像できる。

実も手短に挨拶を済ませると早速、本題に入ることになった。


「魔法適性を調べるためにはその力を持った者と繋がる必要がある。どれ、フランとやってみな。」


フランの左手が実の右手を握り、左手は上を向かされた。


「実、リラックスして。何も考えないで。」


深呼吸を何回か続けると徐々に肩の力が抜けてくる。五感からの情報が少しずつシャットアウトされていき自分の輪郭が曖昧になってくる。フランに握られた片手との境目も無くなったとき体の内側と外側でやり取りが行われるのが分かる。


「そのまま目を開けられる?」


瞼を開くと二人の胸の前には水が渦を巻くようにして拳ほどの大きさの玉を作っていた。


「水属性は扱えるようだね。」


アンナの満足そうな声がする。


「実、その感覚を覚えて。体内を魔力が巡っているのよ。」

「これが俺の魔力なのか?フランのものじゃなくて?」

「私は貴方の中にある魔力の流れを手助けしてるだけ。水を少し動かしてみて。水中の気泡のように上っていくのをイメージして掌に力を入れるの。」


言われた通りにすると手がジワジワと熱くなっていくが、まるで動く気配がない。


「イメージするの。ゆらゆらとしながら子供が駆けてるみたいに空に向かって上ってく様子。水草の表面から生まれた気泡達が列になって上ってく水槽。見たことあるでしょう?」

「水槽...。」


実は小学生の頃の風景を思った。

そうだ。確か小学生のとき、教室の後ろに金魚が一匹入った水槽があった。申し訳程度に入った水草には藻が絡まっていて、そこに泡が留まっていた。ずっと見ていると泡は藻の隙間を抜けて解放されたように足早に水面に上っていた。

すると二人の間の水の玉は動きだし、思い出の中の泡のように上へ上へと消えていった。


「上手じゃない!驚いた!!」

「お、おお...自分でもビックリしてる。」

「練習すればもっと自由に動かせるようになるわ。ね、アンナさん!」

「そうだね。魔法の扱いはなんとなく分かっただろう?次は風魔法をやってみようか。」

「俺だな。ちゃっちゃと終わらせようぜ。さっきとやり方は同じだが風は目に見えないからな。石を手に持って、これを浮かせるぞ。俺はいつも透明な手をイメージしてる。」

「う、うん。」

「目は開けておけ。いくら革新派が魔力の弱い奴等の集まりだからって実践になって目ぇ閉じてたら再起不能にされるぜ。」

「わかった。」

「いくぞ。」


エンバーと繋がると魔力が先程よりもずっと早く流れだした。しかし木の葉が動く気配はない。


「エンバー、適性はあるのかい?」

「ああ。」

「実、フランとやったことと同じだよ。イメージするんだ。」

「透明な手だ。お前にしか見えない手で石を掴め。」


実は透明な手って言われても2つの手で生きてきたんだから3つ目なんか想像できないと言いたいのをグッと堪えながら掌にただただ集中するしかなかった。


「必ずエンバーと同じ想像をする必要はない。風が関係する現象を何か手の上に思い描いて。」

「風....隙間風..突風?ダメだ石が飛ばない。...あ、台風。」


出し抜けの風が二人を引き離した。数秒の静寂。フランが走ってきた。


「頬から血が出てる。石が当たったのね。」


彼女の指がスルッと撫でると傷はたちまちに消えた。


「力は持っとるんから適性はあるんやろ。使えるようになるかは実の努力次第。次は土属性や。」


エーテルはフランとエンバーに下がるように指示し、尻餅をついている実の前に胡座をかいて座った。


「泥んこ遊びはしたことあるか?」

「小さい頃に。」

「何やった?」

「泥団子をひたすら作ってた気がする。山も作ったよ。水で濡らして固めたあとで穴を貫通させる遊びだった。」

「じゃあその山の要領で土の壁を作るイメージをしてみ。前のめりになって地に手をついて。」


エーテルの手が実の背中に伸し掛かるように添えると魔力の流れを感じる。砂の波が手元に押し寄せるようにして土の壁が出来上がった。


「できた!」


実が喜んだのもつかの間、エーテルが壁を殴って壊してしまう。


「この強度じゃ自分も守れんわ。頑丈に固めるまで想像せんと。」

「今日は適性が分かればいいんだ。そんなにプレッシャーをかけるんじゃない。」


それを見ていたアンナが顔を覗き込むようにして言い聞かせるように制すとばつが悪そうに頭を下げてフランとエンバーのいる場所まで離れていった。


「どうかな。魔法を使ってみた感覚は。」

「血流が速くなっているみたいで、魔法を使う度に体が重くなっている気がする。」

「そうか。魔力を全て使いきっても死ぬことはないから安心しな。太陽の力は誰でも持っているから適性を見る必要はないが、どうする?」

「やってみたい。」

「それなら、ほら。」


その場にしゃがみ、膝に肘をついて実の目の前に両手を差し出した。片手は強く握りもう片方の手を裏返してアンナの手にのせるが何も起こらない。


「おや、炎属性の適性がないじゃないか。」

「え!?」


親指の先くらいの大きさに見えていた三人が何だ何だと寄って来てついに半径1メートル圏内に入ってきた。


「太陽の力を持っていないなんて初めてだよ。」

「転生者だからか?」

「そうかもしれないね。」

「まぁ、海と大気と地の力は持ってるんだから太陽の力が無くっても大したこと無いわ。」

「でも水以外はセンス無さそうやけど。大丈夫か?」

「練習するしかないね。最悪クランニヒに守ってもらいな。」

「ええ!!?」

「当面の間は仕方ないわな。言っとくけど俺は教えねーぞ。」

「ワイも時間は自分のために使いたいからなぁ。」


あまりの無慈悲な言葉に、まるで大嵐のさなかの小鳥のような気持ちになる実の背中に熱が伝わった。


「余り時間は作れないけど暇なときは教えあげるから!」


笑顔で大きく頷きながら言われると困ったような顔をしながら顔をほころばせた。


「ありがとう。」

「どういたしまして!...とは言っても私が出来るのは実の中の魔力の流れを補助してあげるだけなの。魔法を上手に使えるようになるためにはイメージが一番大切よ。普段から身の回りをよく見て生活したら少しは魔力が具現化されたときのことを想像しやすくなるかも。」

「やってみるよ。」


アンナは二人が頷き合うのを見て、いつかは実が3人の良いライバルになることを予見していた。


「今日はもう帰ろうかね。」


Sに転移して来た時のようにみ実を中心にして囲みランプだけが頼りの部屋に戻った。

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